下北沢通信

中西理の下北沢通信

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笑の内閣「名誉男性鈴子」(作・演出:高間響)@こまばアゴラ劇場

笑の内閣「名誉男性鈴子」(作・演出:高間響)@こまばアゴラ劇場

平成の大合併で誕生した南アンタレス市初の女性市議会議員、黄川田鈴子は女性の社会進出の象徴として活躍していた実績をかわれ、引退する市長の後継指名を受け市長選へ出馬していた。しかし、鈴子は女性の社会進出の象徴といいながら、実際はきわめて男尊女卑的な言動を繰り返す、まさに「名誉男性」だった。
笑の内閣の次回作は、アパルトヘイト時代の南アフリカの名誉白人のごとく、男社会で男以上に女性差別を繰り返す名誉男性を笑うジェンダーフリーコメディー!


笑の内閣

2005年に京都で旗揚げ。実寸リングで本当にプロレスする芝居と時事ネタコメディを得意とする。
契約した劇場から内容が反社会的過ぎると上演拒否にあった際は、表現弾圧と戦うと称して識者やメディアとスクラムを組んで問題化したり、風営法問題を扱った芝居では初演に来場した国会議員から「法案改正の説得材料のために他の議員に見せたい」と招かれ、永田町公演を実現するなど、政治面は特に強さをみせている。CoRich舞台芸術まつり!2014春準グランプリ。

出演
中谷和代(ソノノチ)
熊谷みずほ
土肥希理子
石原正一(石原正一ショー)
諸江翔大朗(ARCHIVES PAY)
髭だるマン(爆劇戦線⚡和田謙二)
しゃくなげ謙治郎(爆劇戦線⚡和田謙二)
丹下真寿美
池川タカキヨ(ピルドレン)
神田真直(劇団なかゆび)
スタッフ

舞台監督:稲荷(十中連合)
音響:島崎健史(ドキドキぼーいず)
舞台美術:栗山万葉
演出補佐:余ティムラ
宣伝美術:脇田友
制作:渡邉裕史 新原伶(劇団なかゆび) 坪井梢
広報協力:吉岡ちひろ

笑の内閣は様々な社会的な問題をコメディーに仕立てあげて上演している劇団。漫画・アニメの表現規制、クラブの深夜営業規制、ネット右翼のヘイト行為、原発事故被害に遇った福島への修学旅行などビビッドでありながら、単純に面白、おかしく取り上げることが困難な対象に果敢に斬り込んでいった。
今回選んだのは性差別の問題。昨今のように政治的な正しさ(ポリティカルコレクトネス)が重要視される世の中ではこうした問題への揶揄的な表現に少しでも差別の影が見えたというだけで最近あったテレビでの出来事のように袋叩きにされかねないような危険を孕んでいるが、その中で地方の市長選に立候補する女性候補の陣営を舞台にそれこそ政治的に正しくない言葉がここぞとばかりに飛び交う。そんな状況をどういう立場の人が見たとしても思わず「あるある」として笑えるコメディーに仕立てあげた高間響の手腕は相当のものだ。