下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団リンク キュイ 短編集『非常に様々な健康の事情』@神奈川県立青少年センター スタジオHIKARI マグカルシアター参加作品 

マグカルシアター参加作品 青年団リンク キュイ 短編集『非常に様々な健康の事情』@神奈川県立青少年センター スタジオHIKARI



綾門優季のキュイによる「青年団リンク キュイ」としての最後の公演。青年団演出部の解散とキュイが青年団リンクから卒業することが関係している出来事であるのか、どうかはよく分からないのだが、キュイならびに綾門優季は今後は青年団本体から距離を取っていくということになるのかもしれない。
キュイとしては短編集(短編の連続上演)という公演形式は以前にもあったからそこには特別に注目すべきことはないのかもしれないが、個々の作品を見ていくと最初に上演された『非常に様々な健康の事情』は演劇スタイルとしては平田オリザ流の現代口語演劇であって、これは綾門なりに一緒の青年団からの独立にあたっての平田へのオマージュの意味合いも含まれていたのかもしれない。とはいえ何を描くか、そして描き方については綾門と平田では大きな違いがあるように思われた。いずれにせよ『非常に様々な健康の事情』には作品に仕掛けられたかなりコミカルな落ちがあり、結末もブラックであることがいかにも綾門らしいといえなくもないかもしれない。

人々には日常生活の中に隠れた、あるいは漏れ出している、非常に様々な健康の事情がある。各々の環境の劣化から、次第に体調を崩していく女性3人の袋小路『非常に様々な健康の事情』。未知のウイルスが世界に蔓延、偶然部屋に閉じ込められたままとなった男性の死ぬ直前までを描いた『永久に記憶する煙』。不眠症が爆発的に拡大、眠れる者と眠れない者を壁で分断するようになった時代の、喜びと悲しみに満ちた新世界『不眠普及』。

 閉塞感のある生活に苦しむコロナ禍にふさわしい、肉体の健康と精神の健康について、改めてじっくりと考えてみる短編集。

※作中に、加虐を含む性描写、閉鎖空間、DVの描写がございます。

■ 出演

『非常に様々な健康の事情』.…岩井由紀子(青年団) 西村由花(青年団) 堀紗織
『永久に記憶する煙』……小見朋生(譜面絵画) 山田遥野(青年団
『不眠普及』……杉山賢(隣屋) 西風生子(青年団

■ スタッフ

作:綾門優季
演出 –
『非常に様々な健康の事情』.…綾門優季青年団リンク キュイ)
『永久に記憶する煙』…児玉健吾(かまどキッチン)
『不眠普及』…三浦雨林(隣屋/青年団

ドラマトゥルク:小野晃太朗(シニフィエ
演出助手:《非常に様々な健康の事情》
      渡邉結衣(にもじ/みちばたカナブン)
     《永久に記憶する煙》
      升味加耀(果てとチーク)
舞台監督:三津田なつみ
照明・舞台美術:椎橋蘭奈
音響:栗原カオス
衣裳:永瀬泰生(隣屋)
宣伝美術:三橋亮太(譜面絵画)
当日運営:河﨑正太郎(譜面絵画)
制作:類家アキヒコ
制作協力:黒澤たける 渡邉結衣(にもじ/みちばたカナブン)
主催:神奈川県 青年団リンク キュイ

■ 会場

神奈川県立青少年センター スタジオHIKARI
〒220-0044 神奈川県横浜市西区 紅葉ケ丘 9−1
神奈川県立青少年センター2階