下北沢通信

中西理の下北沢通信

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4人のももクロ復活、エビ中新メンバー初ライブ 横アリで開催の巨大アイドルフェス @JAM EXPO 2020-2021@横浜アリーナ

@JAM EXPO 2020-2021@横浜アリーナ



www.at-jam.jp

@JAM EXPOはTIF(TOKYO IDOL FESTIVALL)と並ぶ、日本を代表するアイドルフェス。今年は最終日である29日にももいろクローバーZ私立恵比寿中学を始めとするスターダストプラネットスタプラ)のアイドルが大挙して参加するため、何とかチケットを確保して出かけてみることにした。ひさびさの有観客ライブとなるももクロももちろん大注目だが、何と言っても目玉は8月21・22日に予定されていた大型野外ライブ「ファミえん」が中止となり、代わって@JAMが新メンバー3人を含む新体制の初披露の場となったエビ中だろう。スタプラ勢では佐々木彩夏率いる浪江女子発組合が顔を見せるほか、佐々木彩夏高城れにはソロとしても参加。*1

29日
10時55分~ CROWN POP
11時45分~ B.O.L.T
12時10分~ 開歌ーかいかー
12時55分~ 佐々木彩夏/アメフラっシ/CROWN POP/B.O.L.T(配信で観戦)
15時05分~ Gran☆Ciel
15時30分~ マジカル・パンチライン
15時55分~ 浪江女子発組合
17時10分~ アメフラっシ
17時50分~ でんぱ組inc. 
18時20分~ 私立恵比寿中学
19時5分~ ももいろクローバーZ

今年の@JAM EXPO3日目はほぼこの同じ会場で行われるスタプラフェスの前哨戦を思わせる内容だった。もちろん、ハロープロジェクトハロプロ)をはじめでんぱ組inc.など他のグループも多数参加はしていたが、朝から各ステージを移動する予定を組んでいくとほぼスタプラ勢だけで予定が埋まってしまうのであった*2
この日最大の目玉はももクロメンバーのうちコロナ感染で療養中の百田夏菜子、こちらは末梢性顔面神経麻痺で治療中の佐々木彩夏(あーりん)が復帰しステージ上に顔をそろえ、ひさしぶりに4人のももクロでのパフォーマンスを行ったことだ。
 あーりんはソロコンも横浜アリーナで開催したが、ももクロ全員での横アリはバレンタインイベント*3以来の出来事。アイドルフェスでありながら、「DNA狂詩曲」「MOON PRIDE」と来てからの「クローバーとダイヤモンド」「天国のでたらめ」という選曲であーりん、夏菜子の帰還を祝ったことにも心を揺さぶられた。
中山莉子が体調不良で欠場。フルメンバーとはいかなかったが、新メンバーをくわえての私立恵比寿中学の新たな船出も感動的なものだった。ファミえんのコロナ禍による中止でこういうことになったが、フルでのお披露目がちゅうおんからになったのはメンバーにとってもファンにとってもかえってよかったのではないか。
 結果的にはこの日は偶然にもメンバーを入れ替えないももクロ、入学転校を繰り返して新たな魅力を演出していくエビ中とそれぞれのよさがクローズアップされたようなフェスになった。
 エビ中新メンバーは素晴らしかった。予想以上に歌声が前面に出ていて将来のエース候補を予感させたノノカ、歌にダンスに先輩メンバーとまったく遜色がなく即戦力ぶりを発揮したココナ、とはいえ、不安定なダンス、不安定な歌唱のユナに心臓を鷲摑みにされた。これぞエビ中イズムではないかと思った。安本彩花のひさびさのパフォーマンスにも感動させられた。
この日出演した私が見ることができた全グループのなかでこの2グループは別格と言ってよい存在だったが、今回スタプラの中でアメフラっシは殊勲賞的な存在ではなかったろうか。私の最近のイチ押しグループでもあり、ひいき目な部分もあったかもしれないが、4人に戻れたももクロとは異なり、こちらは小島はながコロナ感染で自宅療養を余儀なくされ、3人での出演だったにもかかわらず初めて見た観客にも歌、ダンス、ステージングの総合力の高さで相当なインパクトを与えたようだ。ただ、評価を受けたということが逆にこの日は欠席で自宅観戦だった小島はなにはかなりのショックでもあったようで、コロナを完治させ4人の完全体となった時には「やはり違う」というのを見せつけてほしい。実はアメフラっシについてはこれまでアイドルフェスに参加してきたのを見てきて、普通のアイドルが好きなアイドルDD層にはあまり刺さらないのではないかと思っていたのだが、この日2ステージ目となったブルーベリーステージのパフォーマンスには私も居合わせたが、一体感を持たせて会場全体を盛り上げてみせる熱量が凄まじかった。この日の会場には浪江女子発組合からの流れもあって、ももクロファンがかなり多かったのではないかと思うが、「私はももクロしか興味がありません」と公言する「ももクロのみ」層をかなり巻き込んで、モノノフへの受けはこれまでアイドルフェスではなかったほど反応がよく、そうした空気感が伝わったことも配信も含めての高評価につながったのではないか。その意味では外部から新たなファン層(特に女性層)を引き入れてくることももちろん必要だが、以前に佐々木彩夏が言っていた浪江女子発組合を活用して、後輩グループとの相乗効果で知名度を高めていくという戦略は非常に有効だったのではないか。さらに言えば今回小島はながいなかったことで「ハイ・カラーラッシュ」「轟音」などをセットリストに組み込み、このグループの表現の幅の広さを示すことができたのもよかった。新曲「Sensitive」を3人体制でも初めて披露したのにも驚いた。歌割やダンスフォーメーションの変更など細かい調整があったに違いないが、そんなことを微塵も感じさせなかった完成度の高いパフォーマンスに感心した。
CROWN POPもキウイステージのパフォーマンスを見ることができた(パイナップルステージは配信で観戦)。ここもライブの完成度の高さを堪能したが、いろんな面で整い過ぎていて、爆発力に欠ける気もする*4。映像で見たukkaにも似たような印象を感じた。この日ライブをしたグループの中ではともに上位の実力を発揮したと思われるが、前述した3グループと比較すると印象が弱いのはなぜだろうか。これは私の好みの問題にすぎないのかもしれないので、本当のところは分からないが少なくとも個々のグループのファン以上の広がりを感じることは今回のフェスではできなかった。特にukkaは快進撃していた6人時代の残像から抜け出せていない。今回のエビ中もそうだったが、良曲は多いので新メンバーの加入が起爆剤になることを期待したい*5

*1:ただ、このフェスいまだに疑問なのは仕組みがよく分からないことだ。チケット代は1万円以上とこの手のフェスにしてはかなり高額なのだが、それだけならこのコロナ禍での開催で観客を絞り込まなければならない現状を考えればやむをえないことだとは思うのだが、通常チケットのほかにそれぞれのライブを見るにはどうやらプライオリティチケットが必要らしく、申し込み方が複雑でよく分からなくて、ももクロエビ中は申し込みさえされておらず別のものを申し込んでしまったらしい。おまけに当初は誰でも見られるはずだったパイナップルステージが直前になって急きょプライオリティチケットが必要ということに変更された。確かにあまり広くない方の会場に高城れにソロなどが予定されていたので「これは大丈夫なのか」という疑問はあるにはあったのだが、しかも申し込みが 前日の夜。これはいったい何なのだろう。とりあえずだめもとでプライオリティチケット挑戦してみるつもりだし、参加もしてみるつもりだが、不安でならない。

*2:結局、ukkaは生では見ることができなかった。

*3:simokitazawa.hatenablog.com

*4:当日はこんな風に思ったのだが、アーカイブ映像でストロベリーステージでの一曲入魂の「NARIYAMANAI」を見て少し印象が変わった。気迫あふれるパフォーマンスなのに加え、遊び心も感じ、「ゆび祭り」での私立恵比寿中学のパフォーマンスを思い出した。

*5:ネットの書き込みには「今のままがいい。新メンバーなど必要ない」の類の感想もあったので、ひとそれぞれと言いようがないが。