下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

Dear BEATLES 2019@三軒茶屋 昭和女子大学 人見記念講堂

Dear BEATLES 2019@三軒茶屋 昭和女子大学 人見記念講堂

出演:杉 真理/坂崎幸之助(THE ALFEE)/リッキー(REVOLVER)/上田雅利(チューリップ)/
    清水 仁(ex.オフ・コース)/伊豆田洋之/小泉信彦
ゲスト:Chage/セレイナ・アン

※特別番組オンエア情報!new
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日時:2019年3月10日(日) 16:30開場 / 17:00開演
会場:東京/三軒茶屋 昭和女子大学 人見記念講堂
   (東京都世田谷区太子堂1-7-57)
料金:前売¥6,500(税込/全席指定)
主催:TBSラジオ/FM NACK5
■企画制作:TBSサービス
■お問合せ:TBSサービス >> Tel:03-3505-7710(平日11:00~17:00)



『ホワイト・アルバム』セレクション
01.Back In The USSR(全員)
02.Dear Prudence (Ricky
03.Grass Onion (坂崎)
04.Ob-La-Di,Ob-La-Da (伊豆田)

05.Birthday (伊豆田・Ricky・上田)
06.While My Guitar Gently Weeps (清水)
07.Hony Pie (杉)

08.Julia (Ricky
09.Mother Nature's Son (伊豆田・杉・上田)
10.Sexy Sadie (坂崎)
11.Happiness Ia A Warm Gun (Ricky

ゲストコーナー  
12.I Wanna Hold Your Hand (セレイナ)
13.Help (セレイナ)

14.Please Mr.Postman (Chage)
15.With A Little Help From My Friend (Chage
16.Don't Let Me Down (Chage


特集 『Please Please Me』
17.I Saw Her Standing There (全員)
18.Misery (杉・坂崎)
19.Annna (Ricky
20.Chains (清水)
21.Boys (上田)
22.Ask Me Why (坂崎)
23.Please Please Me (Ricky

24.Love Me Do (Ricky・清水)
25.P.S.I Love You (上田)
26.Baby It's You (坂崎)
27.Do You Want To Know A Secret (杉)
28.A Taste Of Honey (伊豆田)
29.There's A Place (清水・杉)
30.Twist And Shout (Ricky

アンコール1
31.Drive My Car (杉・Ricky・坂崎・清水)
32.Lady Madonna (伊豆田)

33.A Hard Day's Night (Chase・セレイナ)
34.Slow Down (上田・Chage・セレイナ)
35.Kansas City~Hey,Hey,Hey,Hey (伊豆田・Ricky

アンコール2
36.Let It Be (全員)
37.Good Night (上田)

 モノノフにはももいろフォーク村でもおなじみの坂崎幸之助(THE ALFEE)をはじめ、清水 仁(ex.OFF COURSE)、リッキー(REVOLVER)ら日本のロック黎明期のレジェンド的メンバーが集まり、ビートルズナンバーを歌唱、演奏するライブイベントが「 Dear BEATLES」。これまで毎回特定のアルバムなどを取り上げて、アルバムのオリジナル曲順に演奏してきたが、今年は『ホワイト・アルバム』の抜粋と『Please Please Me』。このほか、ゲストとしてChaseとセレイナ・アンが参加した。

坂崎幸之助 × 杉真理 “Dear BEATLES 2019” 『MUSIC LIFE』(Audio 2019/03/15)ディアビ裏話 ディアビー MASAMICHI SUGI ニューアルバム
 坂崎幸之助ビートルズマニアだというのは以前から知っていて、ジョン・レノンスーパーライブにも参加していたのを何度かテレビ放映などで見た記憶がある。ももクロメンバーも坂崎と一緒にやっているももいろフォーク村で楽器演奏なども学んでいてOb-La-Di,Ob-La-Daの一部を演奏したりしたが、番組中でイーグルスエルトン・ジョンの楽曲をカバーし唯一即戦力でライブに参加できそうだった有安杏果が卒業してしまったため、ビートルズトリビュートライブへの参加は実現するにしてもまだまだ先になりそう*1。ちなみにこの日若い女性シンガー枠でゲスト参加したセレイナ・アンは両親の影響で洋楽に親しんできたという経歴で、相当以上の技量の持ち主だった。

Celeina Ann セレイナ・アン Let It Be
 私の場合、さすがに現役時代には間に合ってないのだが、弟が中学時代からビートルズコピーバンドをやっていたせいもあって耳になじみがあるせいもあり、音楽の原点がビートルズというところがある。それゆえ、ももクロの楽曲などもビートルズを基準として聴いてしまうところがある*2

*1:と思っていたが玉井詩織がモンキースの「デイドリームビリーバー」に楽器演奏とコーラスで参加したので後少しかもしれない

*2:もちろん、ももクロは最近多用されるラップやEDM(エレクトロダンスミュージック)、プログレ、パンク、ヘビメタなどいろんな種類の音楽を参照項としているのが特徴

高城れに ソロコンサート「まるごとれにちゃん2019」(福島県・いわき芸術文化交流館 アリオス )@ニコニコ生放送

高城れに ソロコンサート「まるごとれにちゃん2019」(福島県・いわき芸術文化交流館 アリオス )@ニコニコ生放送

出演:高城れに

2019年3月9日(土) open 16:30 / start 17:30 / (19:30終演予定)
会場:福島県・いわき芸術文化交流館 アリオス

3/9(土)福島県 いわき芸術文化交流館 アリオス
セットリスト
(ニコニコ生放送 開演前インタビュー出演)
01.spart!(高城れに)
02.BRAND NEW WORLD(D-51・ONE PIECE)
03.前前前世(RADWIMPS君の名は。)
04.MC1(自己紹介まるごとれにちゃんVer.)
05.君のバンド(ベース演奏)(コレサワ)
06.Birthday(ベース演奏)(奥華子)
07.生まれてはじめて(神田 沙也加、松 たか子・アナと雪の女王)
08.A Whole New World(アラジン)
09.Lion(May'n、中島 愛・マクロスF)
10.放課後ハイファイブ(Little Glee Monster)
11.ね~え?(松浦亜弥)
12.ハッピー☆彡(月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。))
13.オレンジノート(ももいろクローバーZ)
14.タップダンス~Guns N' Diamond(ももいろクローバーZ)
15.まるごとれにちゃん(高城れに)
16.しょこららいおん(高城れに)
17.MC2
18.じれったいな(高城れに)
19.花は咲くw/湯本第一小学校合唱部
20.手紙~拝啓十五の君へ~(アンジェラ・アキ)
EC1.overture~Tail Wind(高城れに)
EC2.3月9日(レミオロメン)
EC3.一緒に(高城れに)
(ニコニコ生放送 終演後インタビュー出演)

高城れにのソロコンサート「まるごとれにちゃん2019」(福島県・いわき芸術文化交流館 アリオス )をニコニコ生放送で観覧。高城れにのソロコンについて少しでも厳しいことを書いたりすると、高城れにのファンから必ず「れにちゃんのソロコンはもともとれにちゃんとファンの集いの性格が強く、あーりんや杏果のソロコンとは違うから」みたいな声が返ってきたものだが、確かに今年で5回を迎えるソロコンのうち最初の方のものはそうだったかもしれないが、特に前々回くらいから生バンドをいれるようになってからは様子が変わってきており、例えばあーりんのそれと比較しても自らの楽器演奏やタップダンサー、プロのダンサーを起用しての演出も取り入れるなど、方向性の違いはあっても遜色のないものとなってきていることも確かだ。今回のソロコンの内容について振り返ると、オレンジノート(ももいろクローバーZ)、タップダンス~Guns N' Diamond(ももいろクローバーZ)、まるごとれにちゃん(高城れにソロ曲)、しょこららいおん(高城れにソロ曲)の流れのように慣れた楽曲を歌うとピッチも安定し、ももクロでも随一と思われる声の伸びもあり抜群の歌唱を見せてくれる。もともと、歌唱におけるポテンシャルはメンバーの中でも屈指と考えていたが、それがなかなか十分な形で発揮されること少なかったのがやっとコンスタントに結果を出せるようになったことに感心させられた。特にこの日のパフォーマンスで特技のタップダンスと組み合わせて、抜群の冴えを見せたのが「Guns N' Diamond」。この歌は難しい歌で4人バージョンでもあまり披露されることはなかったと思うが、それをひとりでカバーしみごとに歌い上げてみせた。
 ただ、初めて歌う曲を極度の緊張下で歌うとやはりまだ歌のピッチのずれや音程の揺れという従来の悪癖が散見されたことも確かだ。以前のようにはっきりとだれもが分かるほどはずすことは少なくなっているが新曲の「spart!」(高城れに)、ONE PIECE主題歌の「BRAND NEW WORLD(D-51・)」、「前前前世」(RADWIMPS君の名は。)と続く最初のブロックなどはがちがちに緊張しているのが感じられた。声の伸びもところどころ不十分となり音程も上がりきらない部分が、散見されるなど微妙に不安定。この3曲などは今の実力ならば音域も合っていてもう少し安定した歌唱が期待できるはずだったのが、そうはならず惜しまれる出来栄えだった。
 一方で今回のライブでは同じように少しだけ不安定とはいってもディズニーのミュージカル曲「生まれてはじめて」(神田 沙也加、松 たか子・アナと雪の女王)、「A Whole New World」など高音域での地声、ファルセット、ミックスボイスな使い分けを駆使しないと歌いこなせない難曲にも挑戦していて、これはまだ完全に歌いこなせているとはいい難いとしても新たな領域への挑戦として積極的に評価したいと思わせた。
 とはいえ、今回のライブでも自分の持ち歌としても遜色のないはまり具合を見せた曲も何曲かあった。そのひとつが「手紙~拝啓十五の君へ~」(アンジェラ・アキ)。この歌は杏果がフォーク村で歌ったものの録音が動画サイトに残っていて*1、それは繰り返し聞いていて相当の名演だと考えているのだが、この日の高城れにの歌唱は技術だけなら杏果のそれにおよばないところもあるかもしれないが、「そんなことは大した問題ではない」と思わせるほどの表現力の卓越した素晴らしさをみせつけた。
 経年変化を高城れにのソロコンについて考えていく時にはずすことができないのが「3月9日」。この日は感極まって歌えなくなるところが何カ所かあったものの、以前は「この歌は歌いこなすのは難しい難曲」と書いていた曲をかなりうまく歌いこなせるようになっていて、歌唱力の進歩を実感させた。 
 ここまで今回の感想を書いてきたが東北のしかも福島県いわき市を今回のソロコンの会場にしたことの意味は地元の小学生と歌った「花は咲く」が全てを示していただろう。高城れにはここでは自ら歌って表現するというのではなく、あくまで小学生らの歌声に寄り添うことでそれを全うした。その後の「3月9日」で泣いて歌えなくなってしまったのは確実にここからの流れがあったからだと思う。来年も再来年もの声がニコニコ動画の最後の挨拶で聞けたのも嬉しく思った。

*1:杏果のことに触れるだけで不愉快だと思う人がいるようだが、悪いけど私はももクロのファンであるのと同様に有安杏果のファンなので今後も杏果のことについて触れるし、そのことを忖度する気はない。

亜人間都市「東京ノート」@早稲田小劇場どらま館

亜人間都市「東京ノート」@早稲田小劇場どらま館

INTRODUCTION

​美術館に訪れた家族、学生、 絵画の寄贈者に学芸員、そして恋人たち…… ロビーを行き交う人々の小さな世界と、 その背後で広がる戦火。 複雑な世界を精緻なタッチで描いた平田オリザの傑作戯曲『東京ノート』を、20余年越しに上演いたします。
20人もの登場人物を演じるのは、わずか7人の俳優。 4半世紀ほどの時の隔たりと複数の役を

その身に抱えた俳優達が繰り広げる 世界観の対話劇!

​[出演]

石倉 来輝 木村 のばら 藏下 右京 長沼 航
畠山 峻 渕上 夏帆 本田 百音

※出演を予定していた木村のばらは体調不良により出演を断念せざるを得ず、代わって黒木洋平が出演いたします。​何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。

[脚本]
平田 オリザ

[演出]
黒木 洋平

​[美術・照明]
小駒 豪

[音楽・音響]
増田 義基

​[宣伝美術]
渡邊 まな実

[衣装]
石倉 来輝 藏下右京

[制作]
黒木 洋平 冨田 粥

東京ノート」という平田オリザ作品の最大の特徴は戯曲の中に登場して、戯曲の登場人物によって語られるフェルメールの方法論、つまり神の視点から離れて、レンズ(カメラオボスキュラ)によって切り取られて客観的に世界を提示するということがそのまま平田自身の現代口語演劇の方法論と二重重ねになるということであった。ところが亜人間都市による「東京ノート」はそうではない。この舞台では7人の俳優がすべての役を演じるが、それだけではない。
 もうひとつの特徴は当日パンフに「今回の作品制作には『演出家』が存在していません」「演技はそれぞれの俳優が決定権を持って作りました」「なので例えば演技体はまるで統一されていません」などとあるように舞台全体の印象は例えば平田演出の青年団の舞台が統一された世界として構築されているのに対して、バラバラなものが寄り集まってまるでパッチワークのようなものとなっているのだ。
 これは戯曲の中のように絵画に例えるとするとコラージュの手法で作られた現代絵画のようなもので、戯曲上の設計と実際に提示された世界は根本的にずれていて重なり合うことはない。実はそのせいもあって、この舞台は舞台に集中して、そこから内容的に何かを感じ取るというような感覚を持つことは困難であり、劇世界に集中できないという不快感がかなり長い間続いた。これはなにも戯曲の想定している演技と演出と実際の舞台がただずれていたからということではない。
 再び絵画に立ち戻って例を述べれば単純な写実ではなくても例えばその方法論が統一されたものであれば鑑賞者はその方法論を受け入れ、例えば印象派後期印象派キュビズムがそうであるように脳内で舞台で実際に提示されているものを脳内処理することで、一定のイメージを立ち上げることができる。演劇でいえば現在のマレビトの会による上演がそういうものであり、「東京ノート」というテキストが現在のマレビトの会的な演技体で上演されたならば慣れるまでに少し時間がかかるということがあったとしても、それなりに受容することはもう少し簡単であったのではないかと思った。
そうであるとすると個々の俳優の演技が同じ方法論により統一されていることはないけれども全体としてのトーンには何らかの調整がいるのではないか。細かく個々の演技を指定することはなくとも演出家の役割はやはり必要ではないかと考えた。 
simokitazawa.hatenablog.com

映画美学校アクターズ・コース 2018年度公演「革命日記」@アトリエ春風舎

映画美学校アクターズ・コース 2018年度公演「革命日記」@アトリエ春風舎

作:平田オリザ 演出:山内健司

80年代、ポストモダンという言葉をはじめて聞いたときの違和感が忘れられません。私たちの社会はモダンの成立のフリをしてるだけなのに、さらにそのあとってなんだろう、と。これは演技の話ですが、コンテンポラリーの演劇でアクターズ・コース修了生の活躍が めざましいのは決して偶然ではないと思っています。私たちは、ここまでがモダン、つまり近代であるということをしめすのに全力だからです。モダンのフリではない、私たちのモダン。
ここを獲得しよう、ここを越えていこう。この作品は革命の話です。革命の果てに新しい社会をみる。この作品の人々の姿はかぎりなく無残ですが、私たちがそれを愛さなくて誰が愛するのでしょう。これはまごうことなき今の演劇です。
山内健司(アクターズ・コース主任講師)

映画美学校とは

1997年の開講以来、国内外で高く評価される映画作家を多数輩出してきた映画美学校が、「自立した俳優」「自ら創造できる俳優」の育成を目指し2011年に開講。映画と演劇が交わる場でもあり、これまでに松井周演出「石のような水」、鎌田順也演出「友情」、佐々木透演出「Movie Sick」、玉田真也演出「S高原から」や、万田邦敏監督『イヌミチ』や鈴木卓爾監督『ジョギング渡り鳥』(第8回TAMA映画賞特別賞)『ゾンからのメッセージ』などを世に送り出している。また修了生は様々なジャンルで活躍している。2015年より文化庁の委託を受け「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座」を開講。本公演はその修了公演となる。
*次年度の開講に関しては2019年4月に発表予定です。


出演

青柳美希 五十嵐勇 奥田智美 斉藤暉 佐藤考太郎 柴山晃廣 鈴木良子 日向子 福吉大雅 松岡真吾 るり
(アクターズ・コース 映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2018)
浅田麻衣 釜口恵太 那須愛美 四柳智惟 (俳優養成講座修了生)

スタッフ

舞台美術アドバイザー:鈴木健介(青年団)
照明:井坂浩(青年団)
宣伝美術:北野亜弓(calamar)
演出助手:菊池佳南(青年団/うさぎストライプ) 釜口恵太 四柳智惟
修了公演監修:兵藤公美
制作:浅田麻衣、那須愛美
協力:青年団

平田オリザ青年団)の作品を同劇団の看板俳優である山内健司が演出して上演した。

新左翼組織の活動とその崩壊を描いた「革命日記」は1997年、安田雅弘さんが演出した『Fairy Tale』という作品の中核をなす物語として書き下ろされ上演された。この時は平田オリザも語っているようにオウム真理教による一連のテロ事件(1995年)とそれほど時間がたっていない時期で平田自身も「当時、私は、『集団と個』の問題ばかりを考えていたように思います。オウム真理教の事件から二年、劇団を主宰する者として、演劇集団とオウム真理教はどこがどう違うのかばかりを考えていたように思います。個々の善意から生まれた集団が、なぜ狂気に走るのか。『革命日記』は、その答えを探そうとして書かれた作品です。」と説明している。

 昨年4月青年団+無隣館の合同公演として上演された「革命日記」で、この作品について上記のように解説した。作品内容はそれに尽きているともいえそうだが、今回のパンフ・案内サイトなどのあいさつ文で演出を務めた山内健司がこの作品を演出するにあたってポストモダンについての違和感と「私たちのモダン」について語っているのが興味深いと思う。
 「モダンのフリではない、私たちのモダン。」というのはリアリズム演劇(モダン)に対して現代口語演劇のことを語っているのではないかと思う。そして、演技ということについて言えば、ここで強調されるのはセリフそのもの語義的な意味と発話されているコンテキストの間のズレであり、それが平田演劇の本質なのだと考えている。演劇のモダンの核にあるのが、スタニスラフスキーシステムなどに代表されるような内面と演技の一致であるとすれば平田の考える演技はそうはなってはいない。
 平田の演出、俳優の演技がそうなっていない*1というだけではなく、この作品では登場人物の発言自体が「発話内容」と「本当に考えていること」が乖離して、常に二重性を帯びていることが重要だろう。「革命日記」は新左翼組織の活動とその崩壊を描いているが、その感触がハイパーリアルともいえるのは本来は高邁な理想に基づいた同志的共同体であるべき組織が、それぞれの構成員が活動方針や活動における行為の選択の是非などで対立するように見えているが、実はその対立が実は男女関係のもつれやリーダー的な人物の潜在的な女性蔑視の傾向、それぞれのマウンティングの取り合いなど活動とは直接の関係がない軋轢によって起こっていることが、微細な発話のニュアンスによって提示されていることだ。
 山内健司演出に感じたのは相手に対して攻撃的な姿勢をみせるなどの感情の表出の演技が平田の原演出(青年団+無隣館)と比較してもはっきりと明示されていることだ。女性たちの激しい言いあいに最初はリーダー格の佐々木などは高圧的に出て相手を抑え付けようとするが、結局相手が引かないで今度は女性たち同士が激しい感情的軋轢をぶつけあい、挙句の果ては飛行場攻撃への最終的調整を話し合う重要な会議を放棄して、ひとりふたりと離脱してしまう。感情的になっている女性たちに対して、男たちは黙り込んだり、下を向いたりして出来るだけ巻き込まれないようにとだけ振る舞い、
もはや組織としての体を呈してないのだけが露呈していくのである。 
simokitazawa.hatenablog.com

*1:平田オリザのデジタル演出・演技

Aokidダンス公演 『地球自由!』@STSPOT

Aokidダンス公演 『地球自由!』@STSPOT

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2019年3月7日(木)-3月11日(月)



今日は、Aokidです。
地球自由!
代々木公園でジャンプし地面にパンチした際、空が広がっているから見上げて地球だって思いました。
それで思い出しました。小学生のくらいの時の親しさを。
もう一回、引き寄せれないかなぁと思って地球自由と呼んだのかもしれません。
みんなもよかったら叫んだり笑ったりその都度してもらえたら!

ステートメントに代えて1つうたいます。
きいてくれるかな?

「8、9、10!はい、地球自由!
走っている最中 ゲームしてるみたいにしてる集中で
考えている地球は!が!自分のこと、あなたのことを行き来し、
代わって、とりかわっていく交換の好感
持って、抱いて、抱きしめて、ジャンプして胸の手前爆発する、は”光”だから大丈夫。
君は元気、うたっているとり、およいでいるさかな、とんでいるなわとび、しろとくろの空を、
愛していれば降ってくる雨、向こうから見ているとどんなだろう?

ノックするとブラジルから返ってくる返事よりも早く、あなたのことが思い浮かんでくる日曜
呼んでよすてきな名前の数々やI love youまで
宇宙がさえわたっていて、わたしまだ地球だから回りながら君に近づいていこう
つかまえてほしいわけじゃないけど、ドキドキしている。待っているし、走ってもいる。
本当にすごい、すごい、すごい
あおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」
どうかな?


日程:
3月7日(木)~3月11日(月)
3月7日(木)20:00
3月8日(金)15:00 ★/ 20:00 ★
3月9日(土)15:00
3月10日(日)15:00 / 19:00 ★
3月11日(月)15:00
*受付は開演の30分前、開場は開演の20分前より。
*未就学児の入場はご遠慮ください。
*★…終演後にアフタートークを開催します。

チケット:
一般 3,000円
25歳以下 2,500円
*当日券は500円増
*チケット発売日 2019年1月23日(水)

アフタートーク
以下の回でアフタートークを開催します。

ゲストは敬称略

3月8日(金)15:00
ゲスト:長谷川新(インディペンデントキュレーター)
3月8日(金)20:00
ゲスト:関川航平(アーティスト)
3月10日(日)19:00
ゲスト:太田充胤(医師・批評家)

クレジット:
振付・出演 Aokid
照明 上田剛|音響 牛川紀政|衣裳 KAKO(桑原史香・秀島史子)|舞台監督 熊木進|宣伝美術 関川航平
助成 アーツコミッション・ヨコハマ|特別協力 急な坂スタジオ|制作・共催 STスポット|主催 Aokid
「CoRich舞台芸術まつり!2019春」最終選考対象公演

 Aokidのソロパフォーマンス公演「地球自由!」を観劇。ポップアートの香りを感じるパフォーマンス。音楽、ダンス、パフォーマンス、ラップ、映像と全ての要素を混ぜこんだジャンルボーダレスな作品。子供の遊びのようにも見えるが、例えば中で使用される楽曲ひとつをとっても、選び方にはAokidならではのセンスを感じた。あそこでPuffy、あそこでエリック・サティの絶妙さ。一見アバウトにも見えるが実は相当緻密に構築されている。
とはいえAokidソロの最大の魅力は本人の飄々としたとぼけたキャラかもしれない。これがあり、この作品の隅々までがそうした個性で刻印されているから、各ブロックで全く別の要素をやっても作品全体は「Aokidの作品」としてまとまりを持っている。ラフになってもくだけすぎず、決めるところは格好良くというメリハリのよさも感じるのだ。
 「地球自由!」という亡羊とした表題も捉えがたいともいえるが、それも含めて「らしい」公演だった。
 

鳥公園のアタマの中展2『緑子の部屋』@東京芸術劇場 アトリエイースト

鳥公園のアタマの中展2『緑子の部屋』@東京芸術劇場 アトリエイース

『緑子の部屋』
演出:葭本未織(少女都市)

​出演:Jean-Philippe、学習院ひろせ、加藤広祐、谷風作、葭本未織

鳥公園のアタマの中展は西尾佳織(鳥公園)の戯曲を西尾以外の演出家を公募して、1日のみの稽古期間で上演してもらおうという企画で、今回が2回目。この日は少女都市という劇団を主宰する葭本未織が「緑子の部屋」を演出したものを観劇した。
 興味深かったのは通常のアフタートークよりもかなり長く1時間ぐらいの時間を用意して、作家と演出家と出演俳優がトークする時間を設けていたことだ。作家と演出家が違う場合にも普通はそれぞれの作品の解釈の違いなどをここまであからさまに語り合うということは珍しい。というのは通常の公演では舞台作品はあくまで上演主体となる演出家と俳優のものでありそこに劇作家が口を挟むのはどうしたものかというバイアスがかかるので、違いが明確化するようなことは少ないのだ。
 それを「こういう企画だから」ということで西尾がいきなり「練習中からずっと見ていたが、演出家がどういう意図でそうしているのかが、よく分からなかった」などと柔らかな口調ながら普通だと反則気味の切り出し方で口火を切り、それに少し恐縮しながらも演出の葭本未織の方も自問自答して何度もつかえながらも「自分のやり方」を説明し、それぞれの俳優もどういう演技プランでそう演じたのかを話してくれたのがきわめて刺激的だった。
このように書いたのは実は上演自体の印象は私にとっても西尾が感じたというそれとどこまで重なるのかは不明なのだが、当惑させられるものだったからだ。舞台の印象自体も西尾が演出したのを私が見て非常に面白いと感じその年の演劇ベストアクトの2位に選んだ上演とは相当趣きが異なるものと感じたからだ。
 私にとっては「緑子の部屋」は「主人公であるはずの緑子が最初は登場せずにそれを語る人物、そこで語られる人物も次第にずれていき、なにがあったか、誰がいたのかという事実関係の基本さえその揺らぎの前に不確定なものとなっていく」というような叙述の揺らぎが刺激的な作品だった。
つまり、「緑子の部屋」ではある人物として話しかけられている人がいつの間にか同じ俳優が演じる別の人物に入れ替わって、つまりシームレスに時空や状況が変転するなかで、確定されることがない量子論的な演劇とでもいうようなものに見えた。
 しかし、葭本未織はそういう微妙な揺らぎのようなものはあえて無視して、そのために歪んでいるテキストをそのまま歪んだものとして提示するような手法をとっていて、そのために部分部分では明らかに意味が分からなくなっているような部分が散見されるのだが、そういう分からなさも含めて観客の側に委ねて、受け取る側で判断してもらうという風なものだったようだ*1
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*1:実際の上演からは主として分からなさを受け取ることになった

平田オリザ・演劇展vol.6 青年団『忠臣蔵・OL編』Aチーム(2回目)@こまばアゴラ劇場

平田オリザ・演劇展vol.6 青年団忠臣蔵・OL編』Aチーム(2回目)@こまばアゴラ劇場

忠臣蔵・OL編』※A〜Cの3通りのチームで上演します。
【A】天明留理子 村田牧子 鈴木智香子 長野 海 中村真生 西山真来 立蔵葉子
【B】森内美由紀 黒木絵美花 石橋亜希子 田原礼子 川隅奈保子 永山由里恵 岩井由紀子
【C】松田弘子 村田牧子 村井まどか 本田けい 申 瑞季 南波 圭 立蔵葉子


「だからさ、こう討ち入り目指してく過程で、だんだん武士道的になっていけばいいんじゃないの、みんなが。」
平和ボケした赤穂浪士たちのもとに、突如届いたお家取り潰しの知らせ。
その時、彼らは何を思い、どのように決断したのか?
私たちに最も馴染み深い忠義話の討ち入り決断を、日本人の意思決定の過程から描いた、アウトローな『忠臣蔵』2バージョン。
*上演時間: 各約60分

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平田オリザ・演劇展vol.6 青年団『思い出せない夢のいくつか』@こまばアゴラ劇場

平田オリザ・演劇展vol.6 青年団『思い出せない夢のいくつか』@こまばアゴラ劇場

出演 兵藤公美 大竹 直 藤松祥子

スタッフ

舞台監督:河村竜也
舞台監督補佐:陳 彦君 鐘築 隼 
舞台美術:杉山 至 
照明:西本 彩 
音響・映像:櫻内憧海 
衣裳:正金 彩  
フライヤーデザイン:京 (kyo.designworks) 
制作:太田久美子 赤刎千久子 有上麻衣

  
青年団「思い出せない夢のいくつか」観劇。8演目にわたり、平田オリザ作品を連続上演している「平田オリザ・演劇展vol.6」だが、ついにこの1本というべき作品が登場したといえそう。
 初演は94年で同じ年には「東京ノート」「転校生」とその後、何度も再演され、今年も再演が予定される平田の代表作が相次いで生み出された実りの年だった。前述の2本と異なりこの作品がその後上演されることがなかったのはもともと初演が緑魔子ありきで企画された作品だったということがあるかもしれない。緑魔子といえば第七病棟などでの唐十郎作品での名女優振りが知られるアングラ演劇を代表する伝説的な女優で、現代口語演劇、群像会話劇の平田オリザとは水と油的存在といえたが、もともと平田が彼女の大ファンであったことと、緑が平田の演劇に興味を持っているらしいということを人づてに聞いた平田が彼女にオファーを出し実現することになった。
 初演には緑のほか、当時青年団の中心俳優であった山内健司、平田陽子が出演していたように記憶している。しかし、正直言って緑魔子インパクトが強烈すぎて、それしか記憶に残っていないというのが正直なところだ。そのせいで作品としてはあまりバランスがいいという風には思えず、その後、再演されないことについてもそういう特殊な作品だからということ以上のことはあまり考えていなかった。
 初演以来25年ぶりにこの作品の青年団上演を見たが、初演の印象に対してこういう作品だったのかと新たな発見が多い上演だった。物語は列車の車両の中で進行するが、登場するのはわずか3人。ベテランの女優(歌手だったかも)=兵藤公美、とそのマネジャー(大竹直)、付き人(藤松祥子)である。
 物語は宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」を下敷きにしていて、3人の会話の中には鳥取り、古生物学者から星座版の話、星になったサソリの挿話など原作に出てくるモチーフが散りばめられている。
 キャスト3人の配役が絶妙だ。中でも付き人役の藤松祥子のヒロインぶりが鮮烈な記憶残した。大竹直も渋い。初演の時にもそれは記憶に残る場面であったが、女優が席をはずして席に向き合い座ったマネジャーが皮を剥いていないまるごとのリンゴを付き人の女の目の前に差し出し、それを女は歯形がつくようにがぶりと食べてみせる。そしてそれをまた取り戻したマネジャーは同じりんごにかぶりつく。ここにはセリフはいっさいないけれどもこれだけで観客はこの2人がすでに男女の関係にあることがはっきりと分かるような仕掛けになっている。
 藤松の演技にはエロスの匂いがするが、こういう性的な関係性のようなものは平田オリザの作品では意図的に排除されることが多いのだが、ここは数少ないそれを匂わせる場面で、初演では平田陽子がその役を演じたことからも分かる通りにそれを担わせる数少ない女優の一人に藤松が見なされているというのも確かなようだ。
 

平田オリザ・演劇展vol.6 青年団 『隣にいても一人』Cチーム@こまばアゴラ劇場

平田オリザ・演劇展vol.6 青年団『隣にいても一人』Cチーム@こまばアゴラ劇場

【C】藤谷みき 伊藤 毅 吉田 庸 木引優子
【A】山村崇子 秋山建一 海津 忠 林 ちゑ
【B】根本江理 太田 宏 伊藤 毅 福田倫子
※A〜Cの3通りのチームで上演します。

MONO「はなにら」@ 吉祥寺シアター

MONO「はなにら」@ 吉祥寺シアター

作・演出:土田英生
出演:水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生、石丸奈菜美、高橋明日香、立川茜、渡辺啓

2019年3月2日(土)~10日(日)
東京都 吉祥寺シアター

2019年3月16日(土)・17日(日)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース

2019年3月23日(土)~27日(水)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール

2019年3月30日(土)・31日(日)
広島県 JMSアステールプラザ

 MONOの設立30周年記念公演。今年(2019年)が30周年の区切りの年ということもあり、3本の本公演を行う予定だが、この作品はその第1弾となる。
多数の犠牲者が出た火山噴火災害の被災地の島で暮らす2組の「擬似家族」の物語。派手さや特異な前衛性はいっさいないけれど、さりげない描写の中に様々な人間模様を見せていく。
  MONOの最大の魅力は常にあうんの呼吸で互いに演技ができる20年以上一緒に舞台にあがり続けてきた5人の俳優(水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生)によるアンサンブルだ。掛け合いのシーンなどではほぼ自由自在と言ってもいいほどで他の劇団の追随を許さぬ部分もある。
 ところが一方でそのことには次第にその関係性が固定化してきてしまってどういうシチュエーションを書いても、同工異曲に見えてきかねないという問題点も含むものであった。
 そういうもろもろの状況を勘案してMONOが結論づけたのは新劇団員の補充という選択。しかもいかにも彼らのやり方らしく、新たに加わった4人の劇団員(石丸奈菜美、高橋明日香、立川茜、渡辺啓太)はワークショップなどを通じて知り合い、これまで客演の形で幾度か一緒に芝居をしたもの*1を基準に選んでおり、新劇団ながら「MONOらしい」と感じる俳優らばかりなのだ。
MONOの土田英生は初期の代表作といえる同性愛の男たちが一緒に暮らすアパートを描いた「ー初恋」*2や地域村落での町興しを描いた「きゅうりの花」など通常ではない状況のコミュニティーに属する普通の人間がどのような行動を取るかという顛末をシチュエーション劇として構築していくのが土田の得手とする作風だが、今回は多数の犠牲者を出した火山噴火災害の被災地の島で暮らす2組の「擬似家族」を時にコミカルな筆致も交えて描き出していく。
 ただ見ていると単純で軽妙なコメディーに見えるが、今回の場合であれば学校の教師(金替康博)と彼に養女として引き取られて一緒に暮らす女性の間の微妙な感情、「大家族」として共同生活している3人の男たち(水沼健、奥村泰彦、土田英生
とその子供世代の女2人、男1人、そこに兄たちには望まれない存在として島を出ていったまま戻らなかった男(尾方宣久)がひさびさに顔を見せることでさざなみが広がるようにそれぞれの持つ思いが同じではないことが、次第に顕わになっていく。
 それぞれの思いは長らく心の奥底に閉じ込めていた震災による肉親の喪失ともつながりせつないのだが、こうした細かな感情の揺れを的確に表現していくことにおいて土田の筆致は絶妙な冴えを見せていく。
そしてこの作品の最大の見所は被災から20年目の節目の年でのこの擬似家族たちの新たな関係への旅立ちは設立30年を迎えて新劇団員を迎え、新たなステージへと変貌しようとしているMONO自体のこととメタファーとして二重重ねになる構造を持っていることだろう。MONOにはよくあることだが、劇団のきわめて初期段階から参加してきた水沼健、奥村泰彦、土田英生の3人と後から新人として加わり3人とは年齢も少し離れた尾方宣久、他のメンバーとはずっと以前からの知り合いであったがライバル劇団ともいえる時空劇場(松田正隆主宰)の看板男優で、同劇団解散後MONOに参加することになった金替康博。MONOにはよくあることだが、この関係性が作品内容にも反映されていて、子供世代の4人についてもそれは同じ。だからこそ30周年記念公演としてのこの舞台の上演は「俺たちはここからだ」という宣言のようにも感じられたのだ。
simokitazawa.hatenablog.com
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*1:全員が昨年の公演「隣の芝生も。」にも出演している

*2:今でこそLGBTを主題とした物語は珍しくないが、当時は先駆的な事例であったと思う