下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

げんこつ団『パセリ』@下北沢駅前劇場

げんこつ団『パセリ』@下北沢駅前劇場

2019年 11月14日(木)〜11月18日(月)
出演
植木早苗 春原久子 河野美菜 池田玲子 望月文  三明真実
皆戸麻衣 丹野薫 し じ み 三枝翠 天笠有紀 藤岡悠芙子

脚本・演出/一十口裏 振付・演出/植木早苗

様々な老若男女を変幻自在に演じ分ける女優達による家屋ナンセンス喜劇

久しぶりに帰った実家で、母と パ セ リ はどう暮らしていたのか。自ら電ノコを持った母を、止められぬ娘たちと押し黙る パ セリ 。解体されていく家と家族は、迫り来る日本の住宅事情に飲み込まれ、実体を伴い過ぎたり伴わな過ぎたりしながら、やがて再生に向けて動き出す。またその過程における、あらゆる幹細胞たちの物語。

「四半世紀の大失態」は表題通りにげんこつ団の25周年記念公演である。一言で25周年というが、これはある意味驚くべき事だ。「純度の高い笑いだけを追求し続けるのは難しい。関西の雄、ベトナムからの笑い声が活動を休止したいま女性だけの劇団でありながら、なんの意味もなくただ笑いだけを追い求めるげんこつ団の存在は一服の清涼剤といっていい」と書いたのは何年前のことだろうか? ましてやげんこつ団は女性だけをメンバーとしている。作演出以外の旗揚げメンバーはすべて入れ替わり劇団が継続する例はあるがこの劇団は脚本・映像・音響・演出の一十口裏、振付・演出の植木早苗ら中心メンバーが健在であり、こうした形で25年続けてきたというのは稀有な例であろう。
以上の感想は2016年11月に上演された「四半世紀の大失態」に感想レビューであって、「パセリ」の観劇レビューではないのだが、「パセリ」感劇のレビューも「作演出以外の旗揚げメンバーはすべて入れ替わり劇団が継続する例はあるがこの劇団は脚本・映像・音響・演出の一十口裏、振付・演出の植木早苗ら中心メンバーが健在であり、こうした形で28年続けてきたというのは稀有な例であろう」と続くことになりそうだ。
舞台冒頭からさる高貴な方を取り上げての危険なネタが炸裂。とはいえ、げんこつ団の笑いは特に政治風刺的というわけでもなく、社会風刺というわけでもなくとことんナンセンス。無意味なのだ。
 これを30年近くやり続けるバイタリティーには脱帽するしかないのだが、実はこの種のナンセンス、シュール系の笑いというのは見るほうも意外と体力を消耗するものであり、30周年までやる方がこぎつけたとしても見る体力が続くか少し心配なのだ。舞台終盤に本編の流れとまったく無関係に切れ切れの群舞*1があり、これもげんこつ団の売りなのだが、「相当稽古したんだろうな」と思わせる完成度の高さに逆に笑ってしまう。

*1:振付としてはジャニーズ的なもの