下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ルース・レンデル「指に傷のある女 Shake Hands Forever」@角川文庫

ルース・レンデル「指に傷のある女 Shake Hands Forever」@角川文庫

 初読の際には「いかにもレンデルらしい」と思った記憶がある。とはいえ、どういう筋立ての物語であったかとかはまったく記憶から抜け落ちていて、何をそう考えたのかを考えながらの再読となった。この作品も冒頭近くでひとりの女性が何者かによって殺されているのが発見されるところから始まるから、いわゆる「ホワットダニット」ではないのだけれど、ウェクスフォードが捜査のかなり初期段階から殺された女性の夫を疑うのだが、彼には犯行推定時刻にアリバイがある。そのために今度は別の女性と共謀して妻を殺したのではないかと疑う。現場には指に特徴のあるL字型の傷のある指紋が残されていて、その指紋が犯人のものではないかと容疑者らしき女性を当たるが、そういう女性の該当者は見つからず、強引な捜査を逆に容疑者から咎められて、捜査陣からはずされてしまう。
 事件に実体がないというわけではないという意味で「ホワットダニット」ではない、と書いたのだが、この謎の女性の正体が何者で、どんな風にして犯行が行われたのかという事件についての様相はウェクスフォードの捜査の過程で二転三転していく。捜査陣をはずされたことから、警察機構を使えず自らが足を運ぶ単独捜査となるのだが、そういう意味では警部を主人公としてはいても、プロット自体はロス・マクドナルドのような私立探偵小説に近いのかもしれない。
 とはいえ、最終的に物語のクライマックス部分では全体の構図がだまし絵のように逆転するような仕掛けも用意されていて、こういうツイストはルース・レンデルならではのものといえるかもしれない。

女は皺ひとつないベッドの上に、うつぶせになって死んでいた。指紋がすべて拭いとられた室内からたった一つ検出された手形には、右手の人さし指の先にL字形の傷があった。
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ウェクスフォード警部シリーズ
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