下北沢通信

中西理の下北沢通信

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【連載第6回】『ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにばってん少女隊『九祭』について聴く(6)

ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにばってん少女隊『九祭』について聴く(6)

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ばってん少女隊はダンスミュージックでありながら和のテイストも感じさせるような所属するスターダストプラネットのグループの中でもこれまでにないユニークかつ魅力的な楽曲がそろっており、個人的にも注目してきました。新アルバム「九祭」が発売になった機会をとらえアイドル楽曲に造詣の深い「『ももクロを聴け!』*1の著者、堀埜浩二さんに話を聞いてみました。
(ZOOMインタビュー発売以前の17日夜に収録。聞き手は中西理)

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中西  やはり先ほど途中になってしまったんですが、「Bright & Breezy」(作詞:YonYon 作曲:YonYon , DÉ DÉ MOUSE)。これもまだ現時点(10月17日)では曲の全貌が明らかになっていないのですが……。
堀埜 YonYonって僕が知ったのはKIRINJIのアルバムに参加しているんですね。KIRINJI の「killer tune kills me」という曲があって、これは大名曲なんですが。
中西  何をやる人ですか?トラックメイカーですか。
堀埜 YonYonは基本DJですね。DJとラップの人です。Youtubeとかでもかなりの数のいろんなライブ映像が上がっていますが、すごいチル系のDJのいいライブをたくさんやっている。ジャジーな曲もしっかりとできるタイプでこれはなかなか才能としては凄いんですよ。「killer tune kills me」の中では feat.YonYonのクレジットで参加、ラップをやっています。

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堀埜  「Bright & Breezy」も曲調としては割とシティーポップというか、ディスコっぽく、前の「ふぁん」のアルバムでいうと「Dancer in the night」、あれをもっとシティーポップっぽくしたような路線の曲ですね。僕はこのアルバムの中ではこの曲はかなり好きな曲です。この曲は宮崎の曲になっています。タイトルからも南国っぽさが感じられます。
中西  これが宮崎だとするとその次の「南風音頭」(作詞:村里 杏 , サトウ ショウゴ 作曲:サトウ ショウゴ)というのは……。
堀埜  鹿児島ですね。
中西 これは何かどこかの島のことを歌っているのかなとも思ったのですが。九州ということだから沖縄ではないよなと思って。
堀埜  この曲に関して言うと「音頭」というのがはっきりと曲のタイトルに入っていますよね。それが象徴的で、「OiSa 」というのは別に音頭とかそういうことは言ってないけれど曲調的にはそういうところがある。この「南風音頭」について言うとこの曲は最初からけっこうなUSEN(有線)受けを狙って作った曲なのかなという印象があります。

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 この曲は全部はまだ聴いていないのですが、ばっしょーちゃんのラップのパートがすごく多い。ここまでばっしょーちゃんの曲はそこまでバチバチにラップが出てくる曲はなかった。ラップが面白いのは個々の地声の個性の部分が非常に出やすい。なので特に新メンバー二人に関しても声の個性というのが本来の持ち味が出てくるのかなと思っています。
中西 ラップなので全部を聴けば全然違うのかもしれないのですが、ちょっとだけさわりを聴いた時点では上々颱風とかを思い出しました。エスニック系の音というか。

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堀埜  そういう感じはありますよね。
中西 サトウショウゴという人はどういう人なんでしょうか?
堀埜 これもあまり知らないです、ただ、曲の感じからいうとずぶの新人というよりも手練れですよね。
中西 何の根拠もないのだけれど名前だけを見るとYonYon、没 a.k.a NGS、Rin音というラップ、クラブ、DJ系の人たちとはよって立つ音楽的な基盤や世代が違う気がしてしまう。偏見かもしれませんが(笑)。
堀埜 でも今日本の音楽やっている人でトラックメーカーにせよ、もうラップと距離を置いている人っていないですよ。皆何らかの形でラップとかヒップホップとかをいうものを自分なりに消化してやっていくというのは当たり前。新しい作家はそれが当たり前なのでこの人はラップの人とか、この人はこういうメロディーの人という切り方はできないです。それこそケンモチさんもそうだし、渡邊さんもそうです。そういうテイストはしっかり持った中で曲を作るのが当たり前なので。
中西 ももクロも完全にラップの曲というのも何曲かありますが、そうじゃない楽曲でも歌唱の部分は基本的には柔らかいラップであったりすることが多い。ほとんどラップだという意識もしないかもしれません。
堀埜 そうだなあ。ラップといわゆるポエトリーリーディングの境目もかなり垣根はなくなってきている。歌の表現の幅というのはちょっとそれこそ歌ってメロディーだというのが昔の歌謡曲とか演歌とかだとそうだったですけど、今はもうそうは言えない。そこはシームレスになってきているので、昔は歌謡曲の場合は歌、メロディーの部分とセリフの部分が分かれていたけれどそこの垣根がいまどんどんなくなっています。それで今思うのは昔「花はおそかった」*2という歌があったけども、あれってもちろんラップでは全然ないんだけれど、やっていることはほとんどラップとポエトリーリーディングの間ぐらいのことで、そういう曲のパイオニアみたいなところがあります*3
堀埜 今の若い人って歌詞を聴くのでギターソロを飛ばすとか……。
中西 あー、よく言われていますよね。
堀埜 だからそういうソロでひたすら聴かせるようなパートというのはひょっとしたら意識して抜いているんじゃないかとも思います。
中西 ソロというのは歌のことですか?
堀埜 短めのイントロで歌に入ったらそのまま歌でたたみかけるような作り方を全曲しているのではないかと思います。インストの方は逆にベースがダンスミュージックなので、なんでギターソロとかが嫌われるのかは分かるような気はする。今の人たちはあまり演奏性などについて強く魅力を感じない傾向があって、踊りの快楽というのは実は同じリズムをキープしながら分かりやすいメロディー、歌詞がはいっていくということを考えるとギターソロとかサックスソロとかはいらないといえばいらない。DJがライブをやっている時にしっかりとギターソロを聴かせるようなやり方をしないというのはその典型的なものだと思います。DJでギターソロの曲ばかりやる人はいないですからね。それだけでやったら逆に面白いDJが出来るかもしれませんが(笑い)。




■収録曲
01:OiSa (2021 ver.)(作詞作曲:渡邊 忍(ASPARAGUS))
02:わたし、恋始めたってよ!(作詞作曲:渡邊 忍)
03:YOIMIYA(作詞作曲:ケンモチヒデフミ水曜日のカンパネラ))
04:御祭sawagi(作詞:ASOBOiSM 作曲:PARKGOLF , ASOBOiSM)
05:さがしもの(作詞作曲:ケンモチヒデフミ
06:和・華・蘭(作詞:Daoko 作曲:GuruConnect , Daoko)
07:沸く星(作詞:没 a.k.a NGS(Dos Monos), uami 作曲:没 a.k.a NGS , uami)
08:Bright & Breezy(作詞:YonYon 作曲:YonYon , DÉ DÉ MOUSE)
09:南風音頭(作詞:村里 杏 , サトウ ショウゴ 作曲:サトウ ショウゴ)
10:禊 the MUSIC(作詞作曲:渡邊 忍)
11:虹ノ湊(作詞:Rin音 作曲:Rin音 , Taro Ishida)
12:OiSa PARKGOLF REMIX

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*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:
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*3:この辺りもはやばっしょーとは何の関係もなくなってきつつありますし、本当にそうかなと思う部分もありますが、堀埜さんの話はこういうはみだしの部分が面白いのであえて収録しています。