劇団ジャブジャブサーキット第59回公演「ビシバシと 叩いて渡る イシバシ君」@ザ・スズナリ
2018年9月27日(木)~30日(日)
愛知県 七ツ寺共同スタジオ2018年10月26日(金)~28日(日)
東京都 ザ・スズナリ2018年11月16日(金)~18日(日)
大阪府 ウイングフィールド作・演出:はせひろいち
出演:栗木己義、荘加真美、空沢しんか、伊藤翔大、まどかリンダ、高橋ケンヂ、岡浩之 / 三井田明日香、イヲリ、林優花、松本詩千、小木曽木林
ゲスト出演:中内こもる(愛知公演)、コヤマアキヒロ(東京公演)、はしぐちしん(大阪公演)※高橋ケンヂの「高」ははしごだかが正式表記。
ジャブジャブサーキット(はせひろいち)は青年団(平田オリザ)、弘前劇場(長谷川孝治)、桃唄309(長谷基弘)らと並んで、90年代後半の「関係性の演劇」を代表する劇団(劇作家)である。その作風には大きく2つの特徴があり、それが「関係性の演劇」の作家たちのなかではせの存在を目立たせている。そのひとつはその作品の多くが広義のミステリ劇(謎解きの構造を持つ物語)であること。もうひとつがはせ作品のなかで積み重ねられる小さな現実(リアリティー)の集積がより大きな幻想(虚構)が舞台上で顕現するための手段となっていることである。
演劇的なリアルがそのもの自体が目的というわけではなく、日常と地続きのようなところに幻想を顕現させるための担保となっているという構造は実は平田ら同世代の作家よりも、五反田団(前田司郎)、ポかリン記憶舎(明神慈)ら私が「存在の演劇」と位置づけているポスト「関係性の演劇」の作家たちとの間により強い類縁性を感じさせるもので、その意味では世代の違う両者をつなぐような位置に存在しているといえるかもしれない。
リアルな日常描写の狭間から幻想が一瞬立ち現れるというような構造の芝居ははせが幻想三部作と呼んだ「図書館奇譚」「まんどらごら異聞」「冬虫夏草夜話」ですでにほぼ確立されていたが、その後に上演された「非常怪談」「高野の七福神」といった作品では作品のなかに漂う幻想との距離感がより一層近しいものとなり、いわばひとつの作品世界のなかに日常世界と幻想世界が二重写しのように描かれるという手法が取られた。
「ビシバシと 叩いて渡る イシバシ君」は迷走台風による土砂崩れで孤立状態にある元学校校舎を改装した宿舎で起こる謎めいた事件が描かれる。SFやホラー的な趣向もないではないが最後はアナグラムの解読が、鍵になる。