下北沢通信

中西理の下北沢通信

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小池博史ブリッジプロジェクト『幻の光』@シアターグリーン(BASE THEATER)

小池博史ブリッジプロジェクト『幻の光』@シアターグリーン(BASE THEATER)

箱形の舞台空間の背面、上下、側面のすべてに星空や銀河宇宙などの映像が映し出される映像演出がとても印象的な舞台であった。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を下敷きにした舞台ということであったが、映像イメージからするとそれだけではなくて、宇宙そして地球の誕生から遠い先の未来までが幻視されるようなところがあり、「2001年宇宙の旅」なども連想させるところもあった。

パフォーマーはセリフを話したり、ラップのような歌も口ずさんだりはするのだかれど、ほぼ全編にわたってダンス的な身体所作の場面も続くため、ダンス作品と受け取っても間違いとはいえないかもしれない。音楽も舞台上にパーカッションとギターなどの楽器演奏を受け持つ音楽家(下町兄弟、太田豊)ふたりがおり、音楽はあらかじめ録音されたものもあるが生演奏により進行していく。この規模の演劇作品で生演奏による舞台は日本ではまだまだ少ないので、こうした舞台が増えればいいのにとも思った。ダンサーの3人(福島梓、大塚陽、佐久間文恵)はいずれもアクロバティックな振付をこなす身体能力の高さを感じさせるダンサーで、プロフェッショナルなスキルを感じさせた。

ただ、ここからはかなりの部分で私の個人的な好みになってしまうが、どうもそれぞれに高いスキルの表現が組み合わさっているのになぜか全体として受ける印象に新鮮さを感じることができず、むしろ古い感覚を感じてしまったのはなぜだろうと舞台を見ながら考えてしまった。

映像と身体所作を組み合わせた舞台表現としてはダムタイプ、やニブロールレニ・バッソなど多くの表現を評価してきたがそれぞれに個性の違いがあっても共通してきたが、どうもこれらの表現に感じた「それまでになかったような新しさ」を感じることができなかった。公平を期すために書き添えておけば、小池博史が主宰していたパパ・タマフマラの作品にもすべての作品についてとはいえないが、それはあった。しかし、個々の要素を考えると悪くないのにも関わらず、この作品からはそれを感じ取ることが難しかったのだ。

そして、いろいろ考えてみた結果、複数の理由はあるにせよやはり私と決定的に感性が合わなかったのは使用された音楽の質感に原因があるのではないかというのが舞台を見ているうちに次第に分かってきた。音楽が素晴らしかったという人も当然いるとは思うものの、こうした嗜好の違いはいかんともしがたい。逆に言うと先に挙げたダムタイプ、やニブロールレニ・バッソにおけるオリジナルの音楽を担う音楽家(例えばダムタイプなら山中透や池田亮司)の存在が私にとっては決定的に大きいのかもしれないということが分かったのである。

 

 

公演期間
2022年12月2日(金)~4日(日)

団体名
小池博史ブリッジプロジェクト

団体メール
hkbpyoyaku@gmail.com

前売券
一般:4500円
学生:2800円
小学生以下:1000円

※3歳以下のお子様のご入場はご遠慮ください。

当日券
一般:5000円
学生:3300円
小学生以下:1500円

※3歳以下のお子様のご入場はご遠慮ください。

あらすじ
ここは宇宙。ここは列車で。ここは縄文。
宮沢賢治銀河鉄道の夜」を起点として創作した
2022年2月上演の「Milky Way Train~138億光年の憂鬱」を
大幅に改編。
パーカッション、サックスの生演奏と映像
身体の融合を図った作品として
銀河に生きる人間の生死の不思議を描く。
宇宙にとんだ……幻惑の旅へようこそ!

スケジュール
12月2日(金) 開演 20:00/開場 19:40
12月3日(土) 開演 13:00/開場 12:40
開演 18:00/開場 17:40
12月4日(日) 開演 13:00/開場 12:40
開演 17:00/開場 16:40

キャスト
福島梓
大塚陽
佐久間文恵
伊藤健康
下町兄弟(演奏)
田豊(演奏)

スタッフ
作・演出・振付:小池博史
音楽:太田豊/下町兄弟
映像:岸本智也
衣裳:浜井弘治
美術・小道具:森聖一郎
照明:富山貴之
宣伝美術:梅村昇史
演出助手:中谷萌
主催・制作:NPO法人ブリッジアーツアンドエデュケーション
協力:公益社団法人セゾン文化財


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