下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

「ハムレット」下敷きにコロナ禍の現代日本の戯画描く お布団CCS/SC 1st Expansion 『夜を治める者《ナイトドミナント》』 ワーク・イン・プログレス

お布団CCS/SC 1st Expansion 『夜を治める者《ナイトドミナント》』 ワーク・イン・プログレ

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 シェイクスピアの「ハムレット」を下敷きに「吸血鬼ドラキュラ」「フランケンシュタイン」など19世紀末の怪奇小説の要素を入れ込んで、現在のコロナ禍の状況なども踏まえた一種の寓話劇に仕立て上げた。ワーク・イン・プログレスと題されているためか作品にはラフスケッチめいた部分も残されてはいるが、本公演だと言われればこのまま通ってしまうような完成度の高さも感じさせた。
 絵空事のような筋立てでありながら一定以上のリアリティーを感じるのは自ら精神的疾患を抱えながら創作活動を続けている作者である得地弘基自身が昨今のコロナ禍の状況で陥っている精神の危機的な状況とこの物語の主人公で精神疾患治療の一環として小説執筆をしているハムレット王子が二重重ねの構造となるように構築されていることだ。
 そういう状況であれば被製作物たる作品はセカイ系的な構造となっていてもおかしくないところが、ここではそれでもこの世界の構造を視野にいれて表現しようとしているところが興味深い。上流階級が住む南の街と貧しい人々や無戸籍の人たちが暮らす北の町の間に高い城壁を作り、通行税を取ろうとしているこの世界の状況は現代日本の戯画ともとらえることができるかもしれない。

作・演出:得地弘基


《吸血鬼》、《人狼》、《幽霊》、《人造人間》、そして《人間》。五つの病を寓意化した種族をモチーフに、治ると治す、病と健康の境界を巡る『現代』への箱庭治療。「病」をテーマにした長期制作プロジェクト『CCS/SC』が来年2月に控える本公演のワークインプログレスとして初上演。


お布団
2011年、得地弘基を中心に結成。近作は主に古典戯曲を題材に改作・上演を行う。戯曲本来の世界観と現代世界のイメージが混在するテキストを用いながら、現実と虚構の境界から、私たちを取り巻く問題を、演劇の現前性によって、積極的に観客に問いかけていく。2020年より「病」をテーマにした長期制作プロジェクト『CCS/SC』を始動し、活動中。


お布団
2011年、得地弘基を中心に結成。近作は主に古典戯曲を題材に改作・上演を行う。戯曲本来の世界観と現代世界のイメージが混在するテキストを用いながら、現実と虚構の境界から、私たちを取り巻く問題を、演劇の現前性によって、積極的に観客に問いかけていく。2020年より「病」をテーマにした長期制作プロジェクト『CCS/SC』を始動し、活動中。

出演

宇都有里紗 大関愛 黒木龍世 谷川清夏 永瀬安美

スタッフ
演出助手:中島梓
音響他:櫻内憧海
美術:中谷優希
制作:いとうかな
制作補佐:谷川清夏、新田佑梨