下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

NEO JAPONISM 主催イベント 「NEO KASSEN」@USEN STUDIO COAST

NEO JAPONISM 主催イベント 「NEO KASSEN」@USEN STUDIO COAST

f:id:simokitazawa:20210814194228j:plain

TIME TABLE

NEO JAPONISM がトリを務めるのはなぜだろうと考えたのだが、よく考えたらそこが主催するアイドルイベントなのであった。予習も兼ねて、少し調べてみるとこのNEOJAPONISM。なんとなく楽曲やボーカルの方向性がWACKを連想させるところがあるのではないかと思ったのだが、グループ自体はWACKと無関係なのものサウンドプロデュースは松隈ケンタ氏のもとで作曲・編曲を行ってきた「Saya」が担当しているというつながりはあるのだった。この日のライブを見て思ったのはボーカルの素晴らしさで、しかもロックグループのメインボーカリストを思わせる歌い手が5人のうち4人もいるし、なかでもリーダーでもある金髪の子(滝沢ひなの)が頭一つ抜きんでている。とはいえ、BiSHのアイナ・ジ・エンドやしゅかしゅんのMAINAほどにグループ内で完全に突出しているということはなくて、ほかのメンバーもタイプは違うが肉薄するような歌唱力を持っている。音楽性の好みからは若干単調さを感じる部分はあるが、オリジナルメンバーが全員卒業、事実上の解散の後に新メンバー5人でスタートしたのが2019年11月。年明け後すぐにコロナ禍によりライブ活動は休止を余儀なくされたことを考えれば現体制での活動は始まったばかりで、今回のフェスを実現させた運営の実行力も評価すべきもので、今後の活動にも注目したいと思わせるグループであった。

www.youtube.com

www.youtube.com
 実はこの日のステージはコロナ後では初めて見るが着席ではなくて、オールスタンディングのフロア方式になっていて、この空間が大箱のクラブ「ageHa.」としても使用されていたことを思い出させるようなステージ配置だった。
 そして、爆音による空間支配でこの日のレギュレーションなら最強を思わせたのが、Devil ANTHEMのパフォーマンスだった。文字通りフロア満杯の観客を踊り狂わせるような熱狂の空間を作りだした。正直言ってこのコロナ下でその空間は「密」じゃないかと思って怖くなったので、フロア後方の一段上がったフロアに後退して上空から見守る形になったが、それでもこれだけの音圧はひさしぶりに感じ取ることができた。そういえばかなり昔の話になるが、この同じ空間で開催されたクラブイベントで池田亮司のライブを体感した時のことを思わず思い出した。

www.youtube.com

 この日はSTUDIO COASTの場所の特性を生かしてこういう爆音ライブが上演可能なレギュレーションになっていて、特にDevil ANTHEMから「ヤなことそっとミュート」「MAGMA SHELTER」と続くブロックはほとんどクラブイベントのダンスフロアのような空間になっていた。そのため、主催者であるNEO JAPONISMが別ステージでライブを行っている裏でのライブとなっていたということもあるが、B.O.L.Tアメフラっシスタプラ組は今回のイベントではまだまだ外様扱い。直前の#ババババンビではフロア一杯いた観客が半減してしまいかなり過疎ったなかでのパフォーマンスとなった。
 この時は#ババババンビの特典会で客が抜けたのかなとも思っていたのだが、時間帯からするとNEO JAPONISM が裏で同じ時間に行っていたライブに移動した可能性が強い。実はそれぞれにいろんな事情があるとは思うが、スタプラ勢がアイドルフェスに参加するとももクロエビ中の主力組を除くとそういう立ち位置に配置されることが多く、ここを抜け出すのはなかなか難しいということも分かってきた。
アメフラっシのパフォーマンス自体はよかった。このイベントは持ち時間が25分あることもあって、よくある持ち時間20分のイベントと比較すると5分の差は大きくて、このグループならではの多様性が見せられるし、魅力もよく伝わったのではないか。 
 アメフラっシの最大の持ち味は歌い上げ系ではなく、楽曲の方向性に応じて様々な歌唱技術を駆使できるボーカリスト愛来鈴木萌花小島はな)を3人も持っていることだ。そうした特質を生かして最近は洋楽の影響を強く受けたガールズクラッシュの楽曲を高い精度でこなしたり、一方で「フロムレター」や「オーバー・ザ・レインボー」のような歌い上げ系の楽曲も見事にこなしてみせる幅の広さだ。知名度の点からまだ歌うまアイドルのランキングに上がってくることはないけれど、特に鈴木萌花の歌のうまさは特筆すべきもので、経験ではかなわないが、技術だけなら柏木ひなたを上回りスタプラでトップかもしれない。