下北沢通信

中西理の下北沢通信

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岡田利規×酒井はな TRIAD INTERMISSION Vol.2「『瀕死の白鳥』を解体したソロ」プロセストーク

岡田利規×酒井はな TRIAD INTERMISSION Vol.2「『瀕死の白鳥』を解体したソロ」プロセストーク


【9月3日19:00〜】TRIAD INTERMISSION Vol.2「『瀕死の白鳥』を解体したソロ」プロセストーク
チェルフィッチュ岡田利規がバレエダンサーの酒井はなと共同制作する「『瀕死の白鳥』を解体したソロ」(仮題)。現在、来年の上演に向け、準備を進めている同作品を上演に先立ち、プロセストークという形で途中報告しようというのがこの日の企画であった。
きたまりが京都でのダンス企画に演劇の演出家、多田淳之介を招き、ここからアジア各国を巡回する「RE/PLAY」が生まれたようにダンス(バレエ)に外部のコラボレーターを入れる際に演劇作家(劇作・演出)を入れるというのは有力な選択肢ではないかと思っている。さらにいえばその相手として岡田利規を選んだのは慧眼であると言わざるをえない。
岡田は前述した多田などと並び、人間の身体を使って新たな表現を組み立てるという意味では日本を代表するようなスペシャリストのひとりだからだ。
2000年7月の日記風雑記帳を ブログの過去ログで見てみると実は私は20年前の2000年に新国立劇場のプリマとして踊っていた酒井はなのファンなのだった。

ラ・シルフィード」作曲/ヘルマン・ロヴェンショルド
振付/オーギュスト・ブルノンヴィル
         振付指導/ソレラ・エングルンド
           舞台美術・衣裳ピーター・カザレット
 シルフィード/酒井はな、ジェームス/小嶋直也、グァーン/根岸正信、エフィ/中村美佳、マッジ/ソレア・エングルンド、第1シルフ/前田新奈

 初めてバレエダンサー酒井はなの魅力に気が付いたのが「ドン・キホーテ」のキトリだった。キトリは超絶技巧的なしっかりした技術に加え負けん気の強そうな酒井の個性とも相まっていかにもはまり役という感じだった。それだけに役柄としてはキトリなどとは対極にある「ラ・シルフィード」のシルフィというのはそれほど酒井が得意な役柄とは思えなかったので、それをどのように演じるのかに注目した。

 結局、今回見ることは出来なかったのだけれど今回の新国立劇場では吉田都シルフィードを演じていて、それを見たある吉田都ファンの言葉によれば「それはあたかも妖精そのもののよう」だったという。それに対して、酒井はなのシルフィードはそれとはちょっと違う感じで魅力的なのであった。シルフィードはジェームズにちょっかいを出したいだけであって、そこにはマッジにあるような悪意はない。ここが妖精といっても死霊であるジゼルのウィリなどとは違うところである。だから、ここは妖精はあくまで妖精のようであって悪くはないのだけれど、酒井のシルフィードはどこか小悪魔的なところがあって、妖精というには人間っぽいのであった。特に最後の死を迎えるシーンなど感情表現が豊かすぎるようなところがあって妖精として考えるとあれはちょっとやりすぎじゃないかとも思った。とはいえ、全体としてそうした感情表現の豊かさはシルフィードにおいてすら酒井の踊りの魅力になっていることは間違いない。シルフィードとしての正統的な演技かどうかには疑問があっても酒井はなならではのシルフィードをうまく演じているという意味では意外にうまくはまっていた印象だったからである。

 上記に書いたように酒井はなといえば典型的なクラシックバレエダンサーのイメージが強く、バレリーナとしては当時は現代バレエの演目を踊っているイメージはほとんどない。最近は夫である島地保武とのデュオユニットも組んでいるということなので、現代バレエにも取り組んでいるようだが、酒井はなの方から希望して、チェルフィッチュ岡田利規と組んで「瀕死の白鳥」を<継承/再構築>する新作バレエを製作するというのはかなり驚かされた。
 今回のトークは当初、今年の春にダンスハウスDance Base Yokohama(DaBY)のオープン記念公演として開催するはずだったのが、コロナ禍によって中止になり、その後来年8月の公演に向け、リモートで準備を進めていたのを途中段階で報告会的に明らかにしたものだった。
この日はトークの途中で酒井はなが新作を一緒に作ることになったチェリスト四家卯大の演奏でバレエ「瀕死の白鳥」を披露した。配信ということでカメラごしではあるが、彼女が踊る姿をひさしぶりに見ることができて、ダンサー、酒井はなは健在だと、ちょっとした感激を味わった。しかも、マイア・プリセツカヤがそうだったようにこれはダンサーが一生踊れる作品であるとの言葉もあり、岡田と一緒に新作を創るなど、新たなことへの挑戦のモチベーションも高いようで、今後の活動に期待したい。
 トークではバレエファンであればあまりしないような質問まで出たりして、酒井はなさんがそれに丁寧に答えてくれていたので、バレエを踊る時にどのようなイメージを持って踊っているのかなどについて聞くことができたのが面白かった。これはどのバレエダンサーもそうなのかアクトレスダンサーとされていた酒井はなだからこそなのかというのは分からないのだが、バレエ作品を踊る時にいろんなイメージを喚起しながら踊るということや、そのイメージを引き起こす引き金となるのが音楽であるという話は興味深かった。 

TRIAD INTERMISSION vol.2「『瀕死の白鳥』を解体したソロ」プロセストーク

ゲスト
岡田利規 (演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰)
酒井はな (バレエダンサー)
四家卯大 (チェリスト)

ナビゲーター
唐津絵理 (DaBYアーティスティックディレクター / 愛知県芸術劇場シニアプロデューサー)

会場 Dance Base Yokohama

コロナ禍におけるクリエイションの可能性を模索し、週1回、現時点で計10回の Zoom リハーサルを重ねてきた岡田利規、酒井はな、四家卯大の「『瀕死の白鳥』を解体したソロ」の創作プロセスに関するトーク、および、『瀕死の白鳥』の一部のデモンストレーションを実施予定です。
同時にDaBYチャンネルにて、ライブストリーミングを配信します。


□TRIAD INTERMISSIONとは
2020年5月にダンスハウスDance Base Yokohama(DaBY)のオープンに合わせて開催が予定されていた「TRIAD DANCE DAYS」は、新型コロナウイルス拡大感染症拡大の影響によりすべてのプログラムが中止となり、オンラインを駆使して創作方法を変えながら、更なるクリエイションが進められています。

これら創作のプロセスを「幕間=INTERMISSION」と捉え、クリエイションのプロセスを積極的に公開することで、普段知ることの少ない創作の背景やアーティストたちのコロナ禍における新たな取り組みを知っていただく機会とすることを目的としています。


□『瀕死の白鳥』を解体したソロ プロセストークについて
Dance Base Yokohama(DaBY)の最初の企画及び初のレジデンス作品として企画していた「TRIAD DANCE PROJECT『ダンスの系譜学』」は、世界的な巨匠振付家と創作を行ってきた安藤洋子、酒井はな、中村恩恵という3名のダンスアーティストが踊る、巨匠振付家のオリジナル作品<原点>と、新たな創作を試みる<継承 / 再構築>の2部構成からなり、アカデミックなダンスの振付に迫ることを試みています。

酒井はなの<継承/再構築>では「『瀕死の白鳥』を解体するソロ」を新創作。この作品は、バレエの革命児ミハイル・フォーキンが振付したオリジナルに対しての批評的視点から、演劇作家・小説家の岡田利規によって創作し、上演される予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、Zoomでの創作活動に変更し、4月より週1回のペースで、現時点で計14回のリハーサルを重ねてきました。

本日は、本作の創作の背景や、リハーサルプロセスにまつわるトーク及び『瀕死の白鳥』のデモンストレーションを行います。


□開催形式
トークライブ (限定 15 名)】料金: 2500 円 (税込)
ライブストリーミング 】料金: 無料
DaBYチャンネル(https://youtu.be/K_WUDZAbkQc)にて配信

□申込方法
Peatix (https://dancebaseyokohama.peatix.com/... OUT
※8/1(土) 10:00 〜発売開始
※チケット申し込みには事前の DaBY メンバーズ登録が必要です。

◆日 時  2020年9月3日 19:00~20:30
◆会 場  Dance Base Yokohama(以下DaBY)

◆出演者
岡田利規(演劇作家/小説家/チェルフィッチュ主宰)
酒井はな(バレエダンサー)
四家卯大(チェリスト
唐津絵理(愛知県芸術劇場シニアプロデューサー/Dance Base Yokohamaアーティスティックディレクター)

◆TRIAD INTERMISSIONとは
2020年5月にダンスハウスDance Base Yokohamaのオープンに合わせて、開催が予定されていた、DaBYオープニング記念イベント「TRIAD DANCE DAYS」は、新型コロナウイルス拡大感染症拡大の影響によりすべてのプログラムが中止となりました。
しかし、中止となったTRIAD DANCE DAYSの作品のいくつかは、コロナ禍においてもオンラインを駆使してクリエイションを続けることによって、別作品に生まれ変わったり、創作方法を変えながら、今も開催日時が未定のまま、さらなるクリエイションが進められています。
これら創作のプロセスを「幕間=INTERMISSION」と捉え、オンラインを中心に、クリエイションのプロセスを積極的に公開することで、普段知ることの少ない創作の背景やアーティストたちのコロナ禍における新たな取り組みを知っていただく機会としています。

◆『瀕死の白鳥』を解体したソロ プロセストークについて
Dance Base Yokohama(DaBY)は、ダンスにフォーカスした日本では珍しいダンスハウスです。このダンスハウスの最初の企画及び初のレジデンス作品として、「鑑賞するダンス」の起源に迫るダンス・アカデミズムに視点から、「ダンスの系譜学」と題した公演を企画していました。
「TRIAD DANCE PROJECT『ダンスの系譜学』」では、世界的な巨匠振付家と創作を行ってきた安藤洋子、酒井はな、中村恩恵という3名の世界的なダンスアーティストが踊る、巨匠振付家のオリジナル作品<原点>と、新たな創作を試みる<継承 / 再構築>の2部構成により構成し、アカデミックなダンスの振付に迫ることを試みています。
中でも、日本を代表する酒井はなが踊る<継承/再構築>は「
『瀕死の白鳥』を解体するソロ」を新創作。この作品は、バレエの革命児ミハイル・フォーキンが振付したオリジナルに対しての批評的視点から、演劇作家・小説家の岡田利規によって創作される予定でした。
当初新作のクリエイションは、4月1日よりDaBYにて予定していたが、一度もリアルでのリハーサルを行うことができない中、コロナ禍におけるクリエイションの可能性を模索し、Zoomでの創作を決断し、これまで週1回、現時点で計11回のリハーサルを重ねてきました。
まだ作品は完成前、以前創作中であるものの、本作の創作の背景や、コロナ禍でのアーティストたちの模索しているリアルな状況を知っていただくことで、より舞台作品への理解を深めてもらうことを目的として、リハーサルプロセスにまつわるトーク及び『瀕死の白鳥』のデモンストレーションを開催します。


◆制作体制
コンセプト / 構成:唐津絵理(Dance Base Yokohamaアーティスティックディレクター / 愛知県芸術劇場シニアプロデューサー)
制作:宮久保真紀(Dance New Air)、田中希(Dance Base Yokohama)
主催・企画制作:Dance Base Yokohama
協力:愛知県芸術劇場、株式会社precog


「TRIAD DANCE PROJECT『ダンスの系譜学』」2021年延期予定

振付のプログラム
<原点>
酒井はな
ミハイル・フォーキン振付『瀕死の白鳥』チェロ:四家卯大

中村恩恵
イリ・キリアン振付『BLACK BIRD』よりソロ

安藤洋子
ウィリアム・フォーサイス振付『Study #3』よりデュオ 共演:島地保武

<振付の継承/再構築>
酒井はな出演
岡田利規 演出・振付『瀕死の白鳥』を解体したソロ チェロ:四家卯大

中村恩恵振付・出演
『BLACK ROOM』(世界初演

安藤洋子振付・出演
新作共演:小㞍健太 木ノ内乃々 山口泰

#DanceBaseYokohama #DaBY #thedyingswan

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