第67回岸田國士戯曲賞最終候補作品決定
私のイチオシは宮崎玲奈「ことばにない 前編」なのだが、候補作にも入っていない。しかも、今年の候補のうち、上演を見ているのは1作品だけ(中島梓織「薬をもらいにいく薬」)だけなので現時点では何も言えない状況だ。
「薬をもらいにいく薬」は精神的な疾患を抱える若者を取り上げた会話劇で、世代の感覚を感じさせる秀作だが、昨年私の見た新作のなかでは演劇ベストアクトの上位に選んだ宮崎玲奈や綾辻行人、こちらは少し傾向が違うが山崎彬の作品(戯曲)に及ばないと思った。
とはいえ、この賞ではよくあることだか、私が高く評価した作品は最終候補作に入ってもいないので、またもや感じたのは岸田戯曲賞の選考と私の評価は今年は大きく乖離したなということであった。松村翔子『渇求』は松村については以前から注目していたし、公演を見られなかったのはともかく評判も聞こえてこなかったのはなぜなんだろうと不思議に思っていたのだが、演出も務める作者の体調不良で上演されなかった作品のようだ。確かに出版はされているようだが、これを候補作にするべきなのかについては若干の疑問も感じる。もちろん、上演されてない作品でも戯曲が出版されるなど何らかの形で公開されれば対象になるようなのでレギュレーション上は何の問題もないわけなのだが。
第67回岸田國士戯曲賞の選考会が、2023年3月17日・金曜日、午後5時より、東京神保町・學士會館にて行なわれます。なお同賞は、本年度より、公益財団法人 一ツ橋綜合財団の後援を受け、「白水社主催・公益財団法人 一ツ橋綜合財団後援」の体制にて運営されます。
選考委員は岩松了、岡田利規、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、野田秀樹、本谷有希子、矢内原美邦の各氏(五十音順、敬称略)です。
本年度の最終候補作品は下記の9作品となっております。
第67回岸田國士戯曲賞最終候補作品一覧(作者五十音順、敬称略)
石原燃『彼女たちの断片』(『夢を見る 性をめぐる三つの物語』所収、アジュマブックス)
上田久美子『バイオーム』(上演台本)
加藤拓也『ドードーが落下する』(上演台本)
金山寿甲『パチンコ(上)』(上演台本)
兼島拓也『ライカムで待っとく』(「悲劇喜劇」2023年1月号掲載)
鎌田順也『かたとき』(上演台本)
中島梓織『薬をもらいにいく薬』(上演台本)
原田ゆう『文、分、異聞』(上演台本)
松村翔子『渇求』(いぬのせなか座叢書)