下北沢通信

中西理の下北沢通信

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TEAM SHACHI 配信エンターテイメントライブショー「SPOT ~STAGE at 奥三河~」アーカイブ

TEAM SHACHI 配信エンターテイメントライブショー「SPOT ~STAGE at 奥三河~」アーカイブ

 ももいろクローバーZなどスターダストプラネットの所属アイドルグループはコロナ禍において競うように配信ライブの新機軸に挑戦しているが、佐々木彩夏のソロ配信ライブ「AーCHANNEL」、ももクロ「夏のバカ騒ぎ~配信先からこんにちは~」で配信ライブの最先端を走ってきたようなももクロ陣営に対して、TEAM SHACHIの陣営が挑戦状を叩きつけるようなこれまでにない配信ライブの新スタイルを打ち出してきた。
 ももクロのライブがいわゆるライブの生中継ではない演出的に作りこんだものだったとはいえ、結構式場や複合クラブ施設のような集客施設を使ったものであったのに対し、TEAM SHACHIの配信エンターテイメントライブショー「SPOT ~STAGE at 奥三河~」は「TEAM SHACHIが訪れる場所がライブ会場に様変わりする」というのがコンセプト。全くの戸外を含むロケ的に用意した場所でその場所のロケーション(場所の力)を生かしながら、ライブ配信をしていこうというものだ。
 しかも今回を皮切りに今後いろんな場所からの配信を予定しているようで、そういうことが企画可能であるということは制作方法をパッケージ化することで、ももクロライブ配信などと比較するとかなりコスト的に低減された汎用性のあるような仕掛けを目指しているのではないかと思われた。
 今回配信場所となったのは東栄町の山間部にある「奥三河のき山学校」*1。のき山学校とは、閉校した旧東栄町立東部小学校を活用し、地域内外住民の交流促進とともに観光の振興及び集落の活性化をはかる目的で生まれ変わった木造2階建ての山里の学校だ。正式名「東栄町体験交流館 のき山学校」といい、館内には東栄町図書室「のき山文庫」、「Cafeのっきぃ」などの施設を備えている。
 今回の配信はこの施設の屋内、屋外を多岐に使用し、学校の教室や廊下や校庭を曲ごとに移動しながら撮影、配信。あらかじめ収録した映像と組み合わせながら、MV風にシーンを作り、夜は講堂と屋外により本格的なステージ空間を作り、この施設を拠点に活動している地元の和太鼓集団「志多ら」*2との共演によるパフォーマンスも行った。
  音楽的にはTEAM SHACHIは今の体制になってから自前のブラス隊(ブラス民)と一緒に行動しているのが強みだ。特に後半のライブ部分ではブラスに加え、和楽器の太鼓が演奏に加わることでアイドルの範疇を超えたような分厚い音圧でのパフォーマンスを実現している。TEAM SHACHIの場合、ダンスや歌の力量もあるから、通常のライブより細部のあらが目立ってしまう配信でも音楽的に説得力のある作りができていたと思う。
 越後妻有トリエンナーレ(新潟)、瀬戸内国際芸術祭などの地域型芸術祭に以前はよく足を運んだが、そこでは廃校を活用したようなアート作品が数多く創作されている。その中には演劇作品もあるが、今回のTEAM SHACHIの配信エンターテイメントライブショー「SPOT ~STAGE at 奥三河~」にはそうした演劇作品と似通った味わいも感じた。室内に吊られた明かりなどがアート作品に似た手作り感も感じさせて好感が持てた。
 映画の一場面のような導入といい映像、演劇、ライブなどいろんな要素を存分に盛り込んだエンターテイントメントになっていると思った。
 冒頭近くの「Rock Away」の校庭でのダンスをはじめ、後にライブ会場となる講堂の掃除を取り入れたぱふぉーまんすなど、現地ならでは演出にしているおそらくあまり準備期間がないところで、即座対応しているメンバーの対応力はいろんな場数を踏んできている歴戦のグループゆえのものだと思う。
 演出的には中盤の「シャンプーハット」での教室の黒板をスクリーンにして、ライブ日のリハやオフショットの映像を映しだす演出が面白かった。暗幕に覆われた教室内に光源を多数吊るして幻想的な空間を演出した「かなた(アコースティックver)」もこの場所ならでは工夫で、もしこうしたライブ配信を継続していくのであれば場所を変更していくというのはもちろんあるにしても現代美術の作家とのコラボレーションも面白いと思う。
 とはいえ、映像作品としてはフィナーレに本格的なライブ映像を持ってきていることがもうひとつのミソかもしれない。しかもここでは和太鼓隊の分厚いリズム感に乗せた代表曲「抱きしめてアンセム」にはじまり、最新曲の「MAMA」「SURVIVER SURVIVER」、ラストは「Today」という最新アップデイトされた最新のTEAM SHACHIの姿を存分に見せてくれる。

 Youtube番組での振り返り*3によれば当初は収録・編集後の配信を考えていたが、開始まであまり時間がない状況で、生配信に変更になったという。これはももクロが演出されたライブを生配信し、たこ虹も佐々木彩夏演出のもと生配信を行ったということが大きいと思う。おそらく、次はももクロ陣営が予定されている浪江女子発組合の現地からの生配信ライブとかで今回の「SPOT ~STAGE at 奥三河~」を参考にしたような新たな配信スタイルを考えてくるはず。あくまで集客ライブにこだわる私立恵比寿中学を含め、各グループがそれぞれお互いを意識しながら新たなライブのありかたを考えているのが、スターダストプラネットの面白さかもしれない。
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【公演名】

TEAM SHACHI「SPOT 〜STAGE at 奥三河〜」



【日時】

2020年9月26日(土)16:30 配信開始

※当日16:00から、視聴者同士のグループビデオ通話やコメント機能をご利用いただけます。



アーカイブ配信期間】

ライブ配信後もアーカイブ配信として映像をお楽しみいただけます。

FC会員:9月28日(月)10:00~10月12日(月)9:59

一般:9月28日(月)10:00~10月5日(月)9:59