下北沢通信

中西理の下北沢通信

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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 「オレステスとピュラデス」(作:瀬戸山美咲 演出:杉原邦生)@KAAT(Streaming)

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 「オレステスとピュラデス」(作:瀬戸山美咲・演出:杉原邦生)@KAAT(Streaming)

 本来は劇場で観劇する予定でチケットまで手配していたのだが、体調を崩して行くことができなかったのが、舞台映像を配信することが分かり、それを見ることができた。
 ギリシア悲劇を基にした「グリークス」*1を演出・上演した杉原邦生が再びギリシア悲劇の世界に題材をとった新作戯曲を上演した。「グリークス」は海外作家の戯曲の上演だったが、今回は瀬戸山美咲による完全新作として、アガメムノンの息子としてギリシア悲劇にも登場するオレステスに加えて、新たにその親友であるピュラデスという人物を創作、二人の間の愛憎を描いた物語となった。
「グリークス」でも一部使っていたギリシア悲劇における群唱(コロス)部分をラップによる歌唱とすることで、一種の音楽舞踊劇の要素を強めたのが杉原演出の骨子で、これがスタイリッシュでありかつギリシア悲劇の本質と現代をつなげるような効果を生み出しており、そこが面白かった。
 オレステス役の鈴木仁、ピュラデス役の濱田龍臣ともに舞台経験は浅いようだが*2、存在感があって印象的な演技をしており、今後も舞台での活動が楽しみな存在となっていきそう。舞台経験があまりないことが、ここではどこか生々しさのようなものとして具現していて、ギリシアの歴史に登場するキャラクターというよりは現代人に通じるような「いま」も体現されていて、それがやはりトロイ戦争の後という歴史的な出来事を背景としながらも現在も世界のそこここで起きている紛争のようなこととの関連性を意識的に感じさせるような瀬戸山美咲のテキストともうまく呼応しているようなところが感じられた。

作:瀬戸山美咲
演出:杉原邦生
音楽:Taichi Kaneko
振付:北尾亘

出演:鈴木仁 濱田龍臣
   趣里 大鶴義丹
   内田淳子 高山のえみ 中上サツキ 前原麻希 川飛舞花
   大久保祥太郎 武居卓 猪俣三四郎 天宮良 外山誠二 

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:鈴木仁は初舞台だったようだ。