下北沢通信

中西理の下北沢通信

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鈴木ユキオプロジェクト公演「刻の花」/「moments」@シアタートラム

鈴木ユキオプロジェクト公演「刻の花」/「moments」@シアタートラム


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鈴木ユキオプロジェクト「刻の花」/「moments」を三軒茶屋のシアタートラムで見た。鈴木ユキオの公演を見るのはブログの検索で調べてみるとかなりひさびさのことになるが、そういう感じがしないのはKAATで黒田育世振付のソロ「病める舞姫」を見たばかりだし、鈴木ユキオ×笠井端丈を赤レンガ倉庫で見ているからかもしれない。
今回は2本立てで1本目の「刻の花」が写真家の八木咲との共同制作作品。八木も舞台上に現れ、プロジェクターで撮影していた日常風景の写真を壁や身体に映し出したり、後半部分では舞台上で撮ったばかりの鈴木の踊る姿や客席の観客を舞台背景に吊るされた布の幕に映し出したりするが、ダンス作品としては鈴木のソロ作品で、舞踏的なメソッドで鍛えられた鈴木がその体をゆっくりと動きながら見せていく。映像のビジュアル、ダンスともに完成度は高いがダンサーとして鈴木がよく見せるいつものあれという空気感を強く感じる作品ともいえた。
一方、新作の「moments」は鈴木は踊らず男女合わせて8人のダンサーが登場。短い動きをつないでいくように作られたダンスのようだが、試作段階というのは否めないながら、ここからどんなものが出てくるのかが楽しみだ。この作品では前半部分ではクラッピングでダンサーが自らリズムを刻んでいくような動きがあり、ひとりがそれを行うともうひとり、あるいは場合によっては複数のダンサーが同じ動き、同じリズムをシンクロしてユニゾンのようになっていくということが繰り返された。クラッピングはリズムを変化させながら、先導するダンサーが次々と入れ替わっていくというのが繰り返される。後半は劇伴音楽も流れ、やはり身近な動きが2人、あるいはそれ以上のダンサーによって繰り返され、そうした短い断片のようなものをつないでいくことにより、一連の振付のようなムーブメントが生まれてくるという仕掛けになっていくようだ。ただ、現段階ではここで行われた行為が最終的に何かのまとまった振付を生み出すための試行であるのか、これらの行為は別に何かの最終的なアウトプットを目指して試みられたものではなく、こうした行為自体の過程が作品であるのかというのは動きの生成とそれを接続するルールなどもはっきりしないこともありよく分からないというのが現状での感想であった。

2022年 7月1日(金)19:00
     2日(土)14:00/19:00
     3日(日)14:00
東京/三軒茶屋、シアタートラム

「刻の花 -トキノハナ」(2021年初演)
 鈴木ユキオ 八木咲
「moments」(新作)
 安次嶺菜緒・赤木はるか・山田暁
 小谷葉月・阿部朱里・小暮香帆
 中村駿(ブッシュマン)・西山友貴