ドロシー・L・セイヤーズ「不自然な死」(創元推理文庫)を読了。

- 作者: ドロシー・L.セイヤーズ,Dorothy L. Sayers,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1994/11/01
- メディア: 文庫
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ただ、そうであるだけに今読み比べると、捜査側の動きに対して、犯人側がそれに対応して行動を起こすことですでに起こってしまった事件を捜査するという従来のプロットに比べ、複雑でもあり臨場感のあるサスペンスフルな物語に仕上げることに成功しているが、犯人がだれかというのは物語の最初の方で大方見当がついていることもあり、興味の中心はメインのトリックである殺害方法やどうして殺さないといけなかったのかという動機をめぐる謎に収れんしていくのであるが発表された当時は新機軸だったのかもしれないけれど、現時点ではあまりにもよく知られたものであるため、どうしてもミステリとしてはやはりややものたりないことは否定できない。
ただ、そういう点はあっても人物描写の妙はやはり魅力的であり、特にクリンプスン嬢の普通の中年女性のようでウィムジイ卿への報告にいつもなぜかシェイクスピアを引用するという変な文学趣味を持ち合わせているというところなどはセイヤーズの面目躍如といったところであろう。このクリンプスン嬢はほかの作品でも再び登場するらしいので今から再会が楽しみなのである。
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