下北沢通信

中西理の下北沢通信

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楽曲の多様性生かす 4人の高いパフォーマンススキル 「AMEFURASSHI Live『Sweetie, Lovely, Yummy!』」@TOKYO DOME CITY HALL

「AMEFURASSHI Live『Sweetie, Lovely, Yummy!』」@ TOKYO DOME CITY HALL

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AMEFURASSHIは現在私が個人的にもっとも注目している女性ダンス&ボーカルグループ*1である。今回の『Sweetie, Lovely, Yummy!』はそのひさびさのワンマンライブであるが、メンバーそれぞれ(愛来鈴木萌花小島はな市川優月)の歌唱、ダンス、映像演出がきわめて高いレベルでシンクロして、この種のガールズグループのライブとしては滅多にないほど隙が無く完成度の高いパフォーマンスに仕上がっていたのではないかと思った。
 このグループの最大の魅力はひとつの楽曲だけを単独で見たのでは分からないが、表現の幅が極めて広いことだ。それが技量の高さなどからこのグループがよく比べられることの多いK-POP系のガールズグループとの大きな違いである。もちろん、歌唱、ダンスなどそれぞれの構成要素のスキルが高いのは当然の前提条件ではあるが、このグループをあまり知らない普通の人がK-POP系と感じるような「ARTIFICIAL GIRL」や「SPIN」のようなダンスミュージックはもちろん中核ではあるけれど、その楽曲はきわめて多様なのだ。
 スタダ所属の他のグループやハロプロなどと比べてみても、多彩な表現の幅は驚くべきことで、この日のセットリストを眺めてみても湘南乃風を思わせるような激しい歌い上げを見せる「轟音」、宇多田ヒカルの初期曲を連想させるようなソフト&メロウな「Blue」(今回は市川優月小島はなの2人ver .で披露された)、やはりグループ初期の楽曲でもともとグループを卒業した大平ひかると愛来の二人曲だったこともあってか、歌われる機会が限られていた「差し出された手をあの時握ってたら運命変わってたかな?」*2*3とそれぞれ曲の方向性が異なる楽曲群を続けて歌うことで、初めて浮かび上がってくるAMEFURASSHIの個性とでもいうものが強く感じられるワンマンライブとなっていたのではないか。
 前回のワンマンライブの直前に中心メンバーのセンター、愛来が骨折、回復に努めてなんとかライブには間に合わせたものの本人の思い通りに動くことはできず、そこを演出の工夫で埋めるというものにならざるえなかった。今回はそのリベンジのような意気込みも強かったと思われるが、「完全体の AMEFURASSHI 」の凄みを見せつけるような内容となった。
 「Blue」や「Batabata Morning」で見せた演じるという力も幕切れの「Flower of love」で見せつけた圧倒的な歌唱力もアメフラの売りではあるけれども、何と言っても最大の武器はダンスパフォーマンスの表現力。幼少のころからANNAという一人の振付家の指導を受けてはきているけれど、これまでも「シン・魂の公開稽古公演」*4などを通じて、ダンサーとしても活躍してきた彼女の人脈を生かし様々なジャンルの振付家を招き指導を受けさせていたが、ここに来てそうした努力はようやく大きな実を結びつつあるのではないか。プロのダンサーはトップレベルの人でも自分が育ってきた特定のジャンルに特化していることが多く、アメフラのように何でも踊れるというわけではない。これだけ多様なジャンルのダンスをこなすのは稀有な存在だ。
 今回の公演では正確な人数は聴きそこなった(配信で6人と話したように思う)が、楽曲ごとにジャンルの異なる複数の振付家が参加して振り付け・ダンス指導を行っているようだ。
 なかでも目を見張ったのはラテン系のダンス*5*6の振りを取り入れた「Desire」のダンス。楽曲中でユニゾン的な群舞だけではなく、メンバーがペアを組んで踊るシーンも取り入れられていて、こういう時に醸し出されてくる色気というのは先輩格のももクロにはあまりないもので*7、アメフラならではの境地といっていいかもしれない。

01. Ready Now
02. ARTIFICIAL GIRL
03. SPIN
04. 轟音
05. Blue
06. 差し出された手をあの時握ってたら運命変わってたかな?
07. COOL HOT SWEET LOVE
08. SENSITIVE
09. ALIVE
10. Sneaker's Delight
11. Sweetie, Lovely, Yummy
12. Batabata Morning
13. HICCUP
14. CLEVER
15. DISCO-TRAIN
16. BAD GIRL(Acoustic version)
17. Desire
18. Squall
19. Tongue Twister
20. Drama
21. Fly Out
22. メタモルフォーズ
<アンコール>
23. バカップルになりたい!
24. Blow your mind
25. Flower of love

*1:本人たちはアイドルと自称しているのでそれでもいいとは思うが、一般的なそのイメージからは逸脱しつつあるのは確か。

*2:この楽曲はグループ初期を支えていた古屋智美と、大平の記憶が蘇って魂が揺さぶられてしまう。

*3:

*4:simokitazawa.hatenablog.com

*5:ラテン系のダンスと書いたがここで入ったペアのダンスはNEW STYLE HUSTLEというジャンルのダンスらしい

*6:
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*7:ただロールモデルはメンバーが以前から指導を受けているあーりんかもしれない