『ももクロ春の一大事2023 in 福山市〜笑顔のチカラ つなげるオモイ〜 DAY2』@ABEMA PPV ONLINE LIVE
ももいろクローバーZ(ももクロ)のライブ「春の一大事」はももクロが地方自治体とタッグを組んで、行う巨大野外ライブ。『ももクロ春の一大事2017 in 富士見市 LIVE』で始まり、今回が7年目だが、途中コロナでの延期が2年間続いたので5回目の開催となった。ももクロでは声出し(コール)解禁は5月の「結成15周年記念ライブ」からということがすでに公表されており、今回のライブでの声出しはできなかったが、声出し解禁前の最後の巨大野外ライブとしてポスト「コロナ」に向け祝祭感にあふれたものになったのではないか。
実はこれまですべての回に参加してきたのだが、今年は地方でのライブに参加するのが難しく、初めて現地にはいかず配信のみでの参戦となった。
春一の魅力は本編のライブだけではなく、ミニライブ*1や地元の商店などが出店する周回パークの雰囲気を楽しむ経験も格別で全体を覆うその祝祭的な空気感には格別なものがある。それゆえ配信では現地でのそういう空気感が感じられないこがが残念だった。ただ、その分春一のライブ自体がどのようなものかについて、例年よりよりフラットに評価することができたかもしれない。
春一のセットリストはその多くの曲が初めてももクロライブに来場する地元の一般客でも分かりやすいような初期楽曲やアニメ主題歌などポピュラリティーの高い楽曲で構成されているのが特徴だ。そういう意味では生演奏のバンドをバックに通好みの楽曲を通好みのアレンジで料理する「ももいろクリスマス」とは対極的なコンセプトといえる。私自身、ライブとしての好みはももクリに軍配を上げたいところだが、活動全体の広がりを持たせていく意義としては「ももクロ春の一大事」の存在は小さくない。
今回のライブでは公演後の映像のクレジットにも川上アキラ氏の名前はいっさいなく、ネット上でそれを心配する人たちも一部見られたが、こと「春の一大事」についていえば事前にチケット販売の段階での細かい部分での齟齬はあったようだが、参加してきた自治体には経験値がありおそらく詳細なマニュアルがすでに作られて各行政の間で情報交換されているはずだ。今後次の開催地がどこの会場に決まるとしても、問題なく開催されるだけのノウハウはすでに蓄積されているはずで、川上氏や社長(理事長)の判断を仰ぐような場面は限定されていてほぼないはずだ。
ライブのフォーマットもほぼ固まっている。今回の開催地、福山がバラの有名な産地ということからセトリに入れられた「カントリーローズ -時の旅人-」や結成15周年記念ソングとして製作された「いちごいちえ」など今回に合わせた楽曲も若干あるが、「子供から大人まで楽しめる」というのがコンセプトの中心にあり、それは今後も大きく変わることはないかもしれない。
今回特筆すべきことは小学生による合唱が復活したことだ。これはコロナ禍の中で前回の福島ではできなかった。しかも今回はできるだけ多くの児童にこの素晴らしい体験を共有してもらおうとの思いからか、DAY1とDAY2ではそれぞれ別の合唱メンバーが舞台に上ったのだという。選曲は毎回宗本康兵によるものだが、これが素晴らしかった。今回は「空」がテーマだったということだが、特にスピッツの「空もとべるはず」を選んだのは秀逸というしかない。
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会場にはファミリー席が設けられ、小さな子供たちを連れた親子連れの姿が数多く見られたようだが、アイドルライブでこういうことはかなり珍しいはずだ。ももクロはここ何年も通常のアイドル活動に加えて、自ら子供番組を企画放映するなど、幼児層の開拓に力を入れてきたが、今回のセットリストの中でもももクロちゃんZ名義の「HERO」などはその番組発の楽曲。幼児もよく見るようなアニメの主題歌も入っており、そうした層に向けた配慮がなされた楽曲は先述したももクリやロックファン・音楽ファンをターゲットにしたフェスでの選曲とはまったく方向性が違う。今回はラストの曲が最新アルバム「祝典」に収録されたカバー曲「また逢う日まで」だったのだが、なぜこの曲をアルバムに収録したのか疑問に思っていたのが、「いちごいちえ」から「また逢う日まで」という春一のラスト流れは最高で「これほどはまるのか」とあらためて驚かされた。
さらにこの曲にはこの日にはももクロメンバーが縦に並んだフォーメーションから次々に飛び上がるという奇妙な振り付けが導入された。最初は「これは何だ」としか思わなかったのだが、初日はこの曲に合わせてスポンサーの好意で花火が打ち上げられたのだというのを聞いていたため、「あ、これは花火だ」と氷解した。この日は前日より開演時間が早く、まだ明るくて花火が打ち上げられる時間ではなかったためにあーりん(佐々木彩夏)の発案にほかのメンバーも乗り、「花火も私たちが見せてあげる」ということだったようだが、これぞももクロというアイデア。川上アキラが現場からは離れた現在のももクロ陣営が進めているセルフプロデュースへの羅針盤ともなるようなアイデアでさすがあーりんというところだが、こういうのを見せられるとすでに「完全セルフプロデュース」での開催が公表されている「結成15周年ツアー」*2でどんな演出が入ってくるのかがますます楽しみになってきた。
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セットリスト
ももクロ春の一大事2023 in 福山市 〜笑顔のチカラ つなげるオモイ〜
2023年4月22日(土)・23日(日)
広島県・福山通運ローズスタジアム
<DAY2 セットリスト>
overture ~ももいろクローバーZ参上!!~
01. WE ARE BORN
02. 行く春来る春
03. 走れ! -ZZ ver.-
04. CONTRADICTION
05. カントリーローズ -時の旅人-
06. 笑―笑 〜シャオイーシャオ!〜
07. MOON PRIDE
08. 月色Chainon
09. Majoram Therapie小学生らによる合唱セクション
虹
あの空を飛べたら
10. オレンジノート
11. Chai Maxx
12. ロマンティックこんがらがってる
13. 勝手に君に
14. 行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-
15. クローバーとダイヤモンド
16. 仮想ディストピア
17. L.O.V.E
18. HERO / ももくろちゃんZ
<ENCORE>
19. いちごいちえ(新曲)※結成15周年記念ソング
20. 白金の夜明け
21. また逢う日まで
配信日時:2023年4月23日(日)15:30~(開場は15:00〜)