お布団「アンティゴネ アノニマス-サブスタンス/浄化する帝国」@アトリエ春風舎
お布団「アンティゴネ アノニマス-サブスタンス/浄化する帝国」@アトリエ春風舎を観劇。ソポクレス「アンティゴネ」とそれを下敷きにしたブレヒト「アンティゴネ」が原作。とはいえ、本作品は現代からさらに1000年後の戦火が続き、戦死した死者がゾンビのように蘇るという終末論未来世界を描いたSF的趣向の作品となっている。作中で登場人物を演じている俳優の語りとして、原作のソポクレスのオイディプス三部作の筋立ても語られたりはするが、物語の設定自体はアンティゴネ、イスメネという姉妹とその叔父であるクレオンという役名を除いては大きく改変されており、原作とはかなり色合いの異なる物語になっている。「アンティゴネ」という原作の持つ情により、咎人である兄を国家のルールに反して埋葬したために反逆の罪を問われるというアンティゴネの悲劇という筋立ての骨幹が徴兵されたはずの兄が戦場から脱走し、処刑される「戦争による悲劇」に変えられてしまっていることもあり、これを「アンティゴネ」の物語とすることにはかなり違和感を感じざるえなかった。
原作のことは棚上げにして、オリジナルの物語として受容すれば後半の設定は殺されても殺されても幾度となく蘇るというロールプレインゲーム的な構造を導入した最近のアニメ作品のような世界設定を思わせるところもあり、そうした手法で描き出された悪夢的な未来社会にある種の現代的リアルを感じるといえなくもない。そのあたりはお布団の作品らしいといえなくもないのだが、古典の改変作品としては『夜を治める者《ナイトドミナント》』のようには素直に作品世界に入り込むことはできなかった。
とはいえ、この舞台に感じた悪夢のような後味の悪さというのは作者が意図したものであるという風に考えることもできる。そう考えるとこれは苦手な類の作品ではあるが、そのことは作者の意図通りであり出来が悪いというわけではないのかもしれない。
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イントロダクション
歴史はくりかえす。物語はよみがえる。
「破壊された女」再演に続く、お布団のもう一つのマスターピース。古代ギリシアでソポクレスが書いたアンティゴネと、それを改作したブレヒトのアンティゴネ。ふたつを元に想像された、新たな物語。
死体をゾンビ兵士として再利用する技術が確立された遠い未来。戦火の街で暮らす二人の姉妹が直面する運命とは――。向こう側(フィクション)の戦争が、わたしたちの今を照らし出す。
戦火の街で隠れて生きる二人の姉妹は、シェルターから出てくる。
壊れかけた家に戻った二人は、徴兵されたはずの兄が戦場から脱走したことを知る。つかの間の喜びと動揺。
しかし、懲罰部隊の将校が脱走兵を捕らえるために、姉妹の家を訪れる。
詰問される二人。
脱走は重罪であり、その家族も刑罰を逃れられない。
おそらく、二人は捕まり、殺されてしまうだろう。さて。原案:ベルトルト・ブレヒト「アンティゴネ」
作・演出:得地弘基*
出演:大関愛*
瀧腰教寛
新田佑梨*
緒沢麻友*【A】
立蔵葉子(青年団/梨茄子)【B】
音響・照明:櫻内憧海*
演出助手:にしむら梨緒葉
衣装:永瀬泰生(隣屋)
制作:河﨑正太郎(譜面絵画)、新田佑梨*