下北沢通信

中西理の下北沢通信

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【連載第3回】『ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにばってん少女隊『九祭』について聴く(3)

ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにばってん少女隊『九祭』について聴く(3)

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ばってん少女隊はダンスミュージックでありながら和のテイストも感じさせるような所属するスターダストプラネットのグループの中でもこれまでにないユニークかつ魅力的な楽曲がそろっており、個人的にも注目してきました。今回そうした楽曲を収録した新アルバム「九祭」が発売になった機会をとらえアイドル楽曲に造詣の深い「『ももクロを聴け!』*1の著者、堀埜浩二さんに話を聞いてみることにしました。
(ZOOMインタビュー発売以前の17日夜に収録。聞き手は中西理)
中西 次に個別の楽曲についてお聞きしたいと思います。また「OiSa」からになってしまうのが、心苦しいのですが「OiSa」はどんな曲ですか。ジャンル的にはトランスということでいいのでしょうか。
堀埜 「OiSa」は完全にトランス*2です。一番象徴的だったのはスタプラフェスで「OiSa」だけを9分以上やりましたが、こういう繰り返しがあるのがトランスの特徴。

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中西 これは要するに同じメロディーのループで作っているからループの回数というのはいくらでも追加できるということでしょうか。
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堀埜 トランスで一番分かりやすいのは同じメロディーをずっと繰り返してトランスしていくという作り方です。だから、聴くというよりはやっぱりフロアでダンスしながらその繰り返しのループの中でリピートのたびに上がっていくような感じというのが分かりやすい。基本的にはDJがやっているのをクラブで聴く音楽なんです。
中西 トランスは私も聴くのは好きなんですが、アイドルの楽曲としてなじむのかどうなのかということでいうとEDM、トランスのような曲調を特徴とするステレオ東京というアイドルグループがあって、何度かフェスのようなところで見てフロアの盛り上がりかたとかは凄く、面白いと思ったこともあったのですが、結局なかなかアイドルカルチャーとなじまなかった部分があったようで、人気がそこまで広がらず解散してしまった。それで逆に言うと「OiSa」はけっこう受け入れられている感じがある。
堀埜 ももクロが出た時もそう感じたんですが、よさこいとかよさこいソーランとかあの種の流れとアイドルというのはすごくなじみやすい。この「OiSa」も曲としてはフロア仕様になっているのですが、和のメロディーにこういうのを乗せるというのはトランスでありながら、ダンスというかよさこいもダンスだと考えるとトランスなんですよね。踊っていながら、その音楽が繰り返されるのに没入する感じはトランスとよさこいは変わらない。

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「OiSa」は限られた時間の中でやりますが、繰り返して踊っているともうそこに入っていってその世界に頭がとんでしまう。お祭りって本来そういうものなんです。それは仕様として作っているあり方とは全然別のあり方でふとん太鼓の人たちや仙台のすずめ踊りの人たちはループをずっと使いながらどんどん気分が上がってきて、お客さんもそれに連れて上がっていく感覚というのは何も変わらない。しかも今のよさこいなどは皆打ち込みで作っていますから、その部分で生楽器でやるか打ち込みでやるかということに本質的な差はもうなくなっているし、その辺を「これで御祭り騒ぎができるよ」というのをうまく作ったのがYMOだったんですが、残念ながらYMOの世代の細野さんとか坂本龍一さんは彼ら自身がそれを踊れないのでそこまで突き詰められなかった。
中西 YMOの音楽が世界でどのように受容されていたのかということは分からないですが、クラブミュージックが一般に定着するのはもう少し後、というかクラブ自体なかったあるいは黎明期に過ぎなかった。後続の電気グルーヴとなると活動当初からクラブカルチャーに対して意識的だったと思いますが……。
堀埜 電気グルーヴ*3はもうラップも入っていますから次のジェネレーションに完全に代わってからですね。
中西 不思議なのは渡邊忍さんですが、自分のバンドではギターボーカルなんですね。
堀埜 ギターボーカルで彼は曲もいい曲を書くんですが、基本木村カエラのバックをやっていて、カエラさんの随分前の映像とかを見ると大体渡邊さんがギターを弾いて曲も書いていて、なかなかいい感じの映像というのがたくさん上がっています。
中西 ばってん少女隊の音楽プロデューサーの杉本陽里子さんが聞き手になっているインタビューで最初からこの曲は打ち込みでやることとループで作るということを決めていたと話していますよね。
堀埜 渡邊さんが最初にばっしょーで手掛けた曲はメジャーデビューシングルの「おっしょい」なんですね。これは非常に当時のばっしょーちゃんらしい曲でいまでもライブでは人気のある曲なんですが、その次に渡邊さんが何を作るのかという時に「おっしょい」は路線で言うともちろんアイドル向けの曲ですけれど本来のASPARAGUSの路線の延長で書かれた曲だった。ところがある種突然変異的に「OiSa」が出てきて面白いなと思うのは演奏家とというのと作家、しかもアイドルを相手にした時のそれが根本的に違う。今回のアルバムでも渡邊さんは3曲を提供している。
中西 そうですね。
堀埜 2曲目に入っている「わた恋」(「わたし、恋始めたってよ!」)、これも渡邊さんの曲。もう1曲「禊 the MUSIC」、これは新しい曲なんですが、ここでまた全然違う曲想の楽曲を持ってきている。
そして、この渡邊さんの3曲の中でもひとりの作家がいろんなことをしているという振れ幅の広さはある。「禊 the MUSIC」なんかは完全にサウンドの作り方がa-ha*4*5ですよね。あえてチープなバックのトラックを打ち込みとかをやりながら80年代ぐらいのポップだけれどロンドンで流行ったテクノのスタイルを採用した。この人ひとりをとっても全然違うという面白さがあります。何となくももクロで言うと作家性というのももちろんあるんですがNARASAKIに非常に近いポジションで曲作りをやっている印象はあります。

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中西 ヒャダインはあまりにも特殊な作家だから比較できる人はつんく♂とどうかみたいな話はあるもののあまり参考にできないような気がしますが、ももクロにおけるNARASAKIあるいは最近で言えばinvisible mannersのような役割をこのアルバムの渡邊忍さんが果たしているというのはよく分かるような気がします。いずれにせよこのアルバムには渡邊さんとケンモチヒデフミさんが複数の曲を提供しており、残りは割と若い人が入っている。
堀埜 基本は若い作家を使うという印象。ベテランで言うとDaokoがそこそこベテランかなとも思いますが、それまであまり聞くことがなかった作家もいる。今回参加作家の名前が出そろった時に一番おーと思ったのはDJのYonYonですね。彼女がどういう形で入ってくるかなというのに注目していましたが、しっかりといい曲をしてしてくれていますよね。

九祭

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ALBUM | 4th ALBUM
九祭
2022.10.19 Release
■収録曲
01:OiSa (2021 ver.)(作詞作曲:渡邊 忍(ASPARAGUS))
02:わたし、恋始めたってよ!(作詞作曲:渡邊 忍)
03:YOIMIYA(作詞作曲:ケンモチヒデフミ水曜日のカンパネラ))
04:御祭sawagi(作詞:ASOBOiSM 作曲:PARKGOLF , ASOBOiSM)
05:さがしもの(作詞作曲:ケンモチヒデフミ
06:和・華・蘭(作詞:Daoko 作曲:GuruConnect , Daoko)
07:沸く星(作詞:没 a.k.a NGS(Dos Monos), uami 作曲:没 a.k.a NGS , uami)
08:Bright & Breezy(作詞:YonYon 作曲:YonYon , DÉ DÉ MOUSE)
09:南風音頭(作詞:村里 杏 , サトウ ショウゴ 作曲:サトウ ショウゴ)
10:禊 the MUSIC(作詞作曲:渡邊 忍)
11:虹ノ湊(作詞:Rin音 作曲:Rin音 , Taro Ishida)
12:OiSa PARKGOLF REMIX

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