KARASアップデイトダンスNo.80「サティ」(勅使川原三郎振付)@荻窪アパラタス
作品クレジットでは勅使川原三郎と佐東利穂子のデュオとされていたが、この日は勅使川原がソロで踊った。アパラタスで上演される勅使川原作品は佐東と2人で踊られるものが多く、その際、最近の佐東の充実ぶりが著しいこともあり、どうしても彼女の踊りに目が行きがちになる。その意味では今回は勅使川原が一人で踊ったこともあり、久し振りに勅使川原の踊りをたっぷりと堪能することができた。
「サティ」という表題通りに全編がエリック・サティのピアノ曲の音楽に合わせてダンスは展開される。音楽とムーブメントの組み合わせはいずれもミニマルなものだ。舞台は素舞台で何もなく、勅使川原の身体と音楽だけが存在するという感覚。ダンサーの動きは最初緩やかかつ滑らかに始まるが、中段当たりでは壊れた操り人形のようなカクンカクンとしたぎぐしゃくした動きも加わってくる。この辺りはもともと得意としていた水の流れで水草が揺蕩うような動きと最近時折見られるそれとは対極的なアンナチュラルな動きを組み合わせながら、動きのバリエーションを探っていくような試みにも見えた。
普段の勅使川原作品が照明による空間の構成や舞台美術などが計算され、複雑に構成されているのに対し、この「サティ」は要素がピアノの音と身体の動きのみに限定されている。ダンスの魅力が身体ムーブメントのディティールであるとすればきわめて純度の高いそれを味わうことができるが、音楽がすべてサティで、それが特徴でもあるが、曲調の変化には乏しいため、舞台を見続ける中で正直言って単調さも少し感じた。これまで荻窪アパラタスで見た他の作品と比較しても実時間以上に上演時間を長く感じたのも確かなのだった。
終演後の勅使川原三郎のトークでは「この日はソロで踊ったが、今後作品に佐東利穂子が加わる予定。場合によっては彼女がソロで踊る場合もあるかも」などとしており、「サティ」という作品の構成にはまだまだ流動性がありうるようだ。この作品はこの時点ではまだ試作段階ともいえそうだが、勅使川原三郎クラスの振付家の制作の過程の空気感に触れることができるのもアップデイトダンスシリーズの魅力かもしれない。
「サティ」
退屈と孤独と真空の呼吸
空気が希薄なほとんど真空の ほとんど全てが影の中の光
透明な無数の鳥 ほとんどいない そしてほとんどいない暗闇の黒猫の居眠り
形しかない テーブルの上に 音しかない音楽 退屈こそ楽しみ
勅使川原三郎
- 公演概要-
アップデイトダンスNo.80
「サティ」退屈と孤独と真空の呼吸
演出 照明 出演 勅使川原三郎
出演 佐東利穂子
▶︎日程 2021年
3月 5 日(金) 20:00
3月 6 日(土) 16:00
3月 7 日(日) 16:00
3月 8 日(月) 20:00
3月11 日(木) 20:00
3月12 日(金) 20:00
3月13 日(土) 16:00
3月14 日(日) 16:00
*全8回公演3/9,10は休演日
開演30分前より受付開始、客席開場は10分前。全席自由
▶︎劇場 カラス・アパラタス B2ホール
▶︎料金 一般 予約 3500円/当日 4000円
学生 2500円(学生は予約、当日共に同料金)
▶予約
予約フォーム https://www.st-karas.com/reservation1/
メール updatedance@st-karas.com
件名を「アップデイトNo.80」とし、本文にご希望の日付・一般または学生・枚数・住所・氏名と日中連絡のつく電話番号をご記入ください。予約は前日24時まで受け付けています。開演後の途中入場不可。
主催 有限会社カラス
[問合せ] TEL. 03-6276-9136