別役実の戯曲を青年団演出部所属の蜂巣ももが演出した。平田オリザ流の現代口語演劇ではないにしても別役のテキストは本来会話劇であって、これまで見た多くの舞台ではそういう演出ないし、演技体で上演されたものが、ほとんどだった。それゆえ、今回の「木に花咲く」は別役作品の上演としては相当に異色な部類に入るのではないかと思う。
実際にあった朝倉少年祖母殺害事件(孫による祖母殺害事件)を基にした一種の家庭劇だ。室内を模したセットでの会話劇として上演されるのが普通だと思うが、ハチス企画版では下手に大きな桜の木、ほかにも舞台狭しと花の咲いた桜の枝が林立しており、どこか幻想的な架空の空間を思わせる舞台装置。
俳優の演技もこごもったような作り声で祖母役を演じる串尾一輝をはじめ、リアルさはみじんもない台詞回し。会話劇では話し相手の方を向いて演技することが普通だが、どの俳優もほぼ正面を向いてしかも朗々と語るというのではなく、聞き取りにくいような発声法でもごもごと話すこともあって最初の内は気になって仕方がなかったほどだ。
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