下北沢通信

中西理の下北沢通信

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2022年アイドル&ライブ ベストアクト(年間回顧)被災地でのももクロ春ライブ あーりんの演出光るソロコン 超進化したAMEFURASSHI

2022年アイドル&ライブ ベストアクト(年間回顧)

2022年アイドル&ライブ ベストアクト

1,ももクロ 春の一大事2022 ~笑顔のチカラ つなげるオモイ in 楢葉・広野・浪江 三町合同大会~」@福島Jヴィレッジ*1
2,佐々木彩夏ソロコン「AYAKANATION2022」@東京ガーデンシアター*2
3,AMEFURASSHI「FALL IN LOVE TOUR2022」@横浜ベイホール*3
4,ももいろクローバーZ「ももいろクリスマス2022 LOVE」さいたまスーパーアリーナ
5,有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」@大手町三井ホール*4
6,ばってん少女隊 中野サンプラザワンマンライブ『御祭sawagi〜踊れ心騒げ〜』中野サンプラザ*5
7,いぎなり東北産「TOKYO INVADER II」東京ドームシティホール*6
8,AMEFURASSHI「Drop Tour 2022」ファイナル@KANDA SQUARE HALL
9,ももいろクローバーZ「祝典ツアー」 ツアーファイナル@武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ*7
10,CROWN POP「豊洲に来て」豊洲PIT*8

 演劇ベストアクト*9に続いてアイドルライブの年間ベストアクトを選んでみた。この2つにダンスを加えた表現はいずれも総合エンターテインメントとしてパフォーマンスにおける隣接領域だと考えている*10
 とはいえ、ももクロのライブには実は単純なライブの中身以上の広がりがあり、それをどこまで広げて考えるかについては順位をつけることについては悩ましいところもある。ももクロの春ライブは「春の一大事」と題し各地方の地方自治体と提携し共同開催されるが、ももクロ 春の一大事2022 ~笑顔のチカラ つなげるオモイ in 楢葉・広野・浪江 三町合同大会~」として開催された今年の「春の一大事」は当初2020年の東京五輪を前に復興のシンボルこめられこめられ聖火のスタート地点とされたJヴィレッジという象徴的な場所で予定されていたのが、コロナ禍による二度の延期をへてようやく今春実施されることになった。

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 私もモノノフ仲間が出してくれた自家用車に同乗して駆け付けたが、現地の震災と原発事故からの復興への熱い思いも感じることができたライブは単なるライブ以上の体験であった。ライブ本編に留まらず、いぎなり東北産、浪江女子発組合、B.O.L.Tが参加した外周ライブ、初日夜の浪江町での花火大会、浪江女子発組合の居残りライブと「これがももクロだ」と感じさせる魅力が随所にあり、ももクロにはももいろクローバーZ「ももいろクリスマス2022 LOVE」(ベストアクト4位)やももいろクローバーZ「祝典ツアー」 ツアーファイナル(ベストアクト9位)のようなより作りこまれたより完成度の高いライブもあったが、今年のベストにはあえて「春の一大事」を選ぶことにした。
 ライブを演劇やダンスと同様に作品だと考えるとその完成度の高さに目を見張ったのが佐々木彩夏ソロコン「AYAKANATION2022」であった。あーりん軍団としてスターダストプロモーションのアイドル部門「スターダストプラネット」所属の妹グループのアイドルを共演者に迎え、物語もあるショー仕立てのライブに自らの演出で作り上げるのが特色だ。今回は佐々木演じるあーやか姫と盗賊の手下二人(AMEFURASSHIの小島はな愛来)による怪盗あーりんの一味の暗躍がモチーフだ。このライブが年々完成度を増しているのは単なるバックダンサーの域を超えた妹アイドルらが年々その魅力を増してきていることもある。彼女らが普段のライブでは見せないような魅力を引き出すあーりんのプロデュース力、演出力の素晴らしさが大きなセールスポイントとなっているである。実は2023年はソロコンだけではなく、結成15周年を記念するツアーのプロデュースそのものをももクロ自身がプロデュースするということになっている。このライブは十中八九あーりんのアイデアが核となると思われ、そういう意味では浪江女子発組合の新たな動きとも合わせて、あーりんの活躍が一層注目されると思う。

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一方、ライブパフォーマンスの中身を問題にするのであればAMEFURASSHIの「FALL IN LOVE TOUR 2022ファイナル」@横浜ベイホールがベストアクトといえる。1部2部両部に行ったが、いずれもグループの充実ぶりが分かる素晴らしいライブだった。ソールドアウトではないものの観客は両部ともほぼ満員で会場の熱気も最高潮となった。両部ともこの日初披露の新曲「Fly Out」がスタートしたのだが、ツアーの初日に披露され、ライブ当日の深夜0時に配信も開始した「Love is love」と合わせ、韓国など海外グループの楽曲にも引けをとらないような世界水準のパフォーマンスを演じた。

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 有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」@東京・大手町三井ホールも素晴らしいライブであった。以前のサクライブの時は2日間のセットリストをかなり大きく変更してきたが、さすがに今回はほぼ同じ曲順の進行。ご当地カバー曲のみは前日のback number「高嶺の花子さん」からこの日はバンプオブチキン「花の名」*1となったが、杏果は男性ボーカルのバンド曲をカバーすることもけっこう多くて、やはりこういう音楽が好きなんだろうなと思った。
この日のハイライトはアレンジで空気感を大きく変えた「Feel the Heartbeat」を終えた後、感極まって涙ぐみ、曲中で客席を見て、横浜アリーナでの初めてのソロライブのことやその後起きたいろいろなことを思い出してしまったからだと涙をこらえながら述懐した場面かもしれない。
有安杏果といえば昔からパフォーマンス中によく泣くことで有名で、ももクロ初の西武ドームライブの『ももクロ夏のバカ騒ぎSummer Dive 2012 Tour』の『ワニとシャンプー』では泣きながら出てきたために歌詞がぐだぐだになって活舌の問題もあるから全く何を歌っているのか分からないほどだったが、もちろんこの日はそういうことはなく、プロとしてちゃんと歌い終わった後でMCに入って溢れ出る感情が抑えきれなくなった感じであったが、クールなパフォーマンスを見せてもこういう感性が健在なのを嬉しく思った。
実は独立してソロになってからもピアノ演奏がうまくいかなかった時に涙してしまい感情が不安定なんじゃないかと心配させたこともあったのだが、この日の涙はどちらかというと「あの日があって、そして満席の観客を見て、私はここまでやっと来られた」という感極まった涙で、ネガティブなものではなく、会場の観客も共感したのじゃないか。
ももクロ時代のことにはあまり触れないけれど、逆にももクロ時代のソロコンのことには饒舌なほど触れていて、ソロアーティスト有安杏果の原点はあの横浜アリーナでのソロコンスタートにあったということがよく分かるMCで、あの時にその場に立ち会ったものとしても感慨深いものがあった。

*1:simokitazawa.hatenablog.com

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*3:simokitazawa.hatenablog.com simokitazawa.hatenablog.com

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*6:simokitazawa.hatenablog.com

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*8:simokitazawa.hatenablog.com

*9:simokitazawa.hatenablog.com

*10:ダンスの関係者には腹を立てる人がいるかもしれないが、特にダンスとある種のアイドルライブ=例えばももいろクローバーZやAMEFURASSHIのライブ=を見る時の見方は私には区別がない。