下北沢通信

中西理の下北沢通信

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Perfumeとももクロのパフォーマンスについて 配信ライブを中心に(その3)

Perfumeももクロのパフォーマンスについて 配信ライブを中心に(その3)

配信コンテンツとしての大きな鉱脈 ディズニーランドやUSJでも可能
ももクロの配信ライブはその後も続く。2年連続で緊急事態宣言下となった5月の連休には「ももクロの『家にいろTV』」と題して春、夏、冬に行った過去の大規模ライブの映像の連続配信を行ったが、その最終日となる第5夜には「SURF & DOLPHIN in 品プリ」という表題の生配信ライブを行った。品川プリンスホテルに併設された水族館施設を借景にした企画ライブで、ラストの場面ではイルカショーとのコラボも用意された。この配信はサイトスペシフィックなアートとも考えることができる。サイトスペシフィックアートは美術では「脱美術館」「脱ホワイトキューブ」、舞台芸術では「脱劇場」というコンセプトがあるが、実はこうしたやりかたは日本文化には古来からあり「借景」と呼ばれてきた。

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「SURF & DOLPHIN in 品プリ」には「PLAY!」のようなあらかじめ用意した舞台美術はないが、代わりにおそらく水族館内の見物客向けにもともと設置されていたLED照明を操作したりして、円筒形の水槽に多彩な色を映し出すことで幻想的な雰囲気を醸し出し、魅力的な空間を演出した。

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このライブを演出したのは岡本祐次。ペンライトの使用を演出で制限するなどももクロのライブ史上でももっとも照明効果などが精緻に設計されたライブとして知られる「5th DIMENSION」「GOUNN」の両ツアーの演出を担当した人で、配信ライブでも演出家が変わるとその方向性も大きく変化するももクロライブの特色は配信ライブでも健在である。生配信とは言いながら、実はどの部分が生でどの部分が収録なのかが、にわかには判断しがたいほどにカメラ割りや照明の演出が作りこまれていることは次の映像を参照していただければ分かるのではないか。

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一方、そうした精緻に作りこまれたシーンに加えて、アトラクションを使い、それに翻弄されながら歌う(歌えない)という演出も取り入れられていた。

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 配信を見ながら考えたのはこの形式でももクロ陣営はひょっとしたら配信コンテンツとして大きな鉱脈を掘り当てたのではないかということだ。というのは今回のように非常事態宣言のような状況下でも水族館でライブができるならば、ディズニーランドやUSJのようなアミューズメント施設を会場に同様な配信ライブが可能なのではないかということに思い至ったからだ。このライブの直後にももクロ*1サンリオピューロランドでのライブを予定していたが、コロナにより延期となった。今回は実現しなかったが、これを施設回遊式の配信ライブとして行うことを検討する余地はあったかもしれない。
アート×ももクロの新たな可能性
配信ライブにはさらにもうひとつの新たな可能性も浮かび上がらせた。コンセプト的にはこちらの方が刺激的な試みになるのではないかと実は考えている。Perfumeは音楽的に言えばガールズテクノユニットだが、すでに欧州の市場では大規模なメディアアートのフェス「アルス・エレクトロニカ」に参加して、メディアアート*2として高い評価を受けている。
これに対してももクロの配信ライブはアートの世界でいうサイトスペシフィックアート*3につながるような広がりがあるのかもしれない。私が専門とするパフォーミングアート(舞台芸術)の世界でもそうした作品はあり、いまはない維新派の大規模な野外公演*4などにもサイトスペシフィックな側面があった。
ももクロはテレ朝系動画でアート系の番組「Musée du ももクロ」も配信しており、コラボ企画として、アート×ももクロというコンセプトライブが出来るのではないかとも考えた。
候補地はいくつかある。サイトスペシフィックな回遊式ライブの候補地としては瀬戸内国際芸術祭の会場である直島・犬島での美術作品を借景として取り込んだ配信ライブは可能ではないのではないか。以前から「Musée du ももクロ」の番組としても瀬戸内芸術祭や新潟の越後妻有アートトリエンナーレへのロケができるといいのではと考えていたが、予算の関係で単独の番組企画としては困難だったところにコロナ禍がやってきて事実上不可能な状況になってしまった。

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回遊型の配信ライブや場合によっては現地における集客ライブと組み合わせて企画が組み立てられないか。
特に実現したら面白そうだと考えている場所は岡山県の犬島である。船による観客輸送キャパシティーがどの程度の規模で見込めるかにもよるが、維新派がかつて大規模な野外劇を数度にわたって上演した犬島はおそらく何もない空き地にライブ会場を設営する能力を持つももクロ陣営からすれば数万規模の野外ライブ会場の設営可能な後背地を持つ島として極めて有望ではないかと思うのだ。配信ライブという話からは少し先に行ってしまったかもしれないが、維新派なき後の瀬戸内芸術祭にとっても美術系番組も冠番組として持っているももクロとのコラボは検討の余地ありだと思うのだが。

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