下北沢通信

中西理の下北沢通信

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AMEFURASSHI「FALL IN LOVE TOUR 2022」追加公演@代官山 UNIT

AMEFURASSHI「FALL IN LOVE TOUR 2022」追加公演@代官山 UNIT


AMEFURASSHIツアー追加公演の代官山UNIT第2部に出掛けた。ツアー初日以来の参戦だが、初日にあった緊張が解けて、かといってツアー先の大阪、名古屋のようにぶっちゃけるということもなく、パフォーマンスの完成度の高さを見せつけるようなライブとなった。
K-POP系列のアルバム曲が中心だった前回の「Drop」ツアーから一転し、ロック系の従来曲、ダンスミュージックの色合いの強い最近の楽曲と同じ「アゲ」曲でも系統の違う楽曲を変幻自在に組み合わせ、ダンス&ボーカルグループとしての幅広さを見せつけているのが今回の「FALL IN LOVE TOUR 2022」であろう。
この日の第2部はまずはロック感バリバリの「Rain Makers!!」「グロウアップ・マイ・ハート」の2曲でロケットスタート
新アルバムを代表するダンスミュージック「Drama」を続けるという観客を一瞬も休ませない畳みかけ。さらに市川優月デスボイスが響き渡るメタル曲「ハイカラー・ラッシュ」とこのグループがこじゃれた音楽性を強調する最近の韓国女性グループとはまるで異なる守備範囲を持つグループなのだということを見せつけるような展開に「こりゃ凄い」と思わずうなり声が出そうになる。
現在のAMEFURASSHIの最大のテーマがガールズ・クラッシュだとするとそれを象徴するような「Love is Love」「Bad girl」がそれに続く。「Love is Love」は新曲でこのツアーの表題曲と言ってもいいかもしれない。AMEFURASSHIはストリートダンス系を中心にいろんなダンス技法がパフォーマンスに取り入れられていることが多いのだがこの「Love is Love」ではヴォーギングというダンスが取り入れられている。

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 ヴォーギングというのは雑誌「ヴォーグ」のモデルのような決めポーズを次々と取っていくことから名づけられたダンススタイルでMadonnaのMVで世間に知られたが、最近でもAya Bambiが踊り、再び脚光を浴びている。AMEFURASSHIのダンス振付はANNA先生とメンバーに呼ばれている宇野木杏奈が担当しているのだが、アイドルに振付をしている振付家の多くが「自分特有の振付」をアイドルに振り移しているのに対し、AMEFURASSHIで言えば曲調に合わせていろんなスタイルのダンスを自在に引用し組み合わせてバラエティーを持たせているのが特徴だ。同じ新曲でも「グラデーション」では手話を取り入れた「手話ダンス」、もともと3B時代の楽曲だった「Sneakers Delight」はハウスダンスのステップをふんだんに取り入れて大人の空気感が醸し出された楽曲に仕立て直された。「雑踏の中で」も最近「公開稽古」で行ったジャズダンスの訓練などを通じてブラッシュアップされ1回目のスタプラフェスで披露した時とはまるで別物といっていいような表現となってきている。
 ストリートダンス系のダンサーには専門職のようなところが強くて、ブレーキングのダンサーはブレイクダンス、ポッピングのダンサーはポップダンスと自分の得意とするダンスのみを踊る人がほとんど。一種類のダンスだけを比べればもちろんAMEFURASSHIのメンバーより専門のダンサーの方がスキルが高いがこれほど広範な種類のダンスをこなせるダンサーはあまりいないのではないか。しかも彼女らはアイドルだからそれを歌いながらやるわけで、そこがこのグループの最大の武器だと思う。
 一方、中盤は「雑踏の中で」「フロムレター」などバラード曲を中心に歌唱力の高さを見せつけるような楽曲を並べた。
最近のライブで定番となっている「MICHI」「Drop Drop」「メタモルフォーズ」と畳み掛けていく終盤も見応え十分だが、その中にあえてオラオラ曲というか最近の楽曲傾向とは真逆な「轟音」を入れてきたのも面白い曲順と感じた。