下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

ミステリ評論

ルース・レンデル「指に傷のある女 Shake Hands Forever」@角川文庫

ルース・レンデル「指に傷のある女 Shake Hands Forever」@角川文庫 初読の際には「いかにもレンデルらしい」と思った記憶がある。とはいえ、どういう筋立ての物語であったかとかはまったく記憶から抜け落ちていて、何をそう考えたのかを考えながらの再読と…

ホワットダニットの系譜としてのコリン・デクスター(1)

ホワットダニットの系譜としてのコリン・デクスター(1) コリン・デクスターのモース警部シリーズといえば当初は日本でもコアな海外ミステリファンのみがその名前を知る存在であった。それが1987年から始まったテレビドラマ「主任警部モース」=写真下=の…

ホワットダニットの系譜としてのルース・レンデル(3)

ホワットダニットの系譜としてのルース・レンデル(3) ひとたび人を殺さば (角川文庫 赤 541-1 ウェクスフォード警部シリーズ)作者:ルース・レンデルメディア: 文庫ひとたび人を殺さば (1980年) (角川文庫)作者:ルース・レンデルメディア: 文庫「ひとたび…

ホワットダニットの系譜としてのルース・レンデル(2)

ホワットダニットの系譜としてのルース・レンデル(2) この連載「 ホワットダニットの系譜としてのルース・レンデル」で最初に「乙女の悲劇」を取り上げたのはクリスティー後期のホワットダニット的な作品群やコリン・デクスターの超絶技巧と言われる独特…

ホワットダニットの系譜としてのルース・レンデル(1)

ホワットダニットの系譜としてのルース・レンデル(1) ルース・レンデル(1930年~2015年)クリスティーの後継者と見なされることの多かったルース・レンデルはクリスティーの持つ保守的な世界観と相入れず、その呼称を忌諱することが多かったが、「叙述の魔…

ホワットダニットの系譜としての英国ミステリ

ホワットダニットの系譜としての英国ミステリ 論考執筆に向けたメモ 英国現代ミステリのメインストリームはクリスティー、そしてそのライバルであったドロシー・L・セイヤーズを出発点とし、後継者と見做されているP・D・ジェイムズとルース・レンデルへと続…

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(6)完結編

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(6)完結編 クリスティーのホワットダニットタイプの短編この章ではクリスティーの短編のうちホワットダニット的な作品を紹介していくことにしたい。 「リスタデール卿の謎」はホワットダニットとホワイダニットの融…

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(5)

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(5) 後期作品の先駆 「五匹の子豚」 この論考の前半部で取り上げたホワットダニット的な特徴を持つ後期作品への先駆的な作品には「五匹の子豚」(1943)がある。これは実はテーマ、構成ともに「象は忘れない」と瓜…

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(4)

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(4) 第二章において便宜上「ゼロ時間へ」からを中期と分類したのであるが、クリスティーにおいてはクイーンのようにある時期を境にして作風がガラリと変化したということはなく、この辺りではいかにも本格推理小説…

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(3)

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(3)@中西理 第3章 クリスティーの小説世界の変遷 クリスティーはそれではどのような道程をたどってホワットダニットのような小説形式に到達したのであろうか。この章では主要作品のいくつかを取り上げることでそ…

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(2)

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(2)@中西理 他の作品についてはどうであろうか。先ほど、準「過去」タイプとして取り上げた「ハロウィーン・パーティー」では冒頭でオリヴァ夫人の目の前でジョイス・レイノルズ殺しという犯罪が起こる。その意味…

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(1)

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」(1)@中西理 *1 序説 アガサ・クリスティー、J・D・カー、エラリー・クイーンという本格推理小説の3大巨匠のうち、ほかの2人がその晩年においては、ほとんどめぼしい作品を発表せずに、むしろ大家としての記念…

円堂都司昭 × 法月綸太郎「ミステリ評論の可能性」@ニコニコ生放送

円堂都司昭 × 法月綸太郎「ミステリ評論の可能性」@ニコニコ生放送 ──メフィスト評論賞創設記念イベント2019 01/24 [Thu] 19:00 ~ 21:30(開場18:00)ゲンロン主催イベント 気がつくのが遅れて、生で参加できなかったトークニコニコ動画で見た。ミステリか…

宮部みゆきとシベリア少女鉄道と京大ミステリ研

宮部みゆき「心とろかすような」を読んで初めて気が付いたのだけれど、このシリーズって(ということは宮部みゆきのデビュー長編「パーフェクト・ブルー」も)犬の一人称描写で書かれていたのね。というようなことをわざわざ書いたのはこの短編集を読んでい…

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」

「叙述の魔術師 ―私的クリスティー論―」@中西理 序説 アガサ・クリスティー、J・D・カー、エラリー・クイーンという本格推理小説の3大巨匠のうち、ほかの2人がその晩年においては、ほとんどめぼしい作品を発表せずに、むしろ大家としての記念碑的な意味…