下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団では見られぬ役柄、佐藤誠、山村崇子が嫌な人間を怪演。渡辺源四郎商店第36回公演 『親の顔が見たい』 @下北沢ザ・スズナリ

渡辺源四郎商店第36回公演 『親の顔が見たい』 @下北沢ザ・スズナリ


渡辺源四郎商店『親の顔が見たい』はコロナ禍で昨年春中止にせざる得なくなった東京・下北沢ザ・スズナリでの公演(無観客で収録、配信)をほぼ同じ配役でリベンジ上演したものだ。昨年同様感染リスクの高い俳優陣の移動を避けて、首都圏在住の俳優による座組みとなっている。
 作劇上のことについては昨年のオンライン配信のレビュー(下記にリンク)でも詳しく書いたので、今回は俳優の演技について書くことにする。
 長年の付き合いがある青年団の俳優が今回は13人のキャストのうち7人を占めていて、ほとんど青年団プロデュースと間違うような陣容だが、それぞれが平田オリザ演出の青年団本公演とはまるで違う感情を露わにするような演技をしているのが面白い。とはいえ、森内美由紀、佐藤誠はもともとは畑澤聖悟が以前所属していた弘前劇場の出身で気心も知れた仲であるし、折舘早紀は畑澤の青森中央高校の教え子、青森県出身の三上陽永(虚構の劇団 ぽこぽこクラブ) はフェスティバル / トーキョー14 渡辺源四郎商店『さらば!原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』(2014年)にも出演、畑澤とのつきあいも長い。結果的に畑澤のこれまでの演劇人生の総決算ともいうべき俳優陣*1となった。
 そういう中ではイジメの加害者の親で高校教師の役柄を演じた佐藤誠がよかった。自分勝手で鼻持ちならない嫌な人間を迫真の演技で演じたが、下手をすればデフォルメされたステレオタイプな人物造形になりかねないこの物語の登場人物にリアルなタッチを付与することに成功したといえそうだ。
 青年団では上品な上流婦人のような役どころを演じることが多い山村崇子が怪演したPTA会長夫人もこの舞台の見どころかも知れない。突飛なことを突然行うこの人物。これも平田作品なら絶対に出てくることはない役どころだと思われるが、演じさせたらそれを見事にこなしてみせるのが、山村の凄さだし、実は平田作品のみを演じていたら役柄が固定化してしまいかねないのを他の作家、演出家と組む機会が増えているのは青年団本体の豊岡移転にともなうよい結果だと思う。
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作・演出 畑澤聖悟
2022年5月2日(月)〜6日(金)@ザ・スズナリ
出演:東さわ子(劇団東演)猪股俊明 各務立基 近藤強(青年団佐藤誠青年団天明留理子(青年団) 根本江理(青年団) 羽場睦子 三上陽永(虚構の劇団 ぽこぽこクラブ) 森内美由紀(青年団) 山藤貴子(PM/飛ぶ教室)山村崇子(青年団
折舘早紀(青年団)/木村慧 Wキャスト

作・演出:畑澤聖悟
出演:石橋亜希子(青年団)、猪股俊明、小川ひかる、折舘早紀(青年団) 、各務立基、近藤強(青年団)、齊藤尊史(劇団民藝)、天明留理子(青年団)、 根本江理(青年団)、羽場睦子、三上陽永(虚構の劇団 ぽこぽこクラブ)、 森内美由紀(青年団)、山藤貴子(PM/飛ぶ教室) <五十音順>

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「親の顔が見たい」は韓国で映画化公開。好調な滑り出し。

*1:そういう中で山藤貴子(PM/飛ぶ教室)、各務立基、天明留理子とはどういう接点があるのか咄嗟に思い出せなかったが、調べてみると工藤千夏作演出の『だけど涙が出ちゃう』に出演していることが分かった。