下北沢通信

中西理の下北沢通信

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映画 「天気の子」(TENKI NO KO)@吉祥寺オデヲン

映画 「天気の子」(TENKI NO KO)@吉祥寺オデヲン


映画『天気の子』スペシャル予報

高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。彼女には、不思議な能力があった。
「ねぇ、今から晴れるよ」
少しずつ雨が止み、美しく光り出す街並み。それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――


監督
新海誠

出演
声の出演:醍醐虎汰朗、森七菜

[天気の子 上映時間:114分 ]

  ひとことで言って「ボーイ・ミーツ・ガール」であり、「セカイ系」なんだけれど、 新海誠っていう人は昔からそうなんだから、いまさら私がどうこう講釈してもどうにかなるものでもない。映像は素晴らしい。見てきてうっとりしてくるはずだが、こと物語上のアイデアに関しては驚くほど「なにもない」。
大ヒットした前作では彗星の地球への衝突とか、タイムスリップとか、パラレルワールドとか、いろんなSF的なアイデアが盛り込まれていたけれども「天気の子」にはそれもない。
 天気とヒロインとの関係性では発想の基となっているのは竜神伝説であり、「ボーイ・ミーツ・ガール」が世界の破滅につながるという物語の枠組みの原型となっているのは泉鏡花の「夜叉ケ池」*1ではないかと思う。
この表現は言い回しとしては適切ではないかもしれない。正しくは「夜叉ケ池」も「天気の子」もともに竜神伝説(悪天候を収めるために乙女を竜神に生贄ととして差し出したという伝説)に題材を取っているからである。そうだとすれば連想はやはり竜神伝説を下敷きにしたと思われるもうひとつのアニメにつながっていく。宮崎駿の「崖の下のポニョ」である。ポニョと「夜叉ケ池」の関係はリンク先の劇評に書いた。こうした伝説にかかわるもろもろの作品との関係で「天気の子」が作られたのは間違いないであろう。