新ロイヤル大衆舎×KAAT「王将」-三部作-@KAAT(配信)
演劇に関しては現代演劇における系譜とか小難しいことを考えてしまいがちになるが、理屈抜きに面白いお芝居というのはあり、これはそういう作品である。「福島三部作再演」、岡田利規×内橋和久による『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』とKAAT神奈川芸術劇場は充実の舞台成果を披露してきたが、新ロイヤル大衆舎×KAAT「王将」-三部作-もそれに負けない舞台成果であったと思う。
私が個人的に坂田三吉という人物像が好きだということもあるが、第一部が1947年の初演。今から70年以上も前の作品ゆえ、古色蒼然と見えてもおかしくないところが、長塚圭史の構成台本+演出、主役・坂田三吉役の福田転球、ワキを固める大堀こういち、長塚圭史、山内圭哉、ヒロイン役の常盤貴子、江口のりこ、森田涼花ら役者陣の魅力で現代の演劇ファンが楽しめるものとして見事に現代に蘇らせることに成功している。
とはいえ、キャストの中ではやはり坂田三吉を演じきった福田転球が素晴らしい。ずっと以前から知っている俳優ではあるけれども、この役は一世一代の当たり役だと言っていいのではないかと思った。
出演:福田転球 大堀こういち 長塚圭史 山内圭哉
(以上新ロイヤル大衆舎)
常盤貴子 江口のりこ 森田涼花 弘中麻紀
櫻井章喜 高木稟 福本雄樹 荒谷清水 塚本幸男
武谷公雄 森田真和 田中佑弥 忠津勇樹 原田志
【あらすじ】
第一部
明治39年、大阪は天王寺。素人名人とまで呼ばれる将棋指しの坂田三吉は、家庭を顧みずに将棋に没頭し、借金に追われる日々を送っている。将棋大会で関根七段に惜敗してから8年、ついに関根に勝利するが、娘・玉江から「将棋に品がない」と叱責されてしまう。その言葉に思い直した三吉は、女房・小春と共に豊かになった生活を捨て、さらに将棋の道をつきつめてゆく…。第二部
大正13年、後援者達に押し切られ、気乗りせぬまま関西名人を名乗ることになった三吉は、東京の将棋連盟から追放され、孤立を深めてゆく。そんな三吉の貧しく荒んだ生活を支えようと身を切る玉江と、その光景をじっと見つめる若き次女の君子。昭和11年初冬、東京側と和解した三吉は12年間の沈黙を破り、京都南禅寺で木村八段との天下分け目の東西対局を迎える…。第三部
時代は戦争へと突き進む中、三吉の弟子・松島が事故で亡くなった上、同じく弟子の森川も戦争へ。5年後帰還した森川は、最高峰に君臨する木村名人と対局し辛勝するが、三吉は自分ではなく森川が勝ったことが気に入らない。3年後、天王寺の貧乏長屋で、君子と孫の将一とともに静かに暮らしている三吉の下に、いよいよ名人位決定戦に挑むと、逞しくなった森川が訪ねてくる。果たして三吉は嫉妬に悶えるのか…。
<上演時間:第一部 約1時間45分(休憩なし)/第二部 約1時間45分(休憩なし)/第三部 約2時間10分(休憩なし)>