下北沢通信

中西理の下北沢通信

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パラドックス定数『Nf3Nf6』@Youtube

パラドックス定数『Nf3Nf6』@Youtube

パラドックス定数という劇団名は聞いていたが、作品はこの配信で初めてみた。舞台に暗い照明が使われていることもあり、映像ではぼんやりとしか見えず集中できるまでに時間がかかったが、第二次世界大戦中の数学者同士の話(さらにいえば暗号作成者と暗号解読者の対話)という舞台にするには簡単ではない話を題材に取り上げながら、なかなか説得力のある物語に仕立て上げた手腕は相当のものだと思われた。
ここで描かれた物語がどこまで史実に基づいているかは分からないが、第二次世界大戦中のエニグマ暗号とその解読の物語をモデルにしていることは間違いがないだろう。そのように考え、ネット検索でエニグマ暗号について調べたところ、この舞台に出てきたような歴史的事実はなく、言ってみれば三谷幸喜の「笑の大学」のような史実をもとにした創作だと考えた方がいいのだろうと思う。ただ、二人の丁々発止のやりとり、後半に用意されたミステリ的な逆転劇はなかなか見事であった。
 出演していた将校(西原誠吾)、数学者(植村宏司)の演技はよかったが、配信映像を見ながらこの戯曲はPARCO劇場のようなもう少し大きな劇場で将校(西村雅彦)、数学者(二宮和也)のキャストで観たいなと思った。というか、特に前半暗くて俳優の顔がよく見えなかったこともあり、いつの間にかそういう配役のイメージで映像を見ていたのだった。

2018年8月23日(木)~8月26日(日)シアター風姿花伝
作・演出 野木萌葱

出演
将校    西原誠吾
数学者   植村宏司

スタッフ
照明 伊藤泰行
音響協力 田中亮大
舞台監督・美術 吉川悦子
写真 渡辺竜太
記録ビデオ 粕谷晃司(かすや舞台記録)
制作 たけいけいこ・今井由紀
企画製作 パラドックス定数
公式HP http://www.pdx-c.com

公開期間
2020年10月30日(金)22時〜11月30日(月)24時
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