下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

3ヶ月連続放送決定!!!ももいろクローバーZ ニコ生ライブ映像まつり(1) 復興なみえ町十日市祭@ニコニコ生放送

3ヶ月連続放送決定!!!ももいろクローバーZ ニコ生ライブ映像まつり(1) 復興なみえ町十日市祭@ニコニコ生放送

 ももいろクローバーZ福島県浪江町の「復興なみえ町十日市祭」で行った無料ライブの中継をニコニコ生放送が再配信した。
 ただなんとなく見ているとあまり気が付かないことではあるけれども、驚くべきなのは文字通りお祭りのために設営された小さなステージで例えば恒例の春ライブである「春の一大事」では滋賀県東近江市富山県黒部市といった近隣の大都市からはかなり距離のある地方都市に数万人の観客を集めるももクロが普通にお祭りステージでパフォーマンスを行っていることである。

MCZ Stage Event 2019.11.24 「復興なみえ町十日市祭・ももいろクローバーZステージイベント」

 しかもさらに吃驚させられたのはセットリストである。冒頭が「ロードショー」続いて「The Diamond Four」*1と会場にたまたま来たような地元の人はまったく知らないような新しい曲を連発。ももクロといえば一般の人にはまだ「行くぜっ!怪盗少女」のような初期曲のイメージが強い。だから、そうした有名曲を含む数曲を披露するというのが普通だと思うが、ここで行われたのは同じ時間が与えられるならもっと大規模なフェスとかでも同じセトリをやるかもと思わせるような内容の本格的なライブだったからだ。
 実はももクロが突如、地方都市や東京のどこかに出現してゲリラ的にライブをするということはこれまでもあった。しかし、浪江町でのライブはそういうものではなかった。というのはももクロはこのライブが行われた翌年(つまり今年の春)福島県のJビレッジで大規模ライブを行うことが決まっていて*2、この日のお祭りへの登場はそれに向けての地元の人へのよろしくお願いしますの挨拶代わりのライブの色合いも強かったからだ。
 そのため、地元の人にはできるだけ来てほしいが、もし地元向けに無料ライブがあるとの情報を流せばモノノフ(ファン)が多数押しかけて大混乱を引き起こす可能性が否定できない。この難問を解決するために運営が打ち出した策が素晴らしかったのだ。
 リンク*3を参照してみていただきたいが、無料観覧券を地元向け(先着300枚)、一般向け(先着1800枚)に別けて、これを福島県浪江町の地元でのみ配布したのだ。
 これがどういうことかというとコンサート当日はファンは前後の時間に地元の店に行って飲食をしたり、土産品を買ったりして地元にお金を落とすことになるわけだが、これに参加するためには無料鑑賞券を受け取りためにももう一度浪江町に行かねばならず、延べ3600人が訪問し、食事をしたり、観光をしたりするという少なからぬ経済効果を地元にもたらすとともにもう一方ではそれをいとわないコアなファン(勇者たち)だけが集まるディープな空間がそこに発生することになるからだ。
 そして、そうした困難にもめげずに集まった勇者たちにはそれが十分に報われるような褒章もあった。そして、それは翌年に開かれるはずであった「春の一大事in福島Jビレッジ」に向けてのももクロの並々ならぬ意気込みを伝えるメッセージでもあった。ももクロの最初の歌であり、彼女らが特別な時にだけ歌ってきた「あの空に向かって」をこの日の最後の歌として歌ったからだ。

あの空へ向かって/ももいろクローバーZ - 復興なみえ町十日市祭
 この歌はももクロとともに歩んできた「ももクロの歌」ゆえに曲中でモノノフによって「世界のももクロナンバーワン」のコールがなされるのだが、この日の「あの空」は東日本大震災、そしてそれにともなう福島第一原発の事故という未曽有の悲劇から復興しようという浪江町民に対する最大のエールのように感じられた。
 そして、それはかならずやコロナにより1年延期となり運命的にも震災十周年の直後にJビレッジで開催される「春の一大事」の最後にも歌われ、福島県民、日本国民に対する復興のエールとなるのではないかと思う。ももクロは震災直後にも被災地の仙台や福島に遠征し、無料ライブを敢行。被災地の住民へのエールを送った。そして、そうした活動の経験はリーダーの百田夏菜子の心に積み重なり、国立競技場ライブ最後の「笑顔の天下取り」の名言につながっている。そういう意味では現在の日本、そして世界はコロナ禍により大きな逆境にある。ももクロはかつて「逆境こそがチャンスだぜ」とも歌ったが、ニコニコ動画の配信を見ながらコロナの逆境のもとでJビレッジのライブに挑むももクロこそはその存在理由の象徴的な出来事になるのではないかと考えている。できれば有観客でのライブを実現してほしいが、現在の状況では見通しはたたない。だが、どういう選択をするにせよ、それが最適解なのだということへの信頼感はあるのだ*4。 



8月12日(水) 19:00〜
配信URL:
live.nicovideo.jp


*1:www.youtube.com

*2:コロナ禍により1年延期された。

*3:www.730.media

*4:個人的には中途半端な形で開催するならば福島については万全の体制になるまで、さらにもう1年の延期だってありうると思っている。その場合、さらに1年後への期待を高めるために福島もつないでの浪江女子発組合との合同無観客配信ライブもありえるかもしれない。