KARASアップデイトダンスNo.50「ピグマリオンー人形愛」(勅使川原三郎)@荻窪・スタジオアパラサス
出演 佐東利穂子
出演・演出・照明 勅使川原三郎
ジャン=フィリップ・ラモーのオペラ「ピグマリオン」製作のための習作的な意味合いもあるようだが、そのせいか勅使川原作品ととしては演劇的な要素が強い。例えば物語バレエのようなはっきりとした筋立てというわけではないが、この作品にいくぶん物語性を感じさせるところがあるのはそのせいかもしれない。
ただ、そういうことは実は観劇後に分かったことでもあり、真っ黒な衣装のためか、陰影を強調した照明のためか、壊れた機械を思わせるようなダンスの動きのせいか、全体として「カリガリ博士」や「メトロポリス」など古いドイツ映画を思わせるような雰囲気を感じさせた。
「ピグマリオン」はもちろんもともとはギリシア神話であるが、今回の舞台では人形を愛でるピグマリオン(勅使川原三郎)自体が何ものかに操られている人形のようである冒頭からはじまり、最後はガラテア(佐東利穂子)の首を絞めて殺してしまい自らが彫像のガラテアが座っていた椅子に彫像と同じ姿勢で座り、固まって彫像となってしまうという衝撃的なラストを迎える。
大理石で美しい乙女の像ガラテアに恋をして、アフロディーテによって命を吹き込まれたその像と結婚するという原神話の物語よりも「コッペリウス博士」「メトロポリス」のように現代人の目からはロボットテーマの悲劇的な物語と重なるような印象もある。
勅使川原作品ではダンサー同士の接触(コンタクト)がほとんどないというのがひとつの特徴なのだが、この作品では最後の首を絞める場面やその前の抱き合う場面などそれがけっこうあって、オペラ作品へ向けての習作のためか理由は定かではないが、作風の変貌の予感も感じさせる作品でもあった。