下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ばぶれるりぐる「いびしない愛」@こまばアゴラ劇場

ばぶれるりぐる「いびしない愛」@こまばアゴラ劇場


ばぶれるりぐる「いびしない愛」@こまばアゴラ劇場を観劇。地域語(方言)を使った会話劇と言えば古くは松田正隆の長崎弁や弘前劇場(長谷川孝治)の津軽弁、最近では小松台東の宮崎弁などが想起されるが、これらの演劇がある意味、地域語を用いることで東京の言葉にはない繊細でリアルな生活感を産み出そうとしたのではと感じるのに対して、この作品で語られる「幡多弁」は少し違う感覚を感じた。

作:竹田モモコ 演出:チャーハン・ラモーン
舞台は小さなふし工場「富田商店」の事務所。工場を切り盛りするのは富田家の次女、喜美子。工場の経営は厳しく、加えてコロナ渦によりいよいよ存続が危ぶまれる。姉のしおりは左腕が不自由だが、快活で目立つ存在。そんな姉と比べられてきた喜美子は素直に助けを求められない。コロナによって止まってしまった世の中、不謹慎ながらホッとした人もいる。喜美子もそんな中の一人。せっかく止まった工場をしおりはまた動かそうと。埋まらない姉妹の溝。そんな折、事務所に忍び込んできた空き巣、諫山と出くわす。喜美子は「自分を刺してくれ」と懇願する。
期待に応えて生きていくことの息苦しさ。分かり合えない人を側におきながら生きることのはがゆさ。
それでもあえぎながら日々を続けることは、愛おしい。
「幡多弁」によって描かれる、なやに関わる人々のいびしない愛。

2018年旗揚げ。
竹田モモコ主宰の演劇ユニット。
竹田の出身地、高知県土佐清水市の方言『幡多弁』によるコントや会話劇を発表している。
『ばぶれる』とはだだをこねてあばれる。
『りぐる』とはこだわる。
という意味。
普遍的な悩みや葛藤を扱いつつも印象はライト。
おもわず笑ってしまう劇作を得意とする。
日々がんばる大人のための演劇を目指す。

出演
竹田モモコ、是常祐美(シバイシマイ)、高阪勝之(男肉 du Soleil)、泥谷将(Micro To Macro)、蟷螂襲(PM/飛ぶ教室

スタッフ
舞台監督:中嶋さおり(BS-Ⅱ)
舞台美術:柴田隆弘
照明:葛西健一
照明オペレーション:葛西健一、鎌江文子
音響:河合宣彦(株式会社Road-K)
音楽:マツキクニヒコ(フラワー劇場)
演出助手:鎌江文子
イラストとチラシデザイン:チャーハン・ラモーン
制作:寺井ゆうこ、安井和恵(クロムモリブデン
芸術監督:平田オリザ
技術協力:黒澤多生(アゴラ企画)
制作協力:蜂巣もも(アゴラ企画)