下北沢通信

中西理の下北沢通信

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私立恵比寿中学の桜井えま/仲村悠菜を主演級で抜擢 九州女子翼の花音も存在感目立つ 東京やかんランド vol.4「新星組~幕末薬缶見廻隊~」@KANDA SQUARE HALL

東京やかんランド vol.4「新星組~幕末薬缶見廻隊~」@KANDA SQUARE HALL


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東京やかんランド*1はアイドルあるいは元アイドルの女優らによるキャスティングで行う演劇公演である。今回が第4回目の公演なのだが、演劇公演とは書いたが、純然たる演劇公演というよりは演劇要素の強いコントバラエティー*2といっていいだろう。
 とはいえ、さすが女優事務所でもあるスターダストプロモーションの企画だけあって、アイドルがよくやるコント(茶番)的な小芝居とは一線を画していて、例えば今回はやはり時代劇だったももクロ一座の第一回公演*3の時に参加していた殺陣のチームが相手役+コーチ役として全面的に参加。本格的な殺陣が実演され、観客にとっても見どころ十分であるし今後演技志望の出演者にとっては貴重な学びの場となったのではないか。
 東京やかんランドの基本的なフォーマットは既存の楽曲の歌詞をさしかえた歌部分を演技と演技の間に差しはさんでいくスタイル。いきなりの吉幾三俺ら東京さ行ぐだ」をパロった「俺ら京都さ行ぐだ」には大いに笑わせてもらったが、こういうのをやれせるとやはり堀くるみは抜群。内容は前回は「ベルサイユのバラ」ならびに宝塚歌劇団のパロディー、今回は新選組を下敷きとした幕末ものパロディーで、新選組の憧れて上洛する関東の田舎出身の元百姓らが「新星組」と名乗って、長州の浪士が集まる池田屋に現れ右往左往するハチャメチャ時代劇。内容は思わず笑ってしまうほど突っ込みどころ満載だが、途中差しはさまれる殺陣の場面はかなり本格的なもので、立ち姿やきめの美しさなどダンスなどで集団での動きに長けたグループアイドルならではの本格的な殺陣を見せてくれた。 
 今回の舞台での主演級といえたのが、私立恵比寿中学の桜井えま/仲村悠菜のコンビ。昨年10月の入団(入学)なのでもはや新メンバーという呼称にはいささか語弊があるのかもしらないが、私のようなエビ中を主現場としてない人間にはその魅力があまりはっきりとは分からないところがあった。それが演技や歌にはっきり惹きつけられたことからすればエビ中ファン以外の観客へのアピールという今回の狙いは見事にはまったといってよかったのではないか。
 実は東京やかんランドでは本編が終わった後、舞台の感想を言い合うトークを挟んでおまけのようなミニパフォーマンスのコーナーがあるのだが、この日に限って言えばえま/悠菜の二人で歌った宇多田ヒカルの「ファースト・ラブ」のカバーは本当に素晴らしくて、ディナーの後に用意されていたスペシャルなデザートのような面持ちであった。まだ若いが選んだ歌が歌なのに位負けしてしまうことなく、デュオで歌いきった。エビ中は歌うまがそろうグループとしてアイドル界に知られるが、この二人もその中に入って中核となるポテンシャルを持つことを見事に見せつけた。
 歌とダンスでは九州女子翼の花音も目を引いた。東京ではあまり知られなかった新たな才能の発掘にも役立ったと思うし、今はアイドルとしてスタプラ若手とライバル関係でもあると思うが、遠い将来アイドル卒業して女優やりたいとでもいうことがあるなら、スタダの門を叩くのもひとつの手だと思う。

<出演者>
桜井えま/仲村悠菜/坂本遥奈/大黒柚姫/堀くるみ/結城りな/
北美梨寧/里菜/葉月智子/高井千帆/森青葉/花音(九州女子翼)

2023年12月5日(火)
KANDA SQUARE HALL
<1部>open 14:15 / start 15:00

<2部>open 18:15 / start 19:00

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:今回は幕末を舞台にした時代劇だったからスタプラ版『コメディーお江戸でござる』みたいなものとイメージを伝えれば分かりやすいだろうか

*3:simokitazawa.hatenablog.com