下北沢通信

中西理の下北沢通信

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江戸糸あやつり人形結城座「瞼の母」@ザムザ阿佐谷

江戸糸あやつり人形結城座瞼の母」@ザムザ阿佐谷


渡世ものの世界を描いた長谷川伸の代表作をラサール石井の脚本(脚色)、流山児祥の演出で糸あやつり人形劇として上演した。これまで糸あやつり人形は天野天街の作演出の舞台*1を何度か見た記憶があった。実はこちらはITOプロジェクトという団体で、結城座とは別物。結城座の公式サイトで過去の上演演目を見てみると歌舞伎やシェイクスピアなどの上演が多いが見た記憶のあるものはないため初めての観劇かもしれない。
結城座の劇団員が操る人形と人形ではなく本人が舞台に立つ伊藤弘子(語り手、水熊のおはま、半次郎の母おむら、夜鷹おとらの4役を演じる)の掛け合いがテンポもよく、思わず芝居に引き入れられる魅力があった。中核に彼女がいることで舞台全体が人形だけ、俳優だけの舞台よりもより立体的に立ち上がり、現代の観客にとってはなじみの薄い江戸時代の「瞼の母」の世界になじむことができたのではないか。
段差のある階段状の客席に囲まれたようなザムザ阿佐谷の劇場空間もこの日の立すいの余地もない超満員の観客とも相まって、きわめて一体感のある世界を作り上げていたのではないかと思う。

2022年9月29日木 – 10月5日水
ザムザ阿佐谷
あらすじ
幼いころに母親と生き別れた、番場の忠太郎という渡世のやくざ者。江戸まで来て、柳橋の料亭で女将をしている女性が自分の母親だと知る。しかし浮世の義理から女性は母親だと認めようとしない。失意のうちに忠太郎は料亭を去る。目を閉じれば優しい母親の姿が浮かぶ…。

出演・スタッフ
十三代目 結城孫三郎
三代目 両川船遊
結城育子
湯本アキ
小貫泰明
大浦恵実
中村つぐみ
佐次えりな
客演 伊藤弘子(流山児★事務所)
脚本
ラサール石井
演出
流山児祥
音楽
朝比奈尚行
舞台美術
池田ともゆき
音響
島猛
照明
奥田賢太
映像
濱島将裕
舞台監督
大山慎一
擬闘
栗原直樹
宣伝美術
小田善久