下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ブランニューオペレッタ『Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)』@日本青年館(2回目)

ブランニューオペレッタ『Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)』@日本青年館(2回目)

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横山由依の演技について「他の登場人物に比べると一見キャラが地味に見える横山だが、そう見えること自体が物語の仕掛けの一部ゆえにここで横山は誰にもまして困難な役割を振り当てられていることが最後まで見ると初めて分かってくる」などと奥歯にものが挟まったような言い方しかできなかったのだが、公演が終了したのでオープンにしたい。
 すなわち、このブランニューオペレッタ『Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)』という舞台は舞台全体が登場人物の「横山由依」の妄想にすぎない。すべて、他の登場人物も中止になった舞台も現実ではなく、彼女の脳内にしかない妄想だということが最後まで見ていると分かってくるのだ。
横山の役が難役だと書いたのはこの世界が横山の妄想の中の世界だということはこの人物はゲーム的リアリズム論における視点人物であり、ここではそういう展開にならないが、例えこの舞台で描かれた世界がすべて崩壊したとしてもここだけは残るという意味で特権的な位置にあり、それゆえここだけはデフォルメされたゲーム内(妄想内)の人物とは異なり、現実世界とつながりを持つリアリティーを要求されるからだ。
 一方、他の登場人物は作品設定上は視点人物の横山がこういう人と思いこんでいる人物像であり、そこには実際のその人(劇中のその役であり幾分かはそれを演じる本人)とも異なる人物としてデフォルメされて描かれ、それゆえにリアル人物像というよりは漫画やアニメの登場人物のようにキャラ的に演じることが可能な役柄となっている。
 こちらは思い切って演じている本人とは大きな違いがあるため、演じる側としても演じがいがあり、前述したように私立恵比寿中学中山莉子のようにアイドルを演じるのに自分とはまったく違うタイプのアイドル像を演じることができるようになっているのだ。
 根本宗子に私が個人的に注目しているのは彼女のクリエーターとしての才能を高く評価しているということもあるけれど、彼女がももクロを好きで、以前からももクロの舞台をやりたいと公言しているということがある。実は佐々木彩夏を起用したドラマを以前にやったのは見たことがあるのだが、それが非常に面白かったから、ももクロのメンバーをどのように料理するのかが楽しみで見てみたいと思っているのだ。ももクロを相手にするとすれば規模はかなり大きなものにならざるえないので、時期尚早と考えていた時期もあったが、この舞台を見て「時は来た」と思った。

【公演日程】
2021年10月6日(水)〜10月7日(木)(全3公演)
10月6日(水)18:30開演
10月7日(木)14:00開演/18:30開演
【会場】
日本青年館ホール
【キャスト】
横山由依AKB48
中山莉子私立恵比寿中学
江上敬子(ニッチェ)
あっこゴリラ
もも(チャラン・ポ・ランタン
根本宗子