遊劇体「天守物語」(野江・アトリエS-pace)を観劇。
泉鏡花の「天守物語」をキタモトマサヤが「語りの演劇」として上演。私にとっては「天守物語」といえばク・ナウカ=美加理のイメージが強すぎて、玉三郎主演の映画版や花組芝居の上演でさえどことなくしっくりこないほどで、以前関西で中途半端な上演を見て激怒したことがあるほど点数が厳しくなりがちなのだが、そんななかで遊劇体による「天守物語」は思いのほかの好舞台であった。会場が狭いこともあってすでにチケット完売となっている回もあるようだが、追加公演などもあるようなのでスケジュールに都合のつく人はぜひ見てほしい。
まずよかったのはこの舞台では「語りの演劇」としてうまい具合に役者の台詞回しや演技に様式化がなされていたことである。ケレン味たっぷりの派手な野外劇を得意とする劇団のイメージの強かった遊劇体であるが、実はここ数年の間にその作風をがらりと変え、古典的なテキストを様式的な演出・演技で上演する集団に変貌している。この鏡花による台本はそうした集団の変化を非常にわかりやすい形で示現したものとなった。もともとは舞台美術などにおいてもケレンを得意とする集団であつたのだが、今回は小空間であることを逆手にとって実際のビジュアルによっても見せるのを最低限のこととして、役者の「語り」と「身体」だけで泉鏡花の絢爛豪華な世界を再現しようと試みそれを成功させた。
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