下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

圧巻の「3000days」 本編のももクロ補完するいぎなり東北産のライブ「ももクロ春の一大事2022」外周パーク きてくんちぇパークDAY1

​「ももクロ春の一大事2022」外周パーク きてくんちぇパークDAY1



ももクロの野外ライブのもうひとつの魅力は外周パークで開催される無料ライブと飲食屋台が参加するフードコート。ももクロライブの中でも特に春と夏のライブに祝祭性を強く感じるのはライブ本番が始まる前から、こうしたイベントにより皆がライブに向けての高揚感を共有することができることにある。
そういう中でも今回の「ももクロ春の一大事2022」外周パークが重要な役割を果たしそうなのは地元で共同主催の3町のひとつである浪江町を本拠地にあーりんがプロデュースし、事務所の後輩アイドルをメンバーに設立した浪江女子発組合が外周ライブに参加したことだ。さらに1日目は浪江町復活応援アイドルreborn、2日目はアイくるガールズと地元福島県ローカルアイドルも参加。そのことで外周パーク(今回はきてくんちぇパーク)でのライブは本体であるももクロのライブと一体としてより地域振興の意味合いでも意義深いものとなっているのだ。下手をすれば前座的な役割になりかねないファンにはなじみの薄いこうしたアイドルを冒頭の浪江女子発組合の次に持ってきているのもそういう狙いがあるのではないかと思う。
もうひとつの目玉はスタプラ後輩で人気上昇中のいぎなり東北産が両日このライブに参加してトリを務めることだ。このグループは東北を拠点としているというだけではなく、震災直後に東北を頻繁に訪問し、被災地での活動を行ったももクロを見てアイドルになりたいと思ったメンバーも複数いるなど設立の経緯からして今回の「ももクロ春の一大事2022」と深い関係がある。いつの日か自らの手で東北でアイドルを結集したフェスを開催したいとの希望もあり、その前哨戦の意味合いもあり、相当以上の意気込みで乗り込んできた。
福島開催の今回の​「ももクロ春の一大事2022」だが、ももクロの本編のライブではあえて被災者に寄り添うような「応援歌」的な楽曲にとどまり、被災や復興への直接的な言及はなかった。そして、今回に関してはそれを補完するような役割を果たしたのが、東北を拠点とするアイドルグループのパフォーマンスだったと思う。そういう意味でいぎなり東北産が「3000days」からそのパフォーマンスをスタートさせたのは象徴的な意味があったのではないか。

www.youtube.com
東日本大震災から3000日が経過した2019年12月29日に仙台サンプラザホールでのライブで発表されたこの楽曲は当時歌う前に以下のような言葉の後披露された。

私たちは、東北で生まれて、東北で育ってきました。
東北では、約3000日前に忘れてはいけない出来事がありました。
当たり前が当たり前じゃなくなったあの日、怖くて、辛くて、幼い頃の私たちにはどうすることも出来ませんでした。
この出来事を忘れないように。
そして、東北で活動している私たちだからこそ伝えられることがあると思い、この曲を作りました。

 震災の被災により避難所生活を実際に経験したメンバーが少なくないいぎなり東北産にとってはこの楽曲は被災地の東北の人々を笑顔にするという彼女たちのレーゾンデテール(存在理由)とも深く関わりのある歌で、特別な歌でありすぎることもあって、同じバラード曲でももう少し前向きな決意をこめた「what ever」が発表された後はここぞという時にした歌わないスペシャルな楽曲となっていた。そして、今回の「きてくんちぇパーク」は東北産にとってそういう特別な思いが込められた場所だったのだと思う。
 いぎなり東北産の持ち味は基本的には会場全体を興奮の渦に巻き込んで、大いに沸かせるような楽曲が中心でそういう中に東北各地の地名を歌詞に入れ込んだ「ワンダフル東北」「ハイテンションサマー」やこの日のラストを飾った「うぢらとおめだづ」「天下一品」でこの日来た観客を圧倒していったが、この日最初に歌った「3000days」と2日目の最後に歌ったももいろクローバーZの「ももクロのニッポン万歳!」東北パートのカバーには深い思いが託されていた。「ニッポン万歳!」は震災直後にヒャダインが制作。その後、震災直後のZEPP仙台でのチャリティーライブや震災から1年後に福島・スパリゾートハワイアンズのグランドオープン応援ライブ「ももいろクローバーZ きずなライブ2012~がんばっぺ いわき~」で歌われた楽曲で、福島や東北にゆかりのある楽曲ではあるのだが、曲の要となる東北パートを卒業した有安杏果が歌っていたこともあり、現在は東北パートをことさら強調しないで日本全体を幅広く応援する「ZZver.」に更新されており、元バージョンをももクロが歌うということはなくなっていた。福島の春一では久しぶりにももクロが歌うのではないかという予想もあったが、今回のセットリストの方向性からそれはせずにかわりに2日目に東北産がこの歌を歌うことになった。この曲は被災後にこの曲を聴いて励まされたとの前説をつけて、いぎなり東北産が「夏S」のももクロカバーメドレーで披露したことがあり、今回はそれ以来となったけれど魂を揺さぶられるところがあり、この曲は「ZZver.」もあるけれども、ももクロが歌うことがあまりないのであれば東北産にレパートリーとして歌い継いでもらってもいいのではないかと思ったのである。


「きてくんちぇパークDAY1」のもうひとつの目玉はゲイアイドルを自ら名乗っている二丁目の魁カミングアウト、福岡拠点の九州女子翼、広島拠点のまなみのりさとスタダ以外の実力派アイドルが顔を揃えたことだ。これらのグループについては「GIG TAKAHASHI」で詳しいレポートを書いた*1のでそちらを参照してもらいたいが、二丁目の魁カミングアウトは観客を煽り動かしていくステージングにおいては周回パークではかつてのあゆみくりかまき(すでに解散)を彷彿とさせるような力量を感じさせた。まなみのりさも来年4月の解散をすでに発表しており、これが春一での最後の雄姿となることもあり、若いアイドルとは一線を画した彼女ら特有の円熟したステージを見せてくれた。九州女子翼はメンバー脱退により一時4人となっていたのが新人が加わり、元の5人の体制に戻り、やはりもともと5人を前提に作ったダンスフォーメーションや歌割りは本来の姿に戻ったという安定感を感じさせた。メンバー個々の個別認識が完全には出来ない状態だということもあるが、3月に入ったばかりの新メンバーがいるはずなのにすっかり溶け込んでいて誰がそうなのかは遠目には分からないことに補強の成功を感じさせられた。タイプはまったく異なるが、同じ地元のライバルとしてばってん少女隊と切磋琢磨していってほしいと思う。
(浪江女子発組合と福島のローカルアイドル、この日は参加しなかったAMEFURASSHIについては2日目を参照)

タイムスケジュール ※【DAY1】【DAY2】共通
※変更になる場合がございます。

09:30-----〈きてくんちぇパーク〉OPEN

 ▼地元飲食ブース・物産ブース営業START

  ※公式グッズ・ファンクラブブースなどの​営業開始時間は追ってお知らせします

 ▼観覧無料の【パークステージ】開演

   トップバッターは 浪江女子発組合!

10:30-----〈チケット発券(認証)〉START

12:00​-----〈クローク〉受付START 

12:30-----〈ライブ会場〉開場 ​

14:30-----〈ライブ会場〉開演

17:00頃---〈ライブ会場〉終演

​18:00頃---〈きてくんちぇパーク〉CLOSE

www.momoclo-park.net
simokitazawa.hatenablog.com