アップデイトダンスNo.42「シェラザード」
2017年アップデートダンス最新作、バレエ音楽「シェラザード」を基調にした孤独と愛の超絶ファンタジー。伝説のダンサーニジンスキーと、イダ・ルービンシュタインの激しくも甘美なデュエット(20世紀初頭に世界初演)が、アパラタスでテシガーラ サトーのデュエットにより無限変形する歪んだ美に変わり果てる。
音楽 リムスキー・コルサコフ
振付・演出 勅使川原三郎
出演 勅使川原三郎 佐東利穂子
2016年ダンスベストアクト*1で1位に選んだ勅使川原三郎の「KARASアップデイトダンス」シリーズ。この「シェラザード」が今年の第1弾となった。バレエ音楽の「シェラザード」と上記の説明にあるが、実はリムスキー・コルサコフの「シェラザード」自体は千夜一夜物語の語り手、シェヘラザード(シャハラザード、シェエラザード)の物語をテーマとして、1888年夏に完成されたリムスキー=コルサコフ作曲の交響組曲。
バレエ音楽として知られるようになったのは作者の死後の1910年にバレエ・リュスの振付家であるミハイル・フォーキン振付でバレエ『シェヘラザード』が制作され、作者の死後の1910年にミハイル・フォーキンの振付によってバレエ『シェヘラザード』が制作され、それが有名になったためだ。
バレエ作品は物語バレエでもあり、ストーリーがある*2が、これは振付のミハイル・フォーキンらによる創作であり、原曲は4つの主題があるが、それがそのままバレエの物語に対応するものとして創作されたものというわけではない。
交響組曲 「シェラザード」
第1楽章 海とシンドバットの船・・・シェラザードが第290夜から第315夜に渡って語った「船乗りシンドバッドの物語」によった音楽
第2楽章 カランダー王子の物語・・諸国を行脚するカランダーという苦行僧は、「アラビアン・ナイト」の数箇所に出てくるため、どの物語を描いたかは不明
第3楽章 若い王子と王女・・・・・不明
第4楽章 バクダットの祭典と海、
そして終末・・第9夜から第18夜にかけて語られる「荷担ぎ人夫と乙女たちの物語」の、青銅の騎士の立つ岩が磁石で出来ている、近くを通る船が揃って引き寄せられては難破するという物語に基づいている
そういうこともあってか勅使川原版「シャラザード」はバレエ・リュス版の筋立てとはほぼ無関係でよりリムスキー・コルサコフの交響組曲自体と向かい合ってダンス作品化したものとなっていた。音楽は原典の4つの楽章をそのまま使用しているが、第1楽章と第4楽章が勅使川原のソロ。
第2楽章が佐東利穂子のソロ。第3楽章は勅使川原、佐東のデュオという構成。
「シェヘラザード」といえばバイオリンで奏でられる主題に象徴されるように官能性が感じられる表現が定番。そのためにバレエなどでも女性、男性共に腹部が露出するような衣装が一般的であるが、勅使川原版は男女ともに黒を基調とした
*1:http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20170102/p1
*2:バレエ『シェヘラザード』あらすじ シャハリヤール王が狩りで城を留守にしている最中に、彼の愛妾ゾベイダを含む後宮の女奴隷たちは看守のユーマクを買収し、男奴隷部屋のカギを入手する。女奴隷たちは男奴隷たちを解放し、彼らとの逢瀬を楽しむ。ゾベイダもまた「金の奴隷」との逢瀬を楽しむ。そこへ王が帰還。後宮の女たちの不義密通が露見してしまう。王はあらかじめ弟から女たちの留守を利用した不貞の可能性を警告を受けており、今回の狩りでの外出はそれを調べるためのものであった。王は「金の奴隷」を含む男奴隷を皆殺しにする。ゾベイダは悲嘆のあまり短剣で自殺。愛妾の自殺に王は深く悲しむのであった。