下北沢通信

中西理の下北沢通信

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4人のももクロ 初のネオスタ。アンコールではあの曲も。『【ももいろクローバーZ 】The LIVE ~諦めない夏~ in ABEMA』

『【ももいろクローバーZ 】The LIVE ~諦めない夏~ in ABEMA』

ももクロの配信ライブについて以前Perfumeと比較して簡単な論考をまとめたことがあった*1のだが、いささか逆説的な物言いとなるが同じ配信であっても毎回異なるフォーマットを用意していて、「このように行う」という一定の形式がないことが特徴となっている。2020年11月の「PLAY!」これまでの試みを踏まえての決定版ともいえるライブ配信だったのではないかと評したが、これはリアルタイムの進行でありながら、さまざまな映像的な仕掛けを駆使してのライブ配信だった。
 今回配信した「The LIVE ~諦めない夏~ in ABEMA」はそのようなギミックを一切排して、「ダウンタウンももクロバンド(DMB)」の演奏をバックに文字通り、ももクロがリアルライブを展開するといういわばストロングスタイルの配信であった。作りこんだ作品感が強かった「PLAY!」に対して、「The LIVE」はまるですぐ近くで実際にライブを見ているような臨場感がある。無観客ライブではあるのだが、ライブとしてはメンバーの表情のアップの映像で曲に込めた感情がビビッドに伝わってくるのに加えて、逆にスタジアムライブではぼやけてしまうことの多いダンスの振付やフォーメーションなどそれぞれの楽曲でももクロが体現する魅力がストレートに伝わってきて「これがももクロのライブだよ」と強く感じさせるものとなっていたのではないだろうか。
ライブの目玉じゃないかと感じたのは4人体制になってから初めての「Neo Stargate(ネオ・スターゲート)」*2の披露である*3。「Neo Stargate」(以下ネオスタと略す)はアルバム「5th DIMENSION」の代表曲で音楽ジャンルでいうとダブステップなどに分類できるのかもしれないが、プログレッシブロックの名曲を思わせるような壮大さを感じさせ、ももクロが歌い始める前のイントロ部分としてオルフの「カルミナ・ブラーナ」の「おお、運命の女神よ」*4がまるまる使われているというアイドル楽曲としては前代未聞の楽曲なのだ。
 歌番組でのテレビ初披露の時には最初のしゃがんだ姿勢から歌いだす発声がこもってしまうなどしてうまくは歌いこなせなかった今となってはファンとしてはあまり思い出したくもない悪夢の記憶もある難曲だけにその楽曲の歌唱の下支えを担っていた有安杏果がいなくなってからは歌われることがなかったことにはそうした問題もあったかもしれない、ただ、最近のももクロの楽曲はこの曲以上の難曲が目白押しで現在の4人の歌唱力なら歌えないことはないはずなので、曲想があまりに壮大すぎて通常のセットリストには入れにくいという事情もあったのかもしれない。
結論からいうと4人のももクロは国立競技場で見せた5人時代の最高のパフォーマンスに匹敵するような素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたが、今回この歌が歌われたのは歌詞にコロナ禍のいま聴くと現在の心情に響きあうとところが随所にあり、昔聴いたのとかなり異なる印象で聴こえてくるという理由もあると思う。
もうひとつの驚きはアンコールで披露された「モノクロデッサン ZZver.」である。これも4人では初の披露。こちらは歌詞が5つの色のメタファーになっていて随所に5人時代のももクロを想起させる部分があったため4人で歌うのがはばかられたからだ。
原曲を生かしながら歌詞の一部分を訂正したZZver.がすでにリリックビデオと題して発表されていてタイミングからすればいつかライブでやられるのは時間の問題であったのだけれど、配信とはいえ、今回初披露されたのは意表を突かれた感があった。こちらは予想通りに涙腺崩壊である。佐々木敦規演出にはいろいろ突っ込みどころがある時もあるけれど、「Neo Stargate」や「モノクロデッサン ZZver.」などの必殺技をここぞという場面で繰り出してくるのはさすがとしかいいようがないと思わされた。

The LIVE ~諦めない夏~in ABEMA
M1. レディ・メイ
M2. 愛を継ぐもの
M3. ロードショー
MC
M4. On Your Mark
M5. 走れ!
M6. 月色Chainon
M7. Neo STARGATE
MC
M8. ニッポン笑顔百景
M9. ザ・ゴールデン・ヒストリー
M10. Re:Story
ANC1. 吼えろ
ANC2. PLAY!
ANC3. モノクロデッサン
END

abema-ppv-onlinelive.abema.tv

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:
www.youtube.com

*3:2017年のももクリ以来となった。

*4:
www.youtube.com