下北沢通信

中西理の下北沢通信

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AMEFURASSHI、CROWN POP、ukka、ばってん少女隊、いぎなり東北産とスタプラの5組登場!! ばっしょーと東北産がラストで激突  IDORISE!!FESTIVAL 2022 @O-WEST・O-EASTなど渋谷ライブハウス各所

IDORISE!!FESTIVAL 2022 @O-WESTO-EASTなど渋谷ライブハウス各所


AMEFURASSHI、CROWN POP、ukka、ばってん少女隊、いぎなり東北産ももクロの後輩であるスターダストプラネットのアイドルグループが5組登場することから配信もあるけれど会場での空気感を感じたいとチケット代は安くないものの参戦することを決めた。
特に気になっているのはAMEFURASSHIである。1年前と比べるとパフォーマーとしての戦闘力は段違いに上がっているが、こういうアイドルフェスの場でも他グループのファンも含まれる観客に対してその訴求力を発揮できるかどうか。アイドルフェスとしては異例の30分という上演時間がもらえるのがIDORISE!!FESTIVALの特徴ではあるが、インパクト重視とならざる得ない通常のフェスやリリイベと異なり、ワンマンライブに準ずるような多様性が見せられる数少ないチャンスで、多彩なジャンルの楽曲を持ちダンスや歌唱などそれを高い完成度で見せることのできるAMEFURASSHIの魅力満載のライブを見せつけてほしいと思いながら会場に向かった。
 会場に着いてみるとすでにO-WESTの外には長蛇の列が出来ていた。慌てて並んだために手首に巻いてもらう認証バンドの手続きがすんでなくて、それがしていないと入れないと言われた。そのために入場窓口近くまで一度は行ったのに並び直さなければならないという心折れそうになる出来事もあったが、結果的には真っ白なキャンバスの途中で入場することが出来て、AMEFURASSHIには間に合った。この日のスタダ勢の中ではAMEFURASSHIだけがメインステージ(O-EAST)ではないO-WESTだったのに不満と抱いていたファンもいたようだが、実力はともかく実質活動3年目でスタプラオタクの中でさえ、AMEFURASSHIだけをスキップした観客もいたようだ。この序列をイメージ的に覆すことはそう簡単なことではないと思わせられたが、実際のパフォーマンスは素晴らしかった。
 こういう言い方をすると語弊があるのを承知であえていうとパッケージとしての30分間のパフォーマンスにはまったく隙がなく完成度の高さではアリーナ級といいたくなるような内容。匹敵するグループはほとんどなかった*1とさえ言いたくなる出来栄えだった。

M1.メタモルフォーズ
M2.DROP DROP
M3.BAD GIRL
M4.MICHI
M5.Lucky Number
M6.SENSITIVE
M7.DISCO-TRAIN


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 この日再確認させられたが、そうした完成度の高さを印象的に強く与えているのは市川優月の進化ではないかと思った。こと歌唱力という意味ではほかの3人とどうしても比較されてしまうと……というのが以前から指摘されてきたが、彼女の声には独特の魅力があって、アンサンブルとしてそれが加わることでK-POPや洋楽にはないようなアクセントをAMEFURASSHIの音楽に付け加えている。以前なら歌い切れてない部分にそこをもうちょっと頑張れなどと思う瞬間もあったが、最近ではそれはほとんどなくなり、他の3人のような伸びていく声やビブラート、ファルセットなどのテクニックはなくても、それは私の役割じゃないからという彼女の割り切りがはっきり出来てきたことがグループの印象を一段階も二段階も上げる結果になったと思う。逆に歌ではないところの見せ場では重厚さやメリハリを感じさせるダンスや最近では名物場面となってきた「DISCOーTRAIN」での帽子投げ*2など魅せ方を分かった表現になってきているのがいい。
 O-WESTは朝から超満員で入場制限がかかって、先にパフォーマンスを行ったアイドルのファンが退場したらその人数分だけ中に入れるという状態。これまで見たアイドルフェスではAMEFURASSHIは空席の目立つ会場でライブすることも少なくなかったが、この日はそうではなく、会場も盛り上がっていた。前の方でも他グループのTシャツを着た人が盛り上がってフリコピをしたり、ジャンプしたり、会場では数こそ少なかったが最前列の柵から食い入るように見つめる女性の姿もあり、周囲を見渡しても女性の反応は比較的良好。最近発掘に力を入れているこうした層への訴求力はかなりあるということが再確認された。
現地で見たライブの中でこの日のMVPかもしれないと思わされたのはFES☆TIVEの頑張りだった。「大和撫子サンライズ」を歌っている最中に突然音響がダウンしてしまい、それでもライブを中断しないでアカペラでパフォーマンスを続けた。「続けるつもりなんだ」と気が付いたファンの一部が曲のリズムのガイドラインとなるかのように拍手(クラッピング)で加勢し、次第にそれは場内全体に広がり、5人は最後まで歌い切ったのである。思わぬハプニングだが私はももクロのファンなので、ファンの間で伝説となっている東京タワー下の野外ステージでの「オレンジノート」*3のことを思い出したが、どちらも生歌で百戦錬磨の経験をしてきたグループだからできること。しかも、ももクロの時はまだ観客はコールで加勢できたが、今回はそれもできない状況なので、あれを歌い切ったグループも素晴らしいし、咄嗟に加勢したファンもその関係性を誇るべきだと思う。
 その曲を歌い切っただけでなく、メンバーの機転でおそらく最後にするはずだった挨拶と告知をすぐに挟み込んで、音響の不具合の解消のための時間を稼ぎ、そこからは4曲のパフォーマンスを立て続けに行うことを運営と最小限のやりとりで決めた事後の対応も見事というしかなく、こういうことができるアイドルはそんなに多くないと思う。

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スタプラのグループのパフォーマンスはAMEFURASSHI以外もよかったのだが、中でもその凄みに鳥肌が立ったのがばってん少女隊だった。今回のライブの最後に連続でやった「YOIMIYA」「わたし恋始めたってよ」「OiSa」の3曲の素晴らしさ。楽曲のよさではAMEFURASSHIの「DROP DROP」「DISCOーTRAIN」「Lucky Number」「SENSITIVE」のシングル4曲も決して負けていないと思うのだが、「OiSa」を先行させてまず確実にヒットさせてから次の2曲を続けたばってん少女隊の楽曲プロモーションはスダダの中でも一歩抜きんでているといわざるをえない。いままでのスタダになかった音楽性という意味でもこの2グループは突出しており、東京でメジャー(avex)所属の超ときめき宣伝部などと比べるとプロモーション的に不利な立場に置かれていながら、それに対抗しうるような実績を残しつつあるのは素晴らしい。この日は「OiSa」だけに限定した上で撮影可としてSNS上で映像を公開することも許可しているのだが、最近はファン撮影による映像のクオリティーも高いので確実にプロモーションにも効果を上げることになっている。こういうのもメジャー契約のアイドルだとなかなかできないことで、こういうフットワークの軽さも素晴らしいと思う。
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今回のライブでの映像と組み合わせた演出はフェスとは思えないほど素晴らしくてメジャー感が満載。このグループについては演出をどういう人が担当しているのかについては分からないことも多いのだが、腕のある人がバックにいるのは間違いない。 
 ukkaも6人揃っての完全体のライブを昨年11月の新メンバーお披露目ライブ以来ひさびさに見ることができた。このグループは以前の6人時代にスタプラの妹グループの中で一番勢いがあり、トップをリードしていると思わせていた時期もあったが、主要メンバー二人の離脱で停滞を余儀なくされた感が外から見るとあった。私は当時もAMEFURASSHIのファンだったのでその立場から見ると先行している強力なライバルであり、里程標としていた時期もあったと思う。実は年明け初のライブを先日見たばかりだったが、その時はエースの川瀬あやめがコロナ療養中で欠席。それでも十分に実力のあるところを見せてくれたが、ようやくここから一気にまた攻めていくぞという態勢がやっと整った感があり、勢いも取り戻した姿を見られた。ukkaの最大の武器は楽曲のよさで、リンドバーグ」「それは月曜日の9時のように」のようなライブでは鉄板となる曲を持っているのが強みだが、今回のライブではそのほかにもいい曲が揃っていることを見せて付けた感がある。
新メンバーということであればこの後登場したばってん少女隊がもはや主力級といっていい存在感を持つスーパールーキー二人(柳美舞、蒼井りるあ)を擁しているのと比べれば現時点ではukkaの二人(葵るり、結城りな)はよくも悪くも新人ぽくて歌割りも限られているのだが、ダンスではすでに大きな戦力になっていて、もともと6人を前提にしていたダンスの振付のフォーメーションを本来の姿で見せられるようになったのは大きいし、それをいかにも楽しそうに踊っているよさもありここからの伸びしろの大きさも予感させた。
 一方、CROWN POPツインボーカル時代からグループの中心だった三田美吹、里菜のそれぞれの歌が一層進歩しており、特に三田美吹の歌の迫力はこの日見た多くの歌うまアイドルのなかでも頭ひとつ抜け出ている気がした。5人でフォーメーションを組んでのスキルの高いダンスがダンス&ボーカルグループ時代からのCROWN POPの武器ではあったが、以前は歌を歌わなかった元ダンサー(田中咲帆、藤田愛理)の歌唱スキルがバカ上がりしているのに驚いた。
 ただ、そうであるだけに特にダンスにおいては最大の戦力となっている雪月心愛の結成は事情から仕方ないこととはいえ、残念でならななかったし、次こそ「完全体」の姿を見てみたいと思わせた。

0. SE
1.Real×live
2.EGO×search

  • MC-

3. To Do
4.夏キラリ☆
5.君色ロード

【アンコール】
6.NARIYAMANAI

 この日トリとして一番最後にメインステージ(O-EAST)に満を持して登場したのがいぎなり東北産である。直前にはばってん少女隊が「OiSa」で圧倒的なパフォーマンスを行い会場の空気感がまだその余韻が残る中で、出囃子に乗って出てきた。ここは観客を上げ曲で乗せていくことには定評があるので、そういう楽曲で徐々に雰囲気を変えていくのかと予想していたら、1曲目は予想外のバラード曲「Whatever」でスタート。冒頭の伊達花彩→桜ひなの→伊達花彩の歌いだしで一瞬にして会場の空気を一変させてみせた。

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 そして東北産の凄いのはここからの天井知らずとも思える会場全体を高揚感で包み込んでいくような「巻き込み力」である。私の知る限り、これに似たものはサマソニ、オズフェス、ロッキンなどにアウエーの会場に乗り込んでいった時のももクロぐらいで、いいかえればパフォーマンス自体の作りこまれた作品としての完成度ではばってん少女隊やAMEFURASSHIに一日の長があるけれど、こういうライブ空間での波及力ではいぎなり東北産は凄いといわざるをえない。
 特に最後の2曲で「天下一品」「うぢらとおめだづ」での現地の盛り上がりは凄まじかった。最後にすべてを浚っていったという感もある大団円であった。
 ただ、そこには順番の妙というのもある。かつてのフェスでの経験から言えば例えばAMEFURASSHIには圧倒的にスキルフルなダンス、歌唱の力で東北産の後の観客のようなざわざわした雰囲気を一瞬にしてクールダウンさせ、自らの世界に引き込むような力がある。ばっしょーも順番が逆ならばいきなり最初に「OiSa」を持ってきて雰囲気を一変させたかもしれない。
 最近のスタプラアイドルが面白いのはこの種のフェスには登場しない超ときめき宣伝部を含めそれぞれのグループの方向性が異なることだ。現在はコロナ禍のもとでの立ち回りのうまさなどもあってとき宣が動員面で多少の優位にあるようだが、正直ニコ生に時折現れたとき宣ファンが誇るほどの差はなく、それぞれに戦略の違いがあり、いくつかのグループが当面の目標に挙げている日本武道館でのワンマンにどこが最初に届くかもまだ分からないと思っている。いずれにせよどのグループもコロナ禍の一段落を前に本格始動の準備が整い、これからが楽しみだ。

1.Whatever
2.ニュートロ
3.HANA
4.いただきランチャー
5.伊達サンバ
6.天下一品
7.うぢらとおめだづ


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11時~#ババババンビ O-WEST
真っ白なキャンバス(この途中で入場) 
Peel the Apple

12時40分~13時10分 AMEFURASSHI O-WEST
(O-EASTに移動)

14時10分~
FES☆TIVE O-EAST
14時10分~ CROWN POP
Task have Fun

17時5分~
東京女子流 O-EAST
ukka

18時10分~
24時のマスカレイド(にじます)
まねきケチャ

19時15分~
ばってん少女隊
いぎなり東北産

【3月13日(日) 出演】
まねきケチャ/FES☆TIVE/Appare!/真っ白なキャンバス/#ババババンビ
クマリデパート/アンスリューム/なんキニ!/Peel the Apple
いぎなり東北産/ばってん少女隊/我儘ラキア/NEO JAPONISM/HO6LA
二丁目の魁カミングアウト/Kolokol/LinQ/PiXMiX
ukka/Task have Fun/東京女子流/メイビーME/群の世界/シンデレラ宣言!
ベンジャス!/Palette Parade/QUEENS/Malcolm Mask McLaren
NightOwl/Ringwanderung/シュレーディンガーの犬/INUWASI
NEMURIORCA/さよならステイチューン/雨模様のソラリス/純情のアフィリア
エラバレシ/クロスノエシス
26時のマスカレイド/愛乙女☆DOLL/Ange☆Reve/Jewel☆Mare
煌めき☆アンフォレント/綺星☆フィオレナード/結音 YUION/ルルネージュ
月に足跡を残した6人の少女達は一体何を見たのか…/テラス×テラス
衛星とカラテア/#よーよーよー

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*1:あえて言うならばいずれもスタプラのukkaとばってん少女隊。もちろん、ライブ感もアイドルライブの魅力なので初期のももクロを挙げるまでもなく、完成度がすべてではない。後述するがその意味で印象を残したグループはこの日もあった。

*2:大げさな物言いになるが、日本芸能史においては沢田研二以来かもしれないww。

*3:
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