下北沢通信

中西理の下北沢通信

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方向性異なるが圧倒的な存在感見せたアメフラと東北産。最後のしゅかしゅんとprediaもさすが。 GIG TAKAHASHI 2@Zepp Haneda公演

GIG TAKAHASHI 2@Zepp Haneda公演


昨年は主としてアメフラっシ(現AMEFURASSHI)がどのように受け入れられているかを現場で直接知りたいとの目的があり、数多くのアイドルフェスに足を運んだ。その中でもフェスの内容自体が素晴らしかったのが「GIG TAKAHASHI」でそのレポート*1もこのブログに掲載した。それもあって今年も出かけてみたのだが、充実した内容だったと思う。冒頭のMCでTask have FUNの熊澤風花が「このフェスが素晴らしいのは座ったままで携帯をいじっているような人がほとんどいないことだ」と話していたが、その通りで他所のフェスと比べると短いトイレなどを除くと中抜けする人も非常に少ない。その理由のひとつに特典会を他のアイドルのパフォーマンス時間に重ねないで終了後に集約、特に今回は平日開催ということもあり、コンパクトにまとめたこともあるだろう。そういうのがいい空気感を作っているのをほかのフェスも参考にすべきではないかとも思った。
この日の出演者の中で抜群の存在感を見せたのがAMEFURASSHI。この1年での小島はなの成長ぶりが凄い。このグループの核だった愛来と2トップを形成する形で、特に女性ファンの心を鷲掴みにしそうな魅力に溢れたパフォーマンスを見せた。 GIG TAKAHASHI 2は「可愛さを見せるアイドル」よりも大阪春夏秋冬やまなみのりさらライブに軸足を置き、パフォーマンスにおいて実力を発揮するタイプのグループが中心のため、観客もそうした志向が強く、AMEFURASSHIとの親和性が高い気がした。
 この日のAMEFURASSHIのセットリストはDROP DROP」「BAD GIRL」「MICHI」「DISCO-TRAIN」と最近出したシングル収録のカッコイイ系の曲が中心。ダンスと歌唱のアンサンブルについてほかの実力派のグループと比較しても隙のない完成度の高さを見せつけた。アルバムのリリイベ告知も自己紹介MCもせずに「AMEFURASSHIでした」とだけ言い残して去っていくパフォーマンスは初めて見た人にかなりのインパクトを与えたのではないかと思う。

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 いぎなり東北産もAMEFURASSHIとはまったく違う方向性で圧倒的なインパクトを感じた。こちらは自分たちのファンというわけではない観客を盛り上がりの渦に巻き込んで味方につけていく、訴求力が凄まじかった。いままで見たアイドルの中でこれと同じような「巻き込み力」を見たのはロックフェスにおけるももいろクローバーZぐらい。その意味ではももクロとはまったく違う道を行くAMEFURASSHIに対し、「第二のももクロ」としてブレークする大衆性、祝祭性をこのグループは備えているかもしれない。
 この日は特に力が入っていたことは彼女らのアンセム「天下一品~みちのく革命~」をセトリに入れていたことにもうかがえるが、そこから鉄板の「うぢらとおめだつ」、各メンバーの魂の叫びを圧倒的な歌唱力とともに見せる「Whatever」に続く流れは東北産の必勝の方程式といっていいかもしれない。

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 NegiccoPerfume、この日出演したまなみのりさ、MCを務めた熊澤風花のTask have FUNのようにある時期以降3人でかなり長く存続する例はあるが、これだとひとり休業して2人になってしまうと通常の活動が苦しい。そのために5人あるいは6人が理想形としながら設立されてもメンバーの卒業や離脱などをへてももクロやAMEFURASSHI、B,O.L.T.のように4人で活動しているグループはギリギリの淵にたっているといえるのかもしれない。
 冒頭に登場の九州女子翼も現在4人で活動しているが、近く新メンバーがひとり加わる予定のようだ。昨年のこのフェスのレポートで「4人編成でボーカル力の高いメンバーを複数そろえているという意味でアメフラっシと共通点がある」などと評したのだが、同じく4人となったばってん少女隊が新メンバーを加えて、快調な様子を見せているから、福岡県ではそういう空気感があるのかもしれない。いずれにせよ現体制でGIG TAKAHASHIに参加するのは初めてなどとあえて触れたのはこの日ラストに出てくるPrediaと大阪☆春夏秋冬のことがあったからかもしれない。他の曲は分からないが最後に歌った「空への咆哮」だけはすっかり覚えてしまった。こういうアンセム曲を持つのはやはり強みだと思う。

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 声を張り上げるタイプのボーカルの九州女子翼の後に出てきたせいもあるが、B.O.L.T.が登場しての最初の印象は「声ちっちゃい」「大丈夫か?」というものだった。ただ、「アイドルってそういうことか」と思わせるものがB.O.L.T.にはあって、中学生のあやなの(青山菜花・白浜あや)を先頭に徐々に場内の空気感を変えて、場内の観客を動かして自分たちのペースに持ち込んでいく。以前に見た時よりも煽りがうまくなっている気がしたが、もしかしたら浪江女子発組合で上の2人(内藤るな高井千帆)があーりん(佐々木彩夏)と共演し、そこから学んだものもあるのかもしれない。
 アップアップガールズ(仮)は以前からももクロライブの周回ステージなどで何度も見たことがあるけれど、曲は受け継がれていてもメンバーはほとんど入れ替わってしまっているからほぼ新グループといっていい。パフォーマンスに実質結成1年強のキャリアのグループとは思えない練度があるのはどういうことだろうと考えながら見てしまった。
 AMEFURASSHIから休憩をはさんで二丁目の魁カミングアウト。昨年初めて見た時は驚いたが、女性アイドル中心のアイドルフェスにすっかり溶け込んでいる。自分たちのファンではない観客を巻き込んでいく訴求力ということでいうならばここといぎなり東北産が頭ひとつ抜けていたかもしれない。コールが出来ない状況で自らセルフコールを入れながら観客を巻き込み展開するパフォーマンスの場内での一体感は格別なものがあったと思う。
 ukkaを見たのは2人の新メンバーが初披露された昨年11月のライブ*2以来かなり久しぶりのことだ。ukkaもメンバーのコロナ感染に伴う活動休止からの復帰となったが、この時点ではまだ活動ができない川瀬あやめは欠場。5人でのライブとなった。エース川瀬の欠場は痛いかなと思ってみはじめたのだが、新メンバーが予想以上になじんでいることもあって、大きな欠落感は感じさせない。川瀬のパートを誰がフォローしたのか、細かいことは分からない*3のだが、歌割りに加わった葵るり 、結城りなは担当部分こそまだ少ないもののダンスはほとんど遜色がなく、初めてこのグループを見た人だったら既存メンバーと区別が難しいであろうぐらいアンサンブルにとけこんでいた。エース川瀬が復帰し「完全体」になったらAMEFURASSHIにとっても強力なライバル *4が戻ってきたといえそうだ。
 まったく異なるパフォーマンススタイルでありながら、このGIG TAKAHASHIの前身ともいえるももクロ周回ステージから毎年のように参加し、若いアイドルたちにアイドルの到達点の姿を見せ続けてくれていたのが昨年解散したあゆみくりかまきと今年も参加したまなみのりさだと思う。まなみのりさPerfumeと同じアクターズスクール広島出身の実力派アイドルで、インディーズデビューが2007年だから、今年が15年目となる。ポニーキャニオンから一度はメジャーデビューするが、契約を打ち切られた後も地元広島に拠点を戻し、地道な活動を続け現在に至っている。コロナ禍の状況でアイドルグループの解散が相次ぐが、本人たちに一定以上のモチベーションがあれば規模はともかく活動自体は継続していけるのだというひとつのモデルケースとしてもっと注目されてもいいと思う。
 パフォーマンスの最大の特徴はソロボーカルとデュオダンス、デュオボーカルとソロダンス、間奏部分は3人のダンスアンサンブルとフォーメーションが変幻自在に変化していくこと。ダンス部分にユニゾンがあまりないのも特徴。3人の歌唱力、ダンススキルが拮抗して高いからこそできることだとは思うが、そのパフォーマンスはまさに作品といいたくなる質感を備えている。AMEFURASSHIもいつかこういうのに挑戦してもらいたい。


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 とはいえ、この日のライブでメインイベントと言っていいのはラストの二組、predia大阪☆春夏秋冬だったといえるだろう。いずれのグループも近解散あるいは現体制の終了という事実上の活動休止を迎え、GIG TAKAHASHIへの出演もこれが最後ということだったからだ。このフェスティバルは昨年始まる前にあゆみくりかまきの「未来トレイル」を客入れの音楽として流れ、かつて参加したグループに対するリスペクトを忘れないことにも好感を感じるのだが、そうしたフェスの雰囲気の中でのpredia、大阪☆春夏秋冬のGIG TAKAHASHIラストライブにはぐっと来るものがあった。
 prediaは今年6月5日のファイナルライブをもって、解散することをすでに発表している。名前は以前から知ってはいたが、じっくりと見ることができたのはこれが初めてだった。

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 ラストシングル曲でこの日も披露された「DRESS」などからすると複数の歌い手によるソウルフルでパワフルなボーカルが特徴のようだ。日本のアイドルシーンではあまり見られないようなセクシーな衣装やパフォーマンスも持ち味だが、「大人アイドル」のキャッチフレーズ通りにメンバーの平均年齢もあり、コロナ禍の現状で先行きが不透明ななかでこれ以上の継続は困難だったのかもしれない。ただ、設立してから11年活動を続けてきたというのはこのグループを見て最初に連想した「太陽とシスコムーン」が実働1年少しで解散。SPEEDでさえ第一期が5年、再結成後5年とグループの活動歴は10年程度ということを考えると「美女揃いの大人系セクシーユニット」というひとつ間違えば色物にも見られかねないユニットが10年以上活動できたというのは歌、ダンスへの真摯な取り組みなどがあった*5からに違いない、誇るべきことだと思う。
 一方、大阪☆春夏秋冬も現体制での活動は現体制での活動は近くスタートするラストツアーが最後となる。その後、オーディションも行い新体制に移行することも併せて発表はされているが、avexとの契約をはじめ現在のような活動が継続できるのかも未確定*6。そういう意味ではメンバーの離脱はなかったものの5人卒業による新体制後の展開がいまだに漠然としているしゅかしゅんのレーベルメイト「たこやきレインボー」と現状は類似しているかもしれない。
 そういう現状を踏まえてもこの日のパフォーマンスには普段以上に気合が入っていると感じられる素晴らしいものだった。特にこのグループのメインボーカルであるMAINAの歌にはロック&ソウル系のパワーボーカルとして唯一無二であると感じさせられた。一般にはアイドルフェスでは自分の推しグループの出番が終わるとすぐに帰ってしまう観客が多くみられるなかでこの日は最後まで残っていた観客が多く、しゅかしゅんもそれに応えるパフォーマンスで返していたと思う*7


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□会場 Zepp Haneda(TOKYO)

□日時 2022年3月1日(火)open 16:00 / start 17:00

□料金 自由席 ¥5,900 (税込・入場時別途ドリンク代・入場整理番号付)

2022年2月11日(金祝)10:00 ~ 2月14日(月)23:59 H.I.P.会員先行  https://www.hipjpn.co.jp/archives/64769

2022年2月19日(土)10:00 一般販売開始  https://eplus.jp/gigtakahashi2-0301/

(問)H.I.P. 03-3475-9999 / www.hipjpn.co.jp

□主催・企画・制作:H.I.P.

□協力:Pop'n'Roll

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:simokitazawa.hatenablog.com

*3:茜空がいつも以上に目立っている気はした。

*4:前身の桜エビ〜ず時代に対戦型ライブイベント「ライブスタイルダンジョン」でアメフラっシと二度の死闘を繰り広げ1勝1敗の結果で、決着はまだ着いていない。

*5:楽曲が現代の音楽シーンからすれば最先端とは言い難いとは思うが、実力があることはすぐ分かる。

*6:ひょっとしたらライブのMCなどで非公式に明らかになっているかもしれないが公式サイトなどでは記載はなかった。

*7:いくことはできないがラストツアーにAMEFURASSHIが名前を連ねたのは非常に名誉なことで、アメフラメンバーはしゅかしゅんのパフォーマンスを目に焼き付けてきてほしい。