柳美里「インダハウス・プロジェクツ」no.2青春五月党『町の形見』映像上映会
作・演出|柳美里
2018年10月15日(月)~20日(土)
福島県 La MaMa ODAKA
出演:浅井浩介、尾崎宇内、佐山和泉、田島ゆみか、名古屋愛、長谷川洋子、山中志歩
※尾崎宇内の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。
日程|2019年3月18日㈪〜24日㈰
※19日と20日は休演開演時刻|12時/15時30分/19時
3/18㈪ 19時★
3/19㈫ 休演
3/20㈬ 休演
3/21㈭㈷ 12時・15時30分・19時★
3/22㈮ 19時★
3/23㈯ 12時・15時30分・19時★
3/24㈰ 12時・15時30分★
柳美里の青春五月党の復活公演第2弾。地元の高齢者が実際に出演して、その人たちの回想をその場で俳優たちがインタビュー風に聞きながら、演じていく。しかも、それは全体が高齢者たちからの聞き取りを基にして柳美里が再構築した演劇的テキストであり、こうした虚構/現実の重層化された構造がこの作品ならではの魅力である。
この聞き取りによる再構成は老人らの若かりし時代の体験からはじまり、最終的に3・11の体験へと収斂されていく。単なるドキュメンタリー演劇を超えてスリリングなのはこうした構造により、実際に起きたことを複数の角度から想起させるような仕掛けであり、こうした震災劇では以前にも書いたように「事実性」「当事者性」からの作品の距離のとり方が問題になってくるわけだが、そうした課題に対して柳美里が出した解答がユニークに思えた。
勘違いしてほしくないのは実際に体験した人が実際に出演しているから、この舞台がリアルというわけではないことだ。そうであるなら、1度だけの試みとして本当のドキュメンタリー(映像)あるいは実際のインタビューと俳優の演技を組み合わせる方法もあったろう。これはそうではなくて、当事者であるはずの体験者が実際にインタビューに答える自分とか昔の自分とかを演技している。ここに先述したように虚構/現実の重層性が見えてくる。さらに面白いのは今回の映像上映会ではその作品の記録映像を横浜にいる私たちが見ているという距離感で、普通の作品なら当然映像で見るのは実際の舞台を見るのと比べるとマイナスでしかないともいえるけれども、枠がひとつ増やされたこともこの作品に限っては上演観劇とは別の意味が生じているようにも思われたのである。