下北沢通信

中西理の下北沢通信

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リーディングドラマ『ファンレターズ』@新宿シアターミラクル

【作・演出】じんのひろあき

リーディングドラマ『ファンレターズ』は往復書簡朗読劇『ラブレターズ』と言う、パルコ劇場で400回もやられている朗読劇のスタンダード演目

そのお芝居のスタイルを真似たものです。椅子に座った二人が交互にメールの文面などを読み上げていく。ただ、本家の『ラブレターズ』と違うところは、男女の組み合わせではなく、女性二人が交互に朗読する、というスタイルであること、そして、もう一つ大きな違いは、舞台上にいる二人のやりとりは交流していないということです。

2017/06/13(火)〜18(日)
6/13(火)  
20時   真田アサミ×清水愛
6/14(水)  
20時 倉田雅世×真田アサミ
6/15(木) 
★17時30分 二宮咲×永渕沙弥
20時     鹿野優以×田辺留依
6/16(金) 
★17時30分 植野祐美×鳥井響
20時     佐土原かおり×本多真梨子
6/17(土)  
13時     未浜杏梨×植野祐美
16時     倉田雅世×大久保ちか
20時     尾崎真実×鹿野優以
6/18(日)
14時  尾崎真実×佐土原かおり
18時  清水愛×本多真梨子

 往復書簡朗読劇「ラブレターズ」を真似てじんのひろあきが書いた朗読劇「ファンレターズ」を上演する企画。じんのが主宰する劇団「ガソリーナ」の公演となっているが、外部から大勢の出演者を招き、毎公演出演者あるいは配役が入れ替わり同じ組み合わせは一度もないようになっている。
朗読劇ということもあってか舞台女優以外に今回は声優も招き、キャスティングしているのも特徴。私が見た初日は真田アサミ×清水愛という2人の組み合わせ。2人とも普段は声優として活動している人たちで面白かったのは声優の朗読というのは初めて見た(聞いた)のだけれど、非常に興味深かったのは演技のアプローチが普段舞台で見ている俳優たちと全く違うんだということが分かったことだ。
 この「ファンレターズ」は表題の通りにとある小説家(ジュニアノベルの作家)に届く、ストーカー的なファンからの手紙とそれに対応した小説家が出版社などに送った手紙は2人の出演者によって交互に読まれていく構成となっている。「大きな違いは「ラブレターズ」が男女の組み合わせなのに対し、こちらは双方が女性であること。もうひとつは「ラブレターズ」が往復書簡で双方にやりとりがあるのに対し、こちらはそういう意味での交流はいっさいないことだ。
 ただ、その分だけ手紙の内容は個人的なやりとりにとどまらず、小説家からの作品のあとがきなどがメタ的に挿入されることで、手紙の中身として本人そのものだけではない複数のキャラが現れる。これを声優が演じるとそれぞれのキャラの台詞をただ読みあげるのにとどまらず、そこの部分だけをそれぞれ違うキャラとして演じ分けたりすることから、手紙の内容がまるでアニメのように立体的再現されてくるのだ。
 特にストーカー役の方は演じ方によってはもっとシリアスにあるいは怖く演じることもできるはずだが、かなりデフォルメされたアニメ・漫画的なキャラになっていた。おそらく、女優バージョンと声優バージョンではまったく違うものとなりそうで、個人差も大きいのでできれば他のバージョンも見てみたいのだが、スケジュール的にそれが困難なのが残念だ。