YOSITOMO NARA(奈良美智)+graf「AtoZ」を(吉井酒造煉瓦倉庫)を見る。
弘前の住宅地の真ん中に忽然と現れた煉瓦倉庫の建物で行われていた奈良美智の展覧会に出掛けてきた。まさに奈良美智づくしである(笑い)。倉庫の中に入って、AからZまで26ヵ所の小屋を順番に見て回る。ところが現地に行ってびっくりしたのはこの巡礼をやっと終えてこれでやっと終わったかと思って安心していると実はまだまだ続きがあることで、その中にはあの懐かしいgolden boat of kathyややはり以前にgrafで見たことのあるShallow puddlesもあったりするわけで、あるいはS.M.L.もあったわけで、「これだともう少し増やせば『いろはにほへと』展もできそう」と思ったけれどさすがにそれは無理か(笑い)。
奈良美智についての私のイメージはgrafとのコラボレーションを見るまでは「あのちょっと小生意気な女の子の絵を描く画家」ということで、それほど現代美術作家というイメージはなかったのだが、そのことは基本的には今も変わらないとはいえ、見せ方の多様性をここまで持っている人だというのはやはりgrafとの出会いが初めてみせてくれた新たな側面だった。この美術展の仕掛けにはただ作品を見て回るという以上に明らかに体験的な美術展という性格があって、小屋のところどころに開いていた穴や窓から覗いてみるとそれまでは気がつかなかったのが、ここにも作品があったのかという思わぬ発見や遠くから眺めるとすぐ近くで見たときとはまた少し違う味わいを見せる作品もあって、こういう巧妙な仕掛けを探して歩くのがまた楽しいのである。
この日は集客の具合も絶妙で、こういうのは遊園地と同じであまりにも人が少なく閑散としていると盛り上がりにかけるし、かといって東京や大阪の人気展覧会で最終日近くになった時のように長蛇の列では嫌気がさしてしまうので調度よい込み具合というところだっただろうか。東京でもしこの展覧会が行われていたら、最後の方では大変なことになって入場制限でもしないといけないところを落ちついて見られるのがいい。子供連れの姿が多いのもこの展覧会の特徴だが、以前にも大阪grafでの展覧会でも感じたが、この人の作品にはどうもハメルンの笛吹きのように子供を引き付ける不思議な力があるようだ。上の写真の犬は会場の出口にあって、触ったり上に乗ったりできるようになっているのだが、この周囲にいつの間にか子供が集まってきていて、引き離そうとする親に逆らって、そこにへばりついている子がいたり、上にどうしても乗りたいとごねている子がいて、思わず笑ってしまった。
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