下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

たこ虹冬のホールワンマン『なにわンダーランド2019』@中野サンプラザ

たこ虹冬のホールワンマン『なにわンダーランド2019』@中野サンプラザ
f:id:simokitazawa:20191216112202j:plainf:id:simokitazawa:20191216112122j:plain
たこ虹セットリスト

日程:2019年12月15日(日)
会場:中野サンプラザ2,222席(1階:1,670席、2階:552席)
17時半開演

前回同じ会場で同じ表題のライブを行ったのは3年前の「なにわンダーランド2016」。その時と比べるとトーク力も歌唱力もパフォーマンス力も格段に上がっているとは思うが、現時点(12月13日)でチケット完売になっていないことを考えると観客動員力という意味では壁に当たっているということは否定できないのかもしれない。
 今回のライブの最大の特徴は1曲目から最後の16曲目まで一度の休憩もMCも入れずにひとつのショーとして演じたことである。これが出来るにはそれが可能な体力、持久力はもちろんだが、それを飽きずに見せることのできる歌唱力やダンスの実力が不可欠であり、パフォーマンスの力量のレベルアップは前に同じ会場でライブを見た3年前とは段違いの実力となっていることを見せつけてみせた。
 歌唱力という点でいえばもちろん5人ともそれぞれに得意不得意な部分はあって、違う魅力もあったのだが、アンサンブルという意味では以前は根岸可蓮カイジューぶりを発揮しすぎて全体のバランスを壊す結果になっていた。それが強い大きな声で思いっきり歌うだけではなくて、細かいコントロールができるようになった進歩があり、声のインパクトの強さという本来の長所を生かしながらより周囲との調和もとれるようになっているのをみて少し驚かされた。
 今回のもうひとつの売りは単にがっつりライブとして次々と休まないで歌うということではなく、トータルパッケージとしてより一体感のあるものとして見せるために全曲のアレンジを細かく変更してもらって、それに合わせてダンスの振り付けなども細かく変更していたことだ。こうした変更はももクロでも生演奏が主体ゆえに臨機応変に変わるということはあるけれども、このたこ虹の場合はそれ用にオリジナルのミックスを作り直してきて、それをもとに稽古の段階で高い完成度に仕立て上げており、同じ年齢の時点でのももクロよりもそういう意味での完成度は高いのかもしれない。
 感心したのはかわいい系の声はまいまいが突出していて、これもたこ虹の武器ではあることは変わらないが、この日も何度も見せたロングトーンで歌い上げるところでのそれぞれの発声のようないわゆる「歌うま」を見せつけるのとはまったく真逆のアイドルっぽく意図的に可愛く歌うところでの歌い分けがより的確になっていると感じられたことだ。
 つまり、それぞれの曲の方向性によって歌いかたが使い分けられるようになってきたことだ。かつてエビ中にいたぁぃぁぃがそれを自在に使いこなしていた例はあるけれど、一般に歌がうまいとされている人ほどそれができない中で、複数のメンバーがそれに対応できるたこ虹はそれも武器にしつつあると思う。
 実は前にZEPP DIVERCITYで見た時と比べると、ホールとライブハウスの違いはあるとはいえ、この日は明らかにコールが薄い感じがして、その分新規が増えたのか、あるいは以前のファンが離れたのかとも思った。私の周囲にもももクロのペンライトを持った女の子もいたりして、現在のルールは分からないものの以前はだめだったはずと気になったりもした。ただ、このことはそれは明らかに最近ももクロ現場に頑張って数多く顔を出した効果があったわけだし、新規をどうこう言うのは筋違いだろうとも思った。だが、そういう側面がまったくないとはいえないにせよ、この日のコールの薄さはそういうことだけではなかったようだ。いつもとアレンジを変えたせいでコールがやりにくかったということもあったみたいだということがファンの声から分かってきたからだ。
 たこ虹の場合は現在は経験値のばらつきはあるとしてもすでに単純なスキルでは先輩グループと遜色のないところまで来ている。実力的には来年すぐにあるスターダストプラネットライブが行われる横浜アリーナにも対応は全然できると思う。
 ただ、一方で今回も最終的にほぼ埋まったとはいえ、アウェイの東京とはいえ、2000人強の中野サンプラザを埋めるのにもかなり苦戦したのも事実ではある。
 この日は来年の予定として全国20カ所でのライブツアーが発表になったわけだが、やはりいろんな手を打つのは当然としてもやはり地道にライブでの評判を糧に少しづつファンを増やし、その成果を次の大規模ライブで問うしかないのだろう。
 
simokitazawa.hatenablog.com