別冊「根本宗子」 第7号「墓場、女子高生」@下北沢ザ・スズナリ
脚本:福原充則
演出:根本宗子
出演:根本宗子、藤松祥子、安川まり、小野川晶、山中志歩、尾崎桃子、近藤笑菜、椙山さと美 もりももこ、小沢道成、ゆっきゅん、天野真希、川本成
2019年10月9日(水)〜22日(火)@ ザ・スズナリ
「墓場、女子高生」は福原充則の作品で、ENBUフェスタ公演として2010年に初演。福原充則と富岡晃一郎が主宰するユニット「ベッド&メイキングス」の公演として2015年に上演された際に根本自身も出演した作品を今回は根本宗子の演出、主演で上演した。
脚本の福原充則については2018年岸田戯曲賞を受賞するなど演劇においての実績もあるのだけれど、最近では話題となったテレビドラマ「あなたの番です」の脚本を手掛けるなどテレビドラマの脚本家としての印象も強いかもしれない*1。
この舞台を見たのは根本宗子に注目していたのと青年団の藤松祥子が出演していたからなのだが、「墓場、女子高生」という舞台の名前は以前にも聞いたことがあり気になってはいた。だが、根本宗子作品ではないということは直前まで気が付いていなかった。表題に「墓場」という単語があるように表題通りに墓場が舞台で女子高生の幽霊も出ては来るけれど怪談というのではなくて、女子高生の自殺と同級生らを巡る物語をコミカルな描写を交えて描き出していく。
自殺した女子高生の幽霊は普通は死者がこの世に何かの未練を残すからだなどというが、私(主人公)はそうじゃないという。そして、生前を知る人が死者のことを忘れなければ幽霊は存在するとも言う。でも、その説明も少しおかしい。もしそれだけが条件ならば幽霊はもっと大勢いるはずだからだ。
見終わった直後はなぜ幽霊はよみがえったのか、そして再び自殺をしたのか、あるいは姿を消したのかがよく分からなかったのだが、女子高生が亡くなって1年もたつのになぜ女子高生たちは自らこの墓場に集まってきていたのかということを考えていた時、突如その疑問は氷解した。彼女たちはそれぞれが自らの心の中に遺書も残さず彼女が突然自殺した原因は実は自分のせいだったのではないかという自責の念を誰にも言い出せずに隠し持っていたのだということが最後に明らかになってくる。幽霊として彼女をここにつなぎとめていたのは彼女のこの世への未練ではなく、残されたものたちの心の中にある「なんとかできたのではないか」という未練の感情だった。
そしてそれぞれの思いで墓にやってきていた同級生に「私の死はあなたたちのせいではない」と伝えるためだったんだなということに最後に気がつき、それをすませた幽霊は消えていく。ここにグッときてしまったのだった。
もうひとつの魅力は高校生が合唱部だという設定から劇中で歌われる劇中歌。中でも根本がクライマックスの独唱部分を担当したクイーンの「Somebody to Love」は絶品であった。この「墓場、女子大生」はすでに丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)の演出で乃木坂46中心のキャストでの上演例があるのだが、完全に音楽劇に仕立て直して、ももクロを中心にスターダストプラネットのアイドル((ももクロ+アメフラっシなら実現可能かも)をキャストにしての上演をぜひ見てみたいと思った。
*1:とはいえ、本当の意味でのヒット作は「あなたの番です」が最初かも。