下北沢通信

中西理の下北沢通信

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劇団ヘルベチカスタンダード「夢幻地獄」@京大西部講堂

 言葉遊びとモノローグによる語りの多用。野田秀樹(しかも夢の遊眠社時代)の影響が濃厚だ。雰囲気は遊眠社よりもさらに昔のアングラ演劇を彷彿とさせる部分もある。分からないのはなぜ今こうしたスタイルで芝居をするのかということだ。古き良き時代への懐古趣味(ノスタルジア)なのか? 冒頭近くのダンスシーンでかかる曲がチェッカーズキャンディーズなのだ。作・演出は現役の大学生のようだから、どう考えても生まれる前の曲じゃないか……。なにをソースにしてこういう世界を描くのかと疑問に思う。そこがよく分からない。

 作家の妄想的なイメージを紡ぎだして舞台作品に仕立て上げる。舞台にもそういうやり方はある。野田の舞台もある意味そういうものではあったが、あの時代の彼の舞台は確かに時代を切りとっていたと思う。この舞台からは「いま・ここ」にある世界と切り結んでひりひりしたリアルをこの舞台のスタイルから感じ取るのは難しかった。