下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

DULL-COLORED POP「あつまれ!『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』まつり 百花チーム」 @サンモールスタジオ

DULL-COLORED POP「あつまれ!『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』まつり 百花チーム」 @サンモールスタジオ

百花チーム

大島 萌、川上憲心、木村望子、小林春世、今野誠二郎、佐藤千夏、平吹敦史、廣田彩


谷チーム

東谷英人、井上裕朗、大内彩加、塚越健一、春名風花、深沢未来、宮地洸成、百花亜希

父が死に、母は2匹の猫を飼い始めた。母・よし子、61歳。プロのお母さんとして生きてきた彼女の人生にきらめく、ステキにまばゆい思い出たち。しかしその裏側には悲しい過去が隠されていて、そいつを猫たちがじゃんじゃん暴いてく──。だって僕たち、猫だもの!

🐾 🐾 🐾

人が猫を演じ、猫が母を演じ、家族同士が良い家族を演じる。「演じる」ことをテーマとした劇団の代表作『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』待望の再々演。2012年に初演され、2015年の再演では早々にチケットが完売した同作を、計4演出・4バージョンに拡大上演することで作品と劇団の魅力を4倍に引き出します。

また本公演は、活動再開したDULL-COLORED POPの屋台骨を支える、今後の主要メンバーや若手・中堅俳優の発見と育成をも目的とします。2019年夏に控える「福島三部作」連続上演へ向けて、劇団の主力と常連を見出し、「ダルカラらしさ」を共有することで劇団の体力増強・演劇界覇道を目指します。
また公演の稽古を通じて劇団としての演技メソッドの作成・共有をも目指していきます。

公演タイトル あつまれ!『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』まつり
作・総合演出 谷賢一(DULL-COLORED POP)
演出 谷賢一、東谷英人、百花亜希、井上裕朗
劇場 新宿サンモールスタジオ
公演期間 2019/2/14(木)-2/24(日)
スタッフ 舞台監督:東谷英人 舞台監督補:竹井祐樹(Stage Doctor) 特殊効果:小林慧介 照明:榊美香(有限会社アイズ) 音響協力:佐藤こうじ(Sugar Sound) 美術:鮫島あゆ&グラマラスキャッツ 宣伝美術:鮫島あゆ 稽古場助手:小川譲史、宮藤仁奈、杉森裕樹 制作:井上裕朗、百花亜希、猫の手
助成 セゾン文化財

  春風ちゃんで知られる春名風花が出演しているということでチケットを予約して出掛けたのだが、なんと大きな勘違い。予約した回は彼女が出演する谷チームではなく、 百花亜希が演出を手掛けた百花チームの回だったのだ。
 とはいえ、DULL-COLORED POPは注目している劇団のひとつではあったから、舞台を見ることができたのはよかった。
 『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』という可愛い表題だから、猫にまつわるほのぼのした話かと思い見始めたが、実は家族、特に母親を巡ってのどんよりと重い話であり、驚かされた。私は谷の作品は初めてでもないので、驚かされたとはいえ完全に想定外ということでもなかったが、父親の死と絡んで母親と子供たちの間に生まれていた軋轢をかなりシニカルに描いたものであり、特に自分の価値観のみを押し付けてくる母親の人物造形には身につまされるものがあった。息子の妻の仕事をまったく認めずに内助の功などと前時代の遺物を押し付けてくる場面などにもいらいらさせられるが、母親に対する父親の遺言書を母親の前で読み上げて、ちょっといい話めいたエピソードが挿入されるが、それを息子の妻はちょっとした創作で初めて手に入れた原稿料代わりの○千万円などと評する。父親から息子に受け継がれていく仕事に対する妻の無理解という連鎖に心寒くなるところもあるが、単なるいい話に収めないのも谷の持ち味といえるのかもしれない。
自分が本当に大切にしていたことに聞く耳を持たぬ妻を父親は最後に遺言で切り捨てる。そして、それを受け止めながら、やはり他人を受け入れず自分の思うことだけを主張し続けるモンスターな母親に確実に打撃を与えるであろう父親の遺書(真実)は見せずに自らが創造した「いい話」だけを聴かせて不愉快な状況を収めることを劇作家である息子は選ぶ。これは単に家庭の問題を描いたというだけではなく、表現というのはどういうことなのかということでの思索も含んでいるのかもしれない。